第三章 均衡の終焉 第四節 資格
前回と合わせて一話かな
第四節 資格2
案の定進んでいた方向は王都の方に近づいていた。行くべきはここから北東の方角である。上から見ると改めて思うが、この森は広大だ。一面が木に覆われ、その先にリバルドのいる山が遠くに見える。今来た道を逆算すると、直線距離でも一日以上かかりそうだ。
つまり、野宿は必死である。これも試練の一つなのだろう。この森自体をどう攻略するかが問われているのだ。そういえば、食料も特には持たされていない。食料の確保にも時間を割く必要がありそうだ。
そういった事情を考慮すると、三日はかかるかもしれない。これは他の候補者も大して変わらないだろう。早足で闇雲に歩き回るより、効率よく進んだ方が歩が遅くとも早く辿り着けそうだ。
ミーシャは一端、木の上からルートを幾つか作ってみる。一直線に進むのはほぼ無理だ。それほど進み辛い地形である。それにどうせ途中で方角がわからなくなる。ポイントポイントでわかりやすい場所に移動していくのが正解だろう。
とりあえずは、ここから東にある少し開けた場所だ。木が生えていない場所があるのだ。そこに行ってみることにする。
ミーシャは木を降りて、目標の場所へと動き出した。
小一時間程かけて目標の場所につくと、そこには何もなかった。もしかしたら、他の候補者のスタート地点だったのかもしれない。ミーシャのスタート地点もそう言えばあまり木が生えていなかった。つまりはそういうことだ。
さて、だとするならば長居する必要もない。次の地点に向かうだけだ。
と、その前に一つ気になることを見つけた。
出口の方角だ。ミーシャが次に進もうとしているポイントへの方角と同じだった。
何が気になるのかというと、ミーシャはスタートと同時に出口に向かってまっすぐ進んだのだが、その先は王都に続いている道だった。
対して、ここの出口は確実にリバルドの山へと向かっている。
なるほど、一番不利な場所をと志願したが、そういう事だったのかとここでミーシャは理解する。そして、そこでの理解がもう少しこの場所を調べてみるべきだという衝動を駆り立てた。
つまりは誰がここにいたかを割り出せれば、この先衝突した時に対応しやすいからだ。おそらく同じ方向に向かう事になる相手だ。追い付く可能性だって十分ある。というより、追い付くように動くのだ。この調査には意味がある。
ミーシャは魔術を使って何かしらの痕跡を調べてみる。すると、居た者の情報こそでなかったが、とある袋が埋まっているのを見つけ出した。
袋の中を見ると、簡単な携帯食料が詰め込まれていた。
なるほど、何もなしに放り出す訳ではないらしい。おそらくこれはミーシャのスタート地点にもあったはずだ。今更取りに帰る気はしないが、この事実は今後の進行の方針にはかなりプラスに働いた。
食料が確保できたという事ではない。ここのスタートしたものが食料に困るという事でもない。
おそらくあるであろう試練場所にはかならずこういう物があるかもしれないという事だ。
注意深く、冷静な者に有利な環境が得られるという事だ。これは大きな情報である。
ミーシャは一先ず袋を締め、次の地点へと向かって行った。
次の地点は三又に分かれて流れる川の合流地点だ。川を探して辿れば良いだけなので、そう難しくはない。
そして道中、先ほどのスタート地点からスタートした人が通ったであろう痕跡もあった。どうやら同じポイントに向かっているようだ。ますます衝突の可能性がある。
衝突した場合はどうなるのだろう。やはり戦闘になるのだろうか。正直向こうの方針による。
ミーシャとしては無闇に戦闘するのは気が引けるのだ。勝てる自信がないというのもあるが、無駄に消耗して進めば他の人と衝突した場合などに不利であるし、戦闘が長引けばそれだけ他の候補者から離されてしまう。
勝てる自信がないというのは単純に他の候補者はミーシャより学年が上である。一歳の違いでも習っている法術、魔術の違いや練度の違いが如実に出てくる。ミーシャがいくら優秀とは言え、他の候補者も候補者として養成された言わばエリートだ。そう簡単には勝てないだろう。負ける可能性だってある。
どうにか交渉して戦闘は避けるべきなのだ。しかし、その場合はルートを譲る必要性がありそうだ。
そうこうしているうちに三又の合流地点まで着いた。
ご感想など頂けると幸いです。




