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第三章 均衡の終焉 第四節 資格

登場人物多いと名前考えるの大変です。

 第四節 資格6 


 ミーシャが目を覚ますと、日が昇り始めており、日光の光が瞼を照らしていた。


 女性の服が掛けられている。いつの間にか寝ていたのをネイルがまた介抱してくれたようだ。


「おはよう、寝坊助さん。川に手を入れたまま寝るなんてまた流されたいですこと」


「あっ、ありがとうございます」


 ミーシャは寝ぼけながらもしっかり頭を下げて礼を言う。しかし、不思議なものだ。こうして介抱するメリットはネイルにはもうないはずである。


「ドラグナーになるのは私ですけど、国民が危険な状態にあるのを見過ごすほど傲慢な王になるつもりはありませんことよ」


 ミーシャの不思議そうな顔に答えるようにネイルは付け加えた。


「まあ、そんなことは取るに足らないことですわ。さあ、起きたのならさっさと行きましょ」


 ミーシャはまたそこで不思議な顔をした。


「一緒に行くのですか」


 そう、国民どうこうの理屈は今は関係ない。今は敵同士なのだから。


「もちろん、先行するのは私よ」


 ミーシャの問いの意味が分かっているのかいないのか、ネイルはそう言ってぐんぐん進んでしまう。


 ミーシャは慌ててそれについていく。


「ここね」


 そう言って辿り着いたのは昨日の滝である。ミーシャはなんとなしについてきたが、ネイルの真意はつかめていなかった。


「確認ですけど、滝を登る試練で良いですこと」


「はい、ああ」


 ミーシャは自分を連れて来た意味をなんとなく理解した。つまり、情報提供係なのだ。


「ただし、登るといっても法力のみの力でです。魔術などは使えないので注意して下さい」


 「ミーシャとしては色々と恩もあるので惜しげもなく情報を提供する。「わかりました。先に行くのは私で良いですこと」


「はい」


 これで貸し借りなしになれば万々歳だ。もっとも、一度試練を受けたらもうそれでまた会う事はないだろうが。


 ネイルが数歩進むと魔術障壁が一帯を包み込む。試練が始まったようだ。ミーシャとしては特にその間やることがないので、食べ損ねていた朝食を摂ることにした。


 しばらくして、ほんの二、三十分で、障壁が無くなった。ネイルの実力を鑑みればそれも当然か。ミーシャはそこは特には気にせずにすぐに数歩進み出す。そしてまた魔術障壁が展開された。


 昨日振りの景色である。昨日は夕方に来たというのもあり、全体に赤みが掛かっていたが、今は明るく照らされている。


 昨日失敗したというのもあり、あるいは景色の見え方の違いか、どことなしに滝が昨日より巨大に見えた。


 一瞬水の中で溺れかけた光景がフラッシュバックし、背中がゾクゾクっと震え上がる。


 そんな気持ちを落ち着かせるためミーシャは深呼吸をして、昨日ネイルに教わったことを思い出す。


(練習通りにやれば大丈夫)


 そう心で念じて、滝壺の方へと向かって行った。


 川に手を入れて川全体、滝全体を探る。


 昨日はただ流れるだけの川だったが、今度は滝があるため、上下の動きが激しく感じられる。同じ方向にだけ意識を向けると、ダメそうだ。いや、問題なのは滝を登る事だけなので、滝だけに意識を向けるべきか。


 滝にのみ意識を向ける。


 滝の流れは速い。上の方まで探ろうとするのだが、水圧に押されて法力が流される。上手く上まで探れない。


 そこでミーシャは法力を針のように細くして進行の圧を強くすることを思いつく。


 意識を収束させ、ともかく上まで押し上げる。


 と、なんとか上まで意識が届いた。


 その後その針を少しずつ太くして滝全体に意識が行き渡る様にした。


 ここまでで、少し息が切れる。


 かれこれ三十分は過ぎただろうか。まだにわかでしかない技術を長時間使用するのはかなり体力を消耗する。


 ミーシャは深呼吸をする。疲れがどっと溢れ出すようだった。法力まで少し弱まったので改めて気合を入れる。


(これを包み込むようにして)


(一気に高める)


 汗が一滴流れ落ちると同時に滝の勢いが弱まる。今だ。


 ミーシャは休む間もなく法力フィールドを張った。


 時間がないのだ、こうして流れを弱まらせることができるのはもって30秒だ。大体かけた時間の60分の一しか効力が持たないのは昨日の練習で明らかだった。


 しかも、昨日はただの川の流れだ。今日は勢いのある滝だからどれくらい持つかわからない。


 息つく暇もなく滝壺の下まで移動し、そのまま駆け上がる。


 昨日のように足が持ってかれるようなことはない。これならいける。


 と、十秒が経った頃、滝は元の勢いに戻っていた。


 その時ミーシャは滝の上の川のほとりにいた。


 酸欠で目の前が真っ白になっている。


 ミーシャは大の字に倒れて、暫し休むことにした。


 と、魔術結界が解かれていく。そして、北東の方に赤い道しるべが示された。


 ミーシャはそれを見届けてから頭を地面につける。


 木々の枝の間から見える空は青かった。ミーシャはそれをしばらくボーっと眺めた。

ネイルはまだ出てきます。


感想など頂けると幸いです。

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