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第三章 均衡の終焉 第四節 資格

第四節 資格17


「そこまでして一緒に行動するメリットはどこにあるのですか」


 ミーシャは鋭く突っ込んだ。


 先に進めるという点ではミーシャにもメリットはある。この先また二人で取り組む課題がある場合もあるかもしれないし、パートナーがいるという事はゾーテとしてもメリットはあるのだろう。


 しかし、それだけではないはずだ。


 このゾーテにはそれ以上の何かが腹の底にあるはずなのだ。それほどにきな臭い匂いを感じるのである。勿論、表面的にはそんな匂いを表立って出しているわけではないが、ミーシャの第六感はそれを感じ取っている。


「単刀直入だね」


 ゾーテは笑いながらそう言った。


「いいよ、訳を教えてあげる。正直これ以上君から義姉さんの情報を得る事は難しいと思ってね。だったら傍に置いて義姉さんがわざわざ君をパートナーに選んだ理由を探ろうって魂胆さ。それに、一緒にいればちょっとしたときに義姉さんの情報が落ちるかもしれないしね」


 ゾーテはするすると説明した。


 なるほど、理には適ってる。が、ミーシャは腑に落ちなかった。


「それだけ」


 正直、ミーシャとしてはそれだけであるのならゾーテと行動するのもありなのだ。ミーシャ自身に実害がないからである。


「それだけだけど、何か変かい」


 ゾーテは首を傾げて見せた。


「ああ、そうか。そこまでして僕が義姉さんを警戒する理由がわからないんだね」


 ミーシャとしてはそうではなかったが、それも気になったので頷いてみせた。


「さっきのやり取りを見てどう思った」


 さっきのやり取り……。正直、ネイルの圧勝だったとミーシャは思った。


「それが答えさ」


 ミーシャは何も答えなかったが、僅かな動きでゾーテは答えを察したらしい。こういうところがこの男の怖い所である。


「つまり、僕は思うわけだ。この四人の中で、僕以外で、誰が一番ドラグナーに近いかとね。すると、必然的に義姉さんとなったわけだ。僕は義姉さんの前で主導権を握れたことは今までない。それほどに強い個なんだよ、義姉さんは」


 確かに、冷静に考えるとそうなのかもしれない。こうやって四人が出揃って、色々と思い返すと一番ふさわしいのはネイルであるように感じる。ゾーテの言っていることに間違いはない。


「その義姉さんをどうにか出し抜きたいのに、いつの間にやら義姉さんには協力者がいた。君だよ、ミーシャ。義姉さんをどうにかしたいのに、義姉さんの勢力は拡大していたわけだ。そこで僕は考える。どうやったら義姉さんを出し抜けるだろうって。答えは簡単さ。協力者を自分のものにすればいい。そうすれば義姉さんの勢力が弱まるだけじゃなくて、自分の勢力が強くなる。つまり、義姉さんを出し抜けるって訳さ」


 なるほど、とミーシャは思った。これは事実だろうと。ゾーテの提案に納得ができた。


「君にもメリットは十分あるだろう。自分と行動する理由がわからない相手より、わかる相手の方がやりやすいはずさ」


 たしかにそれもそうなのである。


 ミーシャはここに来て、もっと現実的にゾーテとの行動を視野に入れ始めた。


 実際行動した場合のデメリットはどこにあるのだろう。

感想など頂けると幸いです。

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