第三章 均衡の終焉 第四節 資格
第四節 資格16
ミーシャがなんでと口に出したとき、ネイルは旅は道連れ世は情けだと言っていた。その言葉の通りだとして、何の情けがあるのだろう。
例えば、ミーシャがこれから試練に臨むにあたって、苦労しそうだからというのが思いつく。しかし、そこまでして情けをかけるメリットはないはずだ。これは競技なのだから、苦労して躓くのであればそれはネイルにとって有利になるはずだ。
仮に、食糧の効率の良い獲得の仕方を教えたことによる義理としてというのはどうだろう。しかし、これも試練の突破方法を教えるという対価が既に支払われている。
もっと、ざっくばらんに考えてみよう。例えばネイルがこの状況(二人で臨む試練がある)ことを予見していたとするのならばどうだろう。ここにおいてようやく、ミーシャを飼っていた理由もわかる気がする。仲良くしておけば、試練に有利になるからだ。
更には試練内容を知っていたから襲撃案に乗らなかったというのも頷ける話だ。
と、するとそれをどこで知りえかだ。もしや試練内容が漏れていたという事だろうか。
考えても考えても謎は深まるばかりである。
「ね、不思議だとは思わない。義姉さんの事」
ミーシャは声にびっくりして顔を上げる。そうだゾーテと話しているのだったと思った。
「いえ、まあ、はい」
「だろ。たぶん利用されてるだけだと思うよ」
何かに利用されている。その感はなくもないとミーシャは思った。
「これが終わったら、僕と行くかい」
ゾーテは不敵に笑いながらそう言った。
「へっ、何で」
ミーシャはついつい聞き返してしまう。
「義姉さんと一緒にいるよりはましだろ」
果たしてそうだろうか、ミーシャは疑問に思った。ゾーテこそ利用する気満々に見える。
「貴方こそ利用する気じゃないんですか」
ミーシャはストレートに言ってみた。あまり気乗りしなかったのでストレートに突き放した方が良いように思われたからだ。
「うん、まあね」
と、意外にもあっさりと認められてしまう。ミーシャは拍子抜けになった。
「えっ」
「当たり前だろ。これは競技なんだから。選ばれるのは一人だけ最後は他を出し抜かなきゃならない。当然だろ」
さっぱりと理由を言うので、ミーシャは少し混乱した。
「そんな人と行動を共にすると思いますか」
「条件次第だろ。僕は君にこの試練が終わった後拘束せずに先に進む権利を与えるよ。そして、出し抜きたいときに自由に出し抜いて良い権利も与える」
ゾーテの腹の底が読めなくなった。
感想などあると幸いです。




