表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/77

第三章 均衡の終焉 第四節 資格

あの人が登場です。

 第四節 資格4


そうして進んでいると、川の上流で滝にぶち当たった。そしてそこでまた結界が張り巡らされた。


 日はもう沈みかけであり、夕日が滝を照らしている。


 ここまでの道のり、特に前方を行く候補者との接触はなかった。そこには三通りの考えがある。


 1、もう先に進んでいる


 2、もう追い抜いている


 3、先ほどの試練で違う道を示唆された


 1は食糧問題を早くに済ませ、この課題もそこまで時間が掛からずに進んだという事である。


 予め、食料を自分で持っていたのかもしれない。一応、持ち込めるものは服と魔・法道具の類のみであるが、空間収納術が使える人であれば食料他必要なものはそこで調達できるという訳だ。


 ミーシャは魔術よりも法力の方が長けているというのもあり、高等魔術である空間収納術は使えない。


 2は食料調達で横に逸れている時にミーシャが追い抜いたという者である。食料調達から調理までをやると軽く三時間はかかりそうである。その間に追い越したという可能性は十分にある。


 ミーシャも道に慣れてきてかなり急ぎ目に進んでいたため、十分にあり得る話だ。


 3は先程の問題に不正解したか何かで違う道を進んでいるという可能性だ。さほど難しい問題ではなかったが、同じ問題が出ていたとも限らない。そういう意味では仮に正解でも同じ道が示されたとも限らないわけだ。こちらも十分可能性はある。


 さて、それはともかく今はこの課題に取り組まなければならない。問題文は滝壺の上に書かれていた。


{この滝を法力を使って登れ}


 なんとも直接的な課題だった。法力が苦手な人には辛い課題だろう。とは言え、ガーディー国は法力国家と言っていいくらい法力に長けている。ここで暮らすものに法力が苦手なものは少ないだろう。


 仮にも国の王として国家の顔になる可能性のある四人だ。法力が扱えないのは論外という事だろう。


 滝の高さは30メートルはあった。最低でも十回は滝の上を走るという事だ。ミーシャの法力フィールドは

半径3メートル。滝壺の下まで行き、また上についてから川から脱出するのも含めると十二回だ。


 瞬間的に十二回の移動を行うのは初めてだ。


 いや、法力フィールドを使って走ることはままある。が、流れのある水に逆らって走ろうとしたことはない。


 先程よりも困難を極めそうだ。


 スゥ―、ハァー


 ミーシャは深呼吸をして心の準備をする。そして、法力フィールドを張った。


 タッ


 一回目で滝壺の下まで移動した。ここまでは予定通りだ。


 タッ


 二回目で滝を登り始める。と、ここで異変に気付く。思った以上に足に負担が大きい。水の上を綺麗に走る事はできずに、少し足が浸かる。


 タッ


 三回目ではもう足がずぼっと滝に浸かっていた。身体が水に押し流される。もう一歩は踏み出せずにそのまま身体は滝壺に落とされてしまった。


 激しい水の奔流に巻き込まれ、身体が言う事を聞かない。


 まずい。


 息が続かない。


 法力フィールドはまだ張られている。水の勢いが弱まったところでともかく上へと脱出した。途中耐えられずに水が大量に口に流れ込んでくる。それとともに意識が遠くなり、ミーシャは気を失った。


 




 目を覚ますと、日は暮れており、目の前には焚き木が焚かれていた。ミーシャは自分の状況を確認する。


 誰かの服がかけられている。女性のものだ。


 参加者で女性と言ったら自分とネイルだけだ。ネイルが助けてくれたという事だろうか。


 しかし一体なぜ。


 自分の服は既に乾いているようだ。何かの魔術か法力だろう。


 服だけを乾かすのはなかなか高等魔術である。あるいは法力か。ともかく相当な使い手だ。


 とすると、ガーディアンズの誰かかもしれない。


 つまり自分は失格になったという事である。その場合。


 ミーシャが考えが纏まらずにいると、近くで足音がした。ミーシャはすぐに警戒する。


 足音の先を見ると、そこには黒い影があった。


「おはよう、寝坊助さん」


 その声には聞き覚えがあった。そうだ、教室でだ。その人物が近づくにつれ焚き木の明かりが人物を照らし出す。


 ネイルだ。


「ネイルさん、どうして」


 答えがわかると共に、ミーシャは疑問が溢れ出て口を突いて出る。


 ネイルは清ました顔ですぐに答えてくれた。


「私が前の課題を終えるとすぐに、後ろで結界が張られましてね。ちょうどお昼時だったので、食料を調達していたら、戻って来た時に結界が解かれていましたの。これは他の候補者を確認できると思い、物陰から眺める事にしましたの。そしたら貴女が携帯食料を片手に歩いているものだから、私の知らない何かを貴女が知っていると思い、つけさせてもらったってわけですことよ。そしたら目の前でまた結界が張られて、しばらくしたら貴女が結界の中から気を失ったまま流れてきて、食料を頂くついでに助けてあげたってわけです」



感想など頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ