表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トライアングルドラグナーズ  作者: 桃丞 優綰
忍び寄る魔王の脅威
41/77

第二章 忍び寄る魔王の脅威 第四節 蜃気楼の盗賊団

盗賊団編ラスト

第四節 蜃気楼の盗賊団3


 リオンはすぐさま結界を張る。それをみたドメスもすぐに結界を張った。モリスは間に合わず白い煙を吸い込んでしまったようだ。と、ドメスの横を何かが通り過ぎる。ドメスは躊躇せずにすぐにその後を追った。おそらく覆面の男だ。リオンも少し遅れて二人を追う。


 煙に阻まれ、視界は悪かったものの、ドメスの結界による魔力の痕跡が残っていたため、なんとか追うことはできた。ドメスが覆面の男と一緒なら両方と接触できるはずだ。そのまま追っていると、洞窟の複雑な迷路を抜けて外に出た。


 煙が霧散し、視界が良くなる。月明かりだけでも十分だと思えるくらいだ。二人は崖を駆け上がり、森の中へ入ったようだ。魔力の痕跡がそう言っている。リオンも魔術を使い崖を駆け上がる。まだそんなに離れていない。


 後を辿ってぐんぐん森の中を進んでいくと、やがて、少し開けたところに来た。そしてそこに二人の影があった。リオンは気配を完全に消し、近くに張り付く。


「これはこれはドメス様。御足労ありがとうございます」


 覆面の男が話し出す。やはりどこかで聞いたことある声だ。


「もう逃げられないぞ」


 逃げられない。ということは仲間ではないのか。


「いや、逃げる必要はない。ここで死んでもらう」


 やはり仲間ではない。ともすると、何故ドメスは盗賊団を追っているのか。


「その前に、誰が主人か言ってもらいましょうか、コヨルドさん」


 コヨルド、そうだ。あの出で立ち、喋り方。コヨルド本人だ。つまりコヨルドが操られているものなのか。


「言うと思うか」


 コヨルドは余裕綽々である。それもそうだ。暗黒大陸を生き抜いた力がある。一人ではまずいかもしれない。


 カサカサッ


 リオンは加勢のために姿を現した。


「ちっ、邪魔者が増えたか。しかもよりによってリオン様ときた」


 コヨルドから余裕の色が無くなった。


「リオン様。ここは私に任せて頂けませんか」


 ドメスがコヨルドに視線を残したまま言う。かなり真剣な声だ。


「しかし、相手はあのコヨルドだぞ。良いのか」


 リオンはドメスの意気を受け取るも相手が相手なので不安がある。


「これくらいを乗り越えなくて、何がドラグナーですか」


 その言葉を聞いてリオンはドメスの意図を察する。つまり、なぜ盗賊団を追っていたのかだ。ドメスは自ら魔王を探し出そうとし、そのヒントが盗賊団にあると睨んだのだ。そして、独自に調査をしていた。つまりはそういうことなのだ。


 リオンはドメスの意気を深く理解し、今度は一歩後ろに下がった。好きにしてみなさいという合図だ。もちろん、いざという時は助太刀する意思もある。


「ありがとうございます」


 ドメスはそう言って一歩前へ出た。


「おいおい、正気か。俺もなめられたものだな」


 コヨルドに余裕の色が少し戻る。


「なめてるのはお前の方だ」


 ドメスが両手から魔法弾を放った。コヨルドはそれを躱す。そして、躱しながら一発魔法弾を放った。その軌道は鋭く、速い。ドメスはぎりぎりになって躱す。と、続けざまに三発更にドメスに迫る。ドメスは結界を張った。しかし、魔法弾が当たると結界は壊れ爆風が起こりドメスは飛ばされた。


「もう終わりかい」


 コヨルドの笑うような声が響く。どうやら姿を隠しているようだ。


「まだまだ」


 ドメスは血を流しながら立った。そして、目を閉じる。


「死ね」


 コヨルドがそう言うと、森の奥から特大の魔法弾が飛んできた。先ほどよりも速いスピードだ。しかし、ドメスはそれを避けようとはしなかった。


「明鏡止水。波動は流れて元を辿る」


 ドメスは目を瞑りながらそう呟いて、魔法弾が当たる瞬間、手を出して魔法弾に接触する。よく見ると、手には何やらオーラを纏っている。魔法弾はその効力を発揮せずに、ドメスの手に導かれるようにドメスの周りを一周回った。その様は時の流れが急激にスローモーションになったかのようであった。


 一周回ると、魔法弾は来た方向へ勢いよく帰っていった。そして、暫くすると急激に曲がる。


「ふぎゃああ」


 爆発が起こり、コヨルドの悲鳴が上がった。どうやら魔法弾がコヨルドに命中したようだ。ドメスは、コヨルドがいるであろう場所へ駆けて行った。


 しかし、すでにそこにはコヨルドの姿はなかった。


「やりおったな。確かに認めよう。俺は少しお前をなめ過ぎていた。今度は本気で行く」


 そう声が聞こえてくる。と、無数の魔法弾があらゆる角度からドメスに迫ってきた。


「蜘蛛の糸、硬」


 ドメスが叫ぶ。すると、魔法弾がその動きを止めた。


「貴方を逃げないようにするために張っておいた糸が役に立った」


 ドメスはそう言いながら、糸を伝い、暗闇の中を移動する。


 移動した先にいたのは、コヨルドだった。蜘蛛の糸に絡まって、身動きが取れないでいる。


「観念してください。主の名前を言ったなら、命は助けます」


 ドメスはコヨルドを見下ろしながら言った。と、魔法弾が飛んでくる。動かない手から無理矢理発射したようだ。速度はなく、難なく避けることはできた。


「誰が、言うか。早く俺を殺せ」


 コヨルドは、どうしても言わないつもりだ。と、先ほどコヨルドが放った魔法弾が迂回してきて、ドメスの背後を襲う。


 ドーン


 激しい衝撃に一瞬ドメスは意識を失った。と、その瞬間蜘蛛の糸が消える。


「立場が逆転したな」


 今度はコヨルドがドメスを見下ろしていた。ドメスは横たわっている。


「すぐ、楽にしてやる」


 コヨルドが手に魔法弾を作る。そして、その手を振り上げた。


「明鏡止水。我、武闘戦士なり」


 ドメスがそう呟いた。コヨルドが魔法弾を振り下ろす。激しい爆風と共に、辺りに土煙が漂った。としかし、土煙が収まったところにドメスの残骸はなかった。コヨルドは辺りを警戒する。すると、上から気配がした。


 ドメスが鉄拳を振り下ろしていた。四股に魔力が集約している。おそらく魔導武闘だ。ぎりぎりのところでコヨルドは回避した。鉄拳が地面に刺さり、土小石を弾き飛ばす。コヨルドの魔法弾よりも威力がすごい。


「まずいな」


 コヨルドは距離を取ろうとする。しかし、ドメスの身のこなしが早い、後ろに下がったところに張り付かれる。よく見ると、ドメスの目は白眼になっていた。


「くそっ」


 ドメスの拳を両手で受け止める。しかし、威力が高く、片腕は折れてしまった。手が弾かれる。その頃にはすでにドメスの予備動作が始まっていた。身体を回している。そう、これは回し蹴りだ。


 ボゴッ、ドーン


 コヨルドの腹に一発強烈なのが食い込んだ。コヨルドは血を噴き出し、飛ばされ木に叩きつけられる。そこでも血を吐いた。力なく、地面に倒れていく。


 ノシッノシッ


 ドメスがゆっくりと歩いてくる。コヨルドに抵抗する力はもうない。そして、目の前にドメスが立った。


「最後に聞く。主の名前は何だ」


 ドメスの口調がきつい。しかし、そんなことはコヨルドにはもうどうでもよかった。


「殺せ」


 ドメスが拳を振り上げる。そして、振り下ろす。が、しかし、その拳はコヨルドに触れることなく、力なく地面に降ろされた。


「くそっ、時間切れか」


 ドメスの目が通常に戻っている。どうやら時間制限があったようだ。


 と、そこへリオンが駆け寄ってきた。


「大丈夫か」


 二人の満身創痍の様子を見て心配する。すぐさまドメスの方の治療をした。


「すみ、ません。ありがとう、ござい、ます」


 息を絶え絶えにドメスが礼を言う。かなり消耗する技のようだ。


「コヨルド。何故魔王サイドについた」


 リオンは優しく話しかける。魔王についたという表現を使ったのは他でもない、そういう印象を持ったからである。


「俺は、観測が大嫌いだ」


 コヨルドのダメージは深いらしく、声が枯れ気味であった。すると、リオンは片手をコヨルドの喉に当てて治療をする。


「どうして」


 治療を受け、幾分か声の通りの良くなったコヨルドが聞く。


「いいから、理由を聞かせなさい」


 リオンの温かい言葉がコヨルドを包んだ。コヨルドは目に涙が溜まる。


「観測を。観測者を送るのを終わらせたかった」


 コヨルドは少し、しゃがれた声で話す。


「私は生き残った。しかし、それは生き抜いたのではなく、生かされたのだ。魔族の手先として。死を目前とした私にはそれしかなかった。魔族言う事を聞くしかなかった」


 そう言いながら、コヨルドは涙を流した。


「そうか、辛かったろう」


 リオンは介抱するような話し方だ。今度は頭に手を当てる。手から魔力が注がれ、コヨルドの頭には波動を送る。


「いえ、これは言葉の禁呪です。魔術で操られている訳ではありません」


 言葉の禁呪。それは当人の願望を叶える代わりに守らなければいけないことが生じる呪いだ。例えば、金持ちになる代わりに、動物を百匹殺さなければないないみたいな感じだ。この禁呪の厄介なところは、人の欲望の因果律に約束が刻まれる点である。そんじょそこらの魔術などでは解除不可能だ。魔術で操る類のものでもないため、ストックも減らない。


「殺さない代わりに魔王を当選させること。観測者の制度を終わらせる代わりに盗賊を行う事」


 コヨルドが、ぽつぽつと禁呪の内容を言う。


「何故、魔王は盗賊を行わせた」


「はい、攪乱と歴史書の獲得の為です」


「歴史書の獲得」


 リオンは訝しがる。歴史書に利用価値があるとは思えない。


「はい、歴史書は魔術で書き記すものです。そのおかげで劣化したり、改竄されたりすることは普通ありえません。因果律に刻まれるからです。しかし、魔術を辿り因果律に働きかえれば改竄が可能なのです」


 コヨルドが説明する。


「しかし、何故改竄する必要がある」


「この方法で改竄すると、現実の事柄も変えることができます。そして、魔王が改竄したかったのはドラグナーの歴史書にのみ書かれている事柄」


 そこでリオンはやっと思い至った。


「ブードー様の竜穴に張った罠」


「そうです。それが魔王の第二の狙いです。仮に選挙で当選しなくてもーー」


 と、そこでコヨルドはこと切れてしまった。


さてはて、魔王はだーれだ。


今後の活動のため、感想など頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ