第4話 伯爵という恐怖の存在とハーネイトの仲間たち
「よかったです、2人とも意識が戻って。」
「よう、お2人さん。目覚めはいかがかな。」
「ようやく目覚めたわね。まずはこの世界にようこそ。」
次に部屋に入ってきたのは、ピシッとしたアーマーボディスーツを着た金色短髪の女性らしき人と、見るからに凶悪そうな、青い髪に緑の角、紫の下地に黄色のラインが特徴的な服を着た大柄の男、そしてそばにいるかわいらしい悪魔の羽が生えた小悪魔のような少女だった。
「あなた、私を助けてくれた…。」
「ま、まあな。」
彩音の言葉に、紫色の服を着た男がそう答えた。見た目はかなり怖そうだが、その内側には何か熱い闘志を感じる、不思議な男である。
「ハーネイトさんから少しは話を聞いたとは思いますが、あなたたちも辛かったでしょう。」
「相棒いわく、女神の力で戻せるみたいだが今戻してもまた同じことが起こるとよ。」
この人たちもあの女神、ソラのことを把握しているのか。そう考え俺は質問をした。
「女神、ですか。もしかしてソラという女神の息子さんは、貴方ですか?」
少し信じられなかったが、どうなのかが気になったので質問した。その言葉に彼は驚いていた。
「まあ確かに、俺はソラにより作られた超生命体ってやつさ。相棒、つまりハーネイトも同じだぜ。」
「そう、ですか。ありがとう、ございました。俺と彩音を助けてくださって。しかし戻せる?もとの状態に。」
「そうだな。俺と相棒、つまりハーネイトは色々事情があってね、そのような力も持ち合わせとるんや。」
「まあ神様の類いと思えば分かりやすいかしら。」
女神の息子、というか女神から作られた超生命体と自称する男は世界すら作り直せる力を持つらしい。そして隣にいた少女の言葉を聞き、はっとした。
「え、まずい…。失礼なこといってないか俺。」
「響は少し生意気だからね。改めて、ありがとうございました。お名前を聞かせていただきたいのですが。」
彩音も3人に対し礼をし、俺もそれに合わせた。
「俺の名はサルモネラ伯爵。本名はサルモネラ・エンテリカ・ヴァルドラウンだが長すぎるから伯爵でいいぜ。」
「私はエレクトリール・フリッド・フラッガと言います。」
「私はリリーよ。」
全員の名前を聞き、顔と名前を一致させた。金髪の人がエレクトリール、小悪魔みたいな女の子がリリー、そして彩音を助けた男はサルモネラ伯爵というのはわかった。しかしこの男の名前、違和感を感じる。そこでさらに尋ねてみた。
「伯爵、さんですか。なぜサルモネラという名前なのですか?食中毒を起こす微生物の名前ですよね。」
その俺の言葉に、伯爵は真顔になった後、カッカッカと笑いながら言葉を返してきた。
「久しぶりだな、そう聞いてきたやつは。俺様はその微生物の王様でもあるのさ。」
どういうことかいまいち理解できず、説明を求めた。
なんでも、この伯爵という男は全身が微生物で構築されているという。まずこれだけでも俺は恐ろしいと思った。そしてそれを攻撃にも、防御にも利用でき並大抵のものはまず抵抗むなしく彼の養分になるという話を聞いた。そして、彼は自然の猛威を体現するイメージで作り出された、菌界人という種族であることも。
女神、ソラの息子。確かにぶっ飛んでいる。そう俺は感じた。しかし命を助けられたのは事実だ。それに彼らならあれの倒し方も熟知しているだろう。少し怖いが、それでもやるしかない。そう俺は思った。
「えーと、今後についてですがお2人さんに話があります。まず3か月後に霊界の門を閉じる作業を行うのですが、それまでにあなたたちの故郷を襲った獣レベルを倒せる力を身に着けていただきたいこと、次に処遇について、現段階を持って2人には私たちの下についてもらい、霊界の力。つまり霊量子を操る力を身に着ける修行に入ってもらいます。」
「もう体も大丈夫そうだし、そこに着替えも用意しておいたから準備できたら一階の応接間に来てね。」
エレクトリールが説明した2つの命令をしっかり聞き、リリーの話も聞いて俺と彩音は了承した。
「それじゃ、明日からお2人さん、特訓だから頑張り給えよ。」
「こちらも用事があるので、すぐに霊界人たちを呼んできますね。私もそれなんですが、仕事が入っているのでこれで失礼します。」
「響と彩音ちゃんね。辛いと思うけど、あきらめなければどうにかなるわ。私もそうだったわ。ファイトよ2人とも!」
3人がそれぞれ俺と彩音に声をかけ、部屋を出て行った。
「修行か、どんなものだろうか。」
「本当に、3か月でどうにかなるのあれ。響はどう、思う?」
「わからないな、だが努力次第かもしれない、彩音。」
そう2人で考えを共有していた。話の素振りから、戦う才能を秘めているとは言われているのは理解したし、エレクトリールさんたちもそれでどうにかなると話した。今はそれを、信じるしかなかった。
そうして2人で話をしていると、ドアのノック音が聞こえ今度は別の5人組がぞろぞろと部屋の中に入ってきたのだった。