第三章 均衡の終焉 第四節 資格
だんだん仲良くなる二人
第四節 資格8
「ネイルさんが私と行動を共にするメリットってなんですか」
耐え切れずになったのでミーシャは直接聞くことにした。
「何ですの、急に」
ネイルは足を止めて振り返る。
「いや、私といても損するだけかなと思って」
ミーシャは聞きながら軽率な質問だったかのように思えてきた。自分としては損はないのだ。
「メリット。そうねぇ。他の候補者と対峙した時に有利になるわね、無駄な戦闘を避けられそう」
ネイルはそう答えた。いかにも今考えたという感じだったが、理由は納得できるものだ。
「なるほど。確かに」
確かに二人いた方が対峙した時に戦闘に発展する可能性が低くなる。相手も二人とは考え辛い。冷静に考えればネイル側のメリットもしっかりあるのかもしれない。邪魔になったら伸して進めばいいだけなのだから。
と、そこで風が吹いてくる。そしてその風はある匂いを運んできた。
「焼けた匂い」
ネイルがそう呟いてミーシャと目を合わせる。ミーシャは頷いて木を登った。
木の上から周りを眺めると、東の一部が焼け野原になっていた。
(戦闘)
焼け跡は一直線になっておりしばらく竜山の方へ向かっている。これはもしかしたら
「ショートカットってところかしら」
横で声がしたので一瞬びっくりする。ネイルも上がってきていたようだ。
「ショートカット」
確かにそういう風にも見える。この森の道は中々険しい。時折迂回しなければ先に進めない箇所もある。そういうのを嫌ったという事だろうか。それにしても
「だいぶ大掛かりにやりますことね。危険ね、あの相手」
ネイルがそう言う。ミーシャとしても同感だった。仮にも自然保護区であるこの森を焼き払うなど正気の沙汰ではない。
「周りへの警告」
ミーシャが呟く。
「えっ」
「邪魔する者は容赦しない」
「そうね」
しばらくその跡を眺めていると、ミーシャはあることに気付いた。
「あっ」
「どうしましたですこと」
「続いてる。私達が向かう方に続いてる」
ミーシャがそう言うと、ネイルも慌てて確認する。そして、息を呑んだ。
「これで、一緒に行く理由が明確になりましたですことね」
ネイルが言う。
「えっ」
「あの怪物を倒すため、なんてどうですこと」
ネイルがにっとミーシャに向かって微笑みかける。ミーシャもそれを見て笑い返した。
「納得できました」
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