第1話 平穏な時は突如消え去った
結月 響 (ゆいづき ひびき)
年齢:17歳
身長:172cm
体重:61kg
趣味:音楽を聴くこと、ダンス、作詞、体を鍛えること。
地球人。京都に住む17歳の高校2年生。公立の高校に通い、友達はそれなりにいる割と普通にいそうな高校生である。
しかし彼とその幼馴染はある秘密を持っていた。
彼らは非常に霊感が高く、それに幼い時から悩まされていた。
さらに、9歳まである田舎町に住んでいたのだが、そこで起きた怪事件により彼は警察官である父を亡くし、村はその後放棄され京都に家族とともに集団で移ってきたという経緯を持っていた。
そのため、二度とあんな思いはしたくないと。幼馴染と力を磨き、武道に打ち込み強い男になりたいと厳しい修練に耐え、空手や剣道で幾つもの大会において優勝を収めてきた少年。
性格はやや弱気なところもあるが、それでも一度決めたらやり抜きとおす意志の強い人物。少々生意気ではあるが、礼儀正しい。
見た目が少々不良っぽく見えるので怖がる人もいるが、親の手伝いも学業も部活もアグレッシブにこなす好青年。
「魂食獣」に住んでいた街を襲われ、二人で戦うも圧倒的な力に勝てず瀕死の重傷を負う。そこに現れた、異界より来た人理の守護者二人により救出され、その中で二人は美しくも恐ろしい女神。「ソラ・ヴィシャナティクス」という存在に心の中で出会う。
そして彼女から話を聞かされ、二人はそれぞれ、覚悟を決めることにしたのであった。そして女神の計らいでもっていたミュージックプレイヤーに細工をしてもらい、彼女から息子たちと手を合わせ戦えば、元の世界に戻せると言われた二人は、異世界であり、地球とほとんど似ている星、アクシミデロで目を覚ました。
そこで霊界人としての力があると言われ、守護者たちの仲間から修業をつけてもらい、短期間で頭角を現し、自身らを襲った。そして父や幼馴染の祖母を襲った魂食獣「黒白」を倒す力を身に着けた。
武器は双剣や槍。特に槍の扱いはかなりの腕前。
如月 彩音 (きさらぎあやね)
年齢:17歳
身長:162cm
体重:45Kg
趣味:音楽を聴くこと、歌うこと、踊ること、買い物をすること。
響の幼馴染みであり、同じ高校、同じクラスにいる17歳の女の子。
彼女も音楽が好きで、響の練習をみて興味を持ったのがきっかけで更に仲を深め、大体彼と一緒にいるおとなしい女の子である。
彼女も祖母を昔、ある怪事件により亡くしている。その犯人を響と共に見つけたのだが、誰にも信用されずそのことは今日まで秘密にしてきた。
性格は物静かで、あまり主張しないように見えるが、芯はとても強く、一度決めたことは何があっても曲げない熱い意志を持つ。それに響が振り回される時もある。
響と同じく女神と人理の守護者に助けられ、才能を開花させ戦う術を身に着けた。それとともに性格も変化し、さらに逞しく、凛とした美しい女性に変わっていくのであった。
9歳の時に起きた事件の後から武道を学び、特に薙刀が得意。どんな敵でも勇敢に挑む強さを武器に困難に立ち向かう。
「彩音、今日は今からどこにいこうか?」
「そうね、例のCDショップにまたいきたいな。」
「好きだな、あの店。確かに悪くないけどな。」
久しぶりに一日オフで幼馴染みの彩音と共に街中を歩いている俺は結月 響という。現在高校2年、公立の高校に通っている高校生だ。
ガラが悪いだの目付きが怖いだの言われるが、これでも空手や剣道には自信があるし、大会で優勝した実績もある。学業は、上の中だが悪いわけではない。
今日は休みなので少しおしゃれをして、黒のズボンに厚手の暖かい茶色の上着、首には紺色のマフラーを巻いて髪もしっかりセットしてきた。アクセサリーもほどほどに身に着け、北風吹きかう街の歩道を歩いていた。
時期が12月に入ろうとしており、北風が体を包んでは寒さで引き締めるように縛ってくる感じだった。
「お互い、結構趣味似ちゃってるよね。」
「確かにな。音楽を作るのも聞くのも歌うのも、それに会わせて踊るのも本当にお互い、よく似てるなと思う。」
「そうね。でもこうして一緒に趣味を共有できるのは嬉しいよ。」
そして俺が彩音と言っている、隣を歩いている前髪の両端をビーズでまとめ、後ろ髪もおさげにしている黒に近い紺色のコートと、白いスカートをはいた、同い年の女の子。名前は如月彩音という。幼いときに親が離婚して母親を支えている、大人しいが優しく、良くできた人間だと思う、昔から長い付き合いのある人物だ。
元々俺の母親と彩音の母親が同じ学校の卒業生であり、その縁で俺らも互いに意識するようになった間柄だ。互いにつらいときは支え合い、同じ高校、同じクラスでいられたことは幸運であった。
今日は親戚の経営する本屋のバイトもなく、朝からこうして彩音と外に出ては地元である春花町で休日を謳歌していたのだが、それが運命を左右することになるなんて、その時は夢にも思ってはいなかった。
彩音が行きたがっていたCDショップに着き、入ろうとした瞬間突然街の外れから爆発音がして、街を歩いていた人たちが慌てて走り逃げていく姿を見た。
「何事?」
「とりあえず外を見てみよう。ただ事じゃないな。」
俺は彩音と共に、爆発音のあった方角を見た。するとそこには、こちらに向かって猛進してくる狼のような、しかしライオンにも見える巨大な獣の姿が見えた。大きさは、正面から見ただけでも5、6mはありそうだ。どう見ても動物園から逃げ出した生物でもないし、その生物の放つ気は、昔味わったことのあるものであった。
本来ならば逃げるべきだろう。誰だってそうする。俺だってその時はそうだった。しかし傍にいた彩音はとても冷静にふるまっていた。そして覚悟を決めたような表情を見せていた。
その表情を見せたら再度、彼女は何があっても決めたことを曲げない、強い意志を持つ人だとは良く知っていた。それでも俺は彼女に確認を取った。
「逃げるか、彩音。」
「いいえ、戦うわ。私たちには武器があるもの。」
俺は彩音の意見に結局賛同し、ミュージックプレイヤーを取り出した。そして付属しているワイヤレスイヤホンを耳につけると互いに同じ曲を流し始め、近くに落ちていた棒を手に取ると、その獣の集団に向かって走り出した。
「彩音は右から、俺は左からやる。」
耳に流れてくる曲のリズムに合わせ、手にした棒を振るい、その巨獸に立ち向かう。なぜだろう、無謀と思うはずなのに体が勝手に動くような感じ、彩音もそのようであり、巨獣の一撃をかわしながら前足に空中から飛び込みつつ棒で突き刺す。
互いに同じ音楽を好み、踊ることも好きだったがある事件を境に、その力を戦うために使うようになっていた。
俺と彩音しか知らない戦い方、サウンドアーツ(SoundArts)とそう名付け、好きな曲に合わせ、リズムを刻みながら互いに息の合う華やかかつ過激な舞闘術を考案したのだ。それを用いて、あの時のような後悔を抱かないように、俺らは怒涛の攻撃を仕掛けた。
だがそれはやはり、全く歯が立たなかった。それもそのはず、切ったはずなのに手ごたえがなく、まるで虚空を切っているかのようであった。
そして俺は、その獣が口から放たれた光に飲み込まれ吹き飛ばされた。
「ぐはっ、なんなんだ、とても叶う相手ではなかった、あ、彩音は、彩音!」
彼女も俺と同じく攻撃により吹き飛ばされ、壁に激突し力なくその場に倒れこんだ。そして俺も彼女と同じように衝撃をもろに受けて意識がもうろうとなっていた。
武術に覚えがあるくらいで、今まで見たこともない化け物相手にそれが通用するかと思いながらも、怖いと思いながらも、心の中のどこかで俺は挑まずにはいられない感情を抱いていた。
彩音も俺も、あれとは別のなにかに大事なものを奪われた。彩音は祖母を、俺は父さんを。だから後悔したくなかったのだろう。それがいかに愚かなことであっても。
ああ、段々目の前が暗くなってきた。そう、もう終わりかと思い、力なく目を閉じようとしたとき、俺は一人の男が目の前に現れ、手にした刀を天に掲げたのち、その獣を光の剣により簡単に一刀両断し、斬られた獣が光となって消えていく光景を目の当たりにしながら意識を失った。
「まだ息があるか、おい伯爵、そちらの方は?」
「一人の女の子を救出したが、怪我がひどい。応急手当をしたら連れていくぞ。」
「そうだな。しかしよくあれを相手にして死ななかったな。素質はありそうだ。ボルナレロとゴールドマンの言うとおり、もしかするとな。」
二人の男は瓦礫が覆い尽くす街を見ながら、それぞれが少年と少女を担ぐと、紫色の門のような空間を呼び出し、その中に入っていったのであった。