108、カラン国(3)
ケルン王子は重傷でした!
「誰だ」
ツキ町の社にはツキ神とタケハヤ神とムサシノ神とアスカ神、そしてカラン神とともに転移した。
神様達は姿を隠している。
突然タカシが転移してきたのに驚いた騎士が剣を抜いてきたよ。
「待ってください」
横になっている人物の介抱をしていた男性が叫んだ。
この男を見たことあるぞ。
ケルン王子の側近だね。
「賢者タカシ様ですよね」
「そうです。そこに横たわっているのはケルン王子ですか?」
「はい、賢者様は治癒もできますよね。診ていただけないでしょうか」
「わかりました」
「お願いします」
護衛の騎士はやっと剣をしまってくれた。
うわ、これはひどい。
よくここまで来れたな。
肉は断たれ、骨は砕け、すごい出血だ。
わずかに意識があるようだな。
これは痛いっというものではないだろうに。
さて、『治癒のパン』か?
収納から『治癒のパン』を出して準備しているといるとアスカ神様から声がかかった。
『賢者タカシの力で治療しなさい。タカシなら人間の体の構造はイメージし易いであろう。そのような形に修復するように治癒魔法をかけるのだ。地球の人体解剖図というもののイメージを送ってやるから頭の中で立体化しろ』
人体解剖図のイメージが頭の中に流れ込んでくる。
ちょっと耐えられるかな。
写真付きだぞ。
『頑張れ』
横にいる5柱の神様が背中を触ってくれている。
そして力をくれている。
一つ一つイメージしてケルン王子の体に手を当て治癒魔法を発動する。
「え、」
自分の体が光り始めるのを感じた。
王子の側近や護衛そして社の神官も呆然としてこちらを見ている。
光は王子に触れている手を通して王子の体を包み消えていく。
怪我は全て癒えている。
「ううう」
王子が反応した。
「ケルン王子大丈夫ですか?」
「ああ、賢者殿。ここはどこです?私はどうしてここに?」
「ケルン様、エチ国の軍にわが軍が襲われ、ケルン様が怪我をし、ここまで逃げてきました。ここはツキ町です」
王子の側近が答えた。
王子には『回復のパン』を食べてもらう。
他のカラン国の者には治癒魔法をかけてから『回復のパン』を食べてもらった。
全員が傷だらけだ。
王子を守って奮戦したのだろう。
今回の状況はこの従者が一番よくわかっているようだ。
ここに集まった護衛もかなりの人数がいる。
さてどうしたらよいだろうか。
『王子と側近の二人を連れて王都チヨダに転移すればよいだろう』
そうだな。
二人連れてこの距離なら・・・・できるよな。
もう転移するところを見られているから隠すことはないか。
ムサシノ国王陛下に説明をしなくてはならない。
ここにいる者にはツキ町の領軍詰所の訓練場にテントを張って詰めてもらおう。
そこにカラン国から逃げてきている貴族や軍にも集まってもらうか。
ケルン王子と従者と護衛の騎士の隊長にこれからの事を説明した。
護衛たちはケルン王子と同行したがっていたが王子が説得してくれた。
カラン国王陛下の容態も心配だ。
急いで行動に移そう。
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