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第2話 女神「ソラ・ヴィシャナティクス」との出会い


「ああ、俺も命もここで終わりか。短い人生だったな……。俺はなにもできずに、終わるのか。」


そう思いながら、俺は目の前に見えた光輝く小麦畑が気になっていた。それと、そこにたたずむ一人の女性も。そしてかすむ視界の中、その女性からある言葉がこちらに飛んできた。


「あ?まだ死んでないわよ貴方。」


その女性が話しかけてきたのだ。白い羽衣に身を包んだ、誰もが美しいと言わざるを得ないブロンドの髪が美しい美貌の女性。しかしそれに反して、口調はとても荒いように思えた。すさまじく落差のある人だと。


「なんだ、と?俺はあのとき……。」


「あなたは運が良かったわね。たまたま人理の守護者たちの助けが間に合ったからよかったけれど。」


 人理の守護者だと?そんなファンタジーなことを言われても全く実感など湧かない。ああ、これは悪い夢なのか。そう俺は思った。しかし何が起きたのか聞くぐらいは問題ないだろう。だから俺は目の前にいる女性に言葉を返した。


「どういう、ことですか?一体何が起きたのか説明していただけますか?」

「あら、見た目に反して礼儀正しいのね。いいわよ、今何が起きているかを教えよう。」


彼女はそういうと俺にさまざまなことを話してきた。自身が世界を作り上げ、人を産み出すきっかけを作った女神であること、そして女神の作った世界のひとつで問題が起きていること。それにより地球ではその世界にすんでいるものが現れ甚大な被害を及ぼしつつあることを俺に伝えてきた。


いきなり何を言っているのか最初はよくわからなかった。しかし落ち着いてくると、俺たちをこうした原因は間接的にこの女神にあることはわかった。その話を聞いて、俺は憤った。それさえなければ、平穏な生活を送れていたのにと。


「そんな、非現実なことが起こっているのかよ。しかもあんたらのせいで、こんな。ふざけてんじゃないぞ!」

「そういうことね、しかしこれは私にも非があるのはわかっている。だから特別に力を一つだけ授けようか?」

「お、俺は…。」


 これはたまに読んでいた、ラノベ的な展開か?そう俺は感じた。しかしそんな都合のいいことなどおきやしない。そうひねくれた見方をしていた。

 普通の人間ならばこの展開でさぞ興奮するだろう。ましてや元々いた世界に不満を持つものならば違うものに転生したいとか、全知全能の力が欲しい、またはハーレムなぞ望むところだろう。しかしあいにく様、俺は今の暮らしにも満足しているし、彩音とずっと一緒にいると誓った。望むなら、元に戻してほしい。こんな悪夢、二度と見たくないと。


「あら、それなら助けてもらった守護者たちに頼めば戦い方位は教えてもらえそうだけどね。お人好しさんだからねえ。まあそうよね、故郷があの状況なら、そうね。」


 さらに女性は微笑みながら、元に戻すことはその女性の息子たちの力を借りることでも実行は難しくないと俺に助言してきた。それを聞きかすかな希望が湧いた。


「その願いは、自らの選択で叶えられよう。しかし、よく全知全能の力が欲しいとか、最強の存在に生まれ変わりたいとか言わなかったわね。相当ひねくれているのかしら?」

「い、いえ。俺はただ、元の生活を取り戻したいだけなんです。」

「あらあら、どこぞの誰かさんに本当によく似ているわね。いいわ、気に入った。」


 目の前にたたずむ女性は高らかに笑いながらすごく機嫌をよさそうにしていた。そして、返答次第では何か恐ろしいことが起こるのではないかと俺はそう予感していた。


「俺は、早く戻って街を、家族を助けに行かないと。」


 つい俺は焦って、その言葉を口にした。その時女性の口調が突然凍てつく北風のように周囲を凍らせるものとなり、身の毛がよだつほどであった。 


「舐めるなよ小僧。今あんたがもとの世界に戻ったところで犬死がせいぜいよ。人間の分際でできることには限りがあるわ。」

「ぐっ…。」


 確かにそうだ、二人がかりでもあの化け物に全くダメージを与えられなかった。女性の言うことを覆すような言葉を俺は口に出せなかった。そうだ、力が足りない。だったらどうする。必死に悩んで答えを探そうとしていた。


「だから、私の息子たちの力を借りなさい。そういえば、あなたの知り合いさんも息子たちに助けられているわよ。ハーネイトとサルモネラ。目が覚めたら、絶対に会えるはず。」

「相当な力を持っているのですね。その息子さん方に会えれば、答えが見つかるというのですね。」

「まあ、そういうことでいいわ。」


 まだ疑問に思うこともあるが、今はとにかく従った方がいい。少しで元に戻れる可能性を考えると、あきらめてはいけない。そう俺は自身に言い聞かせた。そして彼女は俺に名を聞いてきた。


「あなたのお名前は?」

「ソラ、よ。貴方は?」

「結月 響です。」


「わかったわ、響ね。この女神にこうして謁見できたこと、光栄に思いなさい。そして、あの霊界の獣に対抗しうる力を秘めた若者よ。」


「女神、ですか。一体何の女神なのですか?」

「どうせ地球人は知らないでしょうが、私は世界創世の女神、ヴィダール・ティクス神話に語り継がれる現最高神、ソラ・ヴィシャナティクスよ。覚えておきなさい。」

「ソラ、様ですか。はい、いろいろとありがとうございました。」


 俺はソラという女神に思わず地面に膝をつき、一礼を申し上げた。それほどの従わざるを得ない力を彼女は持っていた。


「礼を言うならば、息子たちに言いなさいな。」


 ソラ様は笑顔でそう言いながら俺の頭に手をかざした。


「それと、なんでも音楽を使って戦うらしいわね。だから特別に、その持っていた再生する装置に細工をしておいたわ。その代わり、力を手にしたときから戦いから、貴方たちは逃げることができなくなるが、それでもいいかしら?人理を守る戦いにね。」


 女神のその言葉など、すでに分かっていた。知ってしまったからには、二度と引けない戦い。しかしそれでこれ以上に何も失わずに済むのならば、後悔はしない。だからその決意の言葉を女神にささげることにした。彩音も、同じ言葉を聞いたなら有無を言わさずに決断するだろう。そう信じて。

 そして女神が自身らが編み出した技に興味を抱いていることが嬉しかった。それが一番の理由だったのかもしれない。


「それしか、道がないだろう?それで取り戻せるなら、やってやるよ。」

「それが、貴様の答えなのだね? では、息子たちによろしくと伝えて。未来ある若者、響よ。そろそろ新しい世界にたどり着く。そこで鍛練し、力を身に付け故郷を救いなさい。」


その女神の、やさしくも強い言葉を最後に聞くと、俺はその美しい世界から離れ目を覚ましたのだった。

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