表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/77

第三章 均衡の終焉 第一節 暗殺

きりのいい場所がわからない

 第一節 暗殺4


「一人ずつしか攻撃できないなら、あまり意味はないな」


 フロールが攻撃を捌いて一人を突き飛ばす。


「あははっ、だから未完成。でも、少し慣れてきたのはこっちも同じ」


 と、しかしそこで残った二人が同時攻撃を繰り出した。一人は足払いを、一人は掌底を身体の中心に。


 フロールは飛び上がって足払いを避けるも、掌底はガードとなってしまう。いや、ガードで防がれていると言った方が良いか。


 しかし、その僅かな硬直を狙い足払いをしていた方のミーシャがすぐに追撃する。足払いの遠心力を使った後ろ回し蹴りだ。これがフロールの腹部にヒットした。


 ドブッ


「ぐはっ」


 今度はフロールが飛ばされた。そのまま空中を漂い地面へと落ちていく。


 と、


「風掴み」


 ぼそりとそんな言葉がフロールから零れた。


 すると、落ちていくだけだったはずのフロールの身体が宙に浮いている。よく見ると両の手で何かを掴んでいるようだ。


「今のは良かったぞ」


 そう言って、目を見開き、手で掴んだものを引くようにしてミーシャの方に飛び出した。


 ミーシャもその様を見て構え直す。


「加速、そして金剛の型」


 フロールは空を蹴りさらに加速した。しかも顔つきが鬼神の如き形相になっている。心なしか目が赤く光っているようだ。


 ミーシャは飛ばされた三人目が戻ってきていた。そして、三人が円を描きながら踊り出している。そして、三人が同時に手を前に出した。


「絶対防御」


「剛拳一閃」


 三人で防御シールドを張るもそれはフロールの一撃で消し飛んでしまう。そのままフロールが距離を詰めて、鋭い蹴りで二人を蹴飛ばした。


 三人目はめげずにその隙を縫って上から奇襲をかけるも、フロールのサマーソルトが顎を捉える。あえなく、三人とも飛ばされた。




 目が覚めると、夜空が目の前に広がり、星々がキラキラと輝いていた。頭を動かそうとするとまだ少し痛みが走る。そして、いくらかくらくらしてしまう。


「目が覚めたか」


 フロールが横で同じく空を眺めていた。どれくらい気を失っていたのだろう。


「ぎりぎりまだ授業時間内だ」


 フロールがそう言った。


「本気出し過ぎ」


 ミーシャは悪態を吐いて応える。


「思ったよりも優秀な生徒だったのでな。さて、早速復習だ」


 フロールははっはっと笑って、講義に入った。


「最初、接近し過ぎだな。翻りを計算しても三メートル近づくのではなく、二メートル半で良かった。この五十センチがカンターを狙えるかどうかに変わる」


「いやいや、カウンターは無理っしょ。フロール相手じゃ。それに、もっと踏み込まれたら危ないし」


「全員が私のような使い手とも限らないだろう。それに、だとするならイメージ段階から練り直しておくべきだな。イメージで負けてては法力戦はまず負ける」


「フロールに勝てるイメージ湧かない」


「それと今回は模擬戦だから良いが、土の柱はもっと殺傷力のある刃状のものにする方が良いな。掴まれると足場にされる」


「掴んで足場にできる人なんてそうそういないと思うけどね」


「後、三人に分身する技だが、連携が取れないのであれば二人に絞った方が良いのでは。二人の時は連携攻撃ができていたようだが」


「ああーうん。そうかも。いや三人出せばビビるかと思って」


「多少関心はしたがな。こけおどしは普通、通用しないと思った方が良いぞ」


「はーい」


「とりあえず、以上だ」


「ありがとうございました」


「後はゆっくり休んでおけ」


 そう言って、フロールはその場を離れていった。かくしてフロールの授業は終わった。


そこからミーシャは帰る訳でもなくしばらく空を仰ぎ見ていた。夜が更けるにつれ、増えて輝きが増す星を眺めながら、ぼーっと戦闘を思い返す。


 フロールと以前戦ったのは半年前で、その時よりは成長できていたとは思う。しかし、それでもなお圧倒して負けた。そう思うと、溜息が一つ洩れるのである。まだまだやらなければならないことはたくさんある。そんなことを思ってから、ミーシャは起き上がった。



「では、補習に入ります」


 ナハトがコホンと席を突いてから話し出した。ミーシャは席に座っている。


「今日の授業は簡単明瞭。どうすれば寝坊をしなくなるかです」


「えっ」


 ノートをとる気満々だったミーシャが顔を上げて腑抜けた声を出す。


「貴女がどうしたら寝坊しなくなるかです」


「は、はい」


 ナハトの目が意外と真剣なものだったので、ミーシャは居佇まいを正した。


「ガネーシャ、あれを」


 そして、外に向かってナハトはミーシャの使用人の名前を呼ぶ。ミーシャはちんぷんかんぷんだった。そんな中、扉が開いて入ってきたガネーシャは久し振りで、ミーシャはそれとなしに言葉を掛ける。


「久し振り、ガネーシャ」


「ご無沙汰してます。ミーシャ様」


 ガネーシャは両手に何かを持っており、大事そうに抱えていた。そのものをよく見るとミーシャは声を急に上げる。


「ってそれ」


「そうです。貴女が夜な夜な編んでいるセーターです」


「ちょ、待って、なんで」


 ミーシャは完全に混乱しわたわたする。


「これが原因なのでしょう」


 ナハトは強めの語気でミーシャを押さえつけるように言う。


「そ、そうだけど」


 ナハトの語気で動きこそ止まるものの、ミーシャはどこか逃げ出しそうな格好である。


「正直に答えなさい。誰にあてたものなのですか」


 ぐわんっとナハトが前に出るように迫ってくる感覚を覚えるミーシャ。しかし、実際は一歩も動いていない。これがナハトのプレッシャーだ。


「誰にあてたものなのですか」


「は、はい。ドラグナーです」


 勢いに負けてミーシャは口を開いてしまう。



ご感想など頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ