第三章 均衡の終焉 第四節 資格
ネイルの紹介忘れてた。
第四節 資格12
アイオスがぶつぶつと口を動かしている。そして「怨」という叫び声が聞こえ、急に巨大な禍々しい球体が姿を現した。
「全員殺す。邪悪なる災厄」
ただの威嚇ではないようだ。かなり本気の言葉だ。
「ちょっと待って、殺したら失格になりますですことよ」
ネイルが慌てて説得する。
「全員死んだら候補は俺だけだ。この方が手っ取り早い」
そこでアイオスの付近にまた爆風が起こった。一瞬砂煙が漂う。
「貴様ー」
アイオスの怒声が響き渡る。砂煙の先には今度は無傷のアイオスがいた。
「ちっ」
ゾーテが舌打ちをした。
「絶対殺す」
アイオスの作った禍々しい球が動き出す。と、ネイルがぶつぶつと何かを呟いていた。
「神秘なる爆発」
禍々しい球から光の線が溢れ出す。そして程なくその光は闇を食らいつくし、禍々しい球は弾けるように消えていった。
聞いたことがある。ネイルは確か防御の天才なのだ。アイオスが戦闘狂ならネイルはその真逆、冷静なる守護者の異名を持つ。その才は異常で、あらゆる攻撃法の対抗策を知り尽くしていると言われるほどだ。本来、対抗呪文というのはその攻撃特性を把握した上で為される技である。よって通常は出来ても二撃目以降に打ち消せる状況ができるのだが、ネイルはずば抜けた洞察力により見ただけでその特性を理解出来るらしい。あるいはそれは圧倒的知識の産物だとも言われ、ネイル自身も多彩な攻撃法を操れるのではと噂されている。一番怒らせたくない相手だ。
「数の不利を悟りなさい」
ネイルが忠告をする。
「どいつもこいつもー」
アイオスの方は震えていた。
「明らかな殺意があったんだ。こいつは失格で良いのではないか」
ゾーテが周りにいるであろうガーディアンズにそう呼び掛ける。が、返事はなく風が流れるだけだった。
「アイオス。落ち着くですことよ。貴方とやり合おうなんて人はここには誰もいない。ですが、貴方がやり合うのであれば皆が敵になる」
ネイルが諫めるようにそう言った。アイオスは納得していないようだが、睨み付けるだけで特に攻撃に移る様子はなかった。
「さて、状況を整理しますですことよ」
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