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第一章 英雄の誕生 第四節 地下組織ルドルフ

さて、闘技場編ですが、必然的に個人戦闘がたくさんあります。

もう泣きそうです(笑)

 第四節 地下組織ルドルフ2


 闘技場の控室。サリーを含め大会参加者達が一室にひしめきあっていた。サリーは部屋の隅で壁をなぞる。ざらざらしている。懐かしい。サリーはそう思った。そしてふっと笑った。サリーもアマゾネスにいた頃闘技大会に出たことがある。闘技大会は兵士になるための登竜門なのだ。


 兵士を志したのはこの戦争を早く終わらせたかったため。ただその一心だった。戦争は憎しみと疲弊しか呼ばない。サリーはそう捉えている。プルードとか言うドラゴンが決めたことと皆言うが、それがなんだというのだ。殺し合いの先に一体何が得られるというのか。ドラグナーというのはそれほどに重要なものなのだろうか。魔族というのはそれほど恐ろしいものなのだろうか。正直サリーには疑問しかなかった。


 もちろん、トンビ取りがトンビになるようで、気が引ける部分もあったが、現実この国には武力による解決しか方法がなかった。いや、無いと思う。今でも他の方法は無いのかと思案に暮れることがある。当時よりも高い地位につき、できることも守れるものも格段に増えたのだから。しかし、どう思案してもやはり武力による解決に辿りついてしまう。サリーはいつも自分を不甲斐なく思っていた。


 そんな時分に身体がどことも知れない人と入れ替わってしまった。そして入れ替わった先でもまたこうして武力に身を投じている。自嘲が込み上げてくるのだ。


「よう、コルット。こんなところに何しに来たんだ。別嬪さんはこんなところにはいねえよ」


 サリーの目の前には二メートル近くの巨漢が立っていた。周りにはそいつの取り巻きと思われる者が二人いる。三人は半笑いで嘲る様にサリーを見つめている。


「女には興味が失せたんだ。一つ闘技場で暴れてみようと思ってね」


 いかにも柄の悪そうな連中の柄の悪い絡みだ。どうやらコルットの知り合いの様だが、もちろんサリーにとっては初対面だ。説明するのも面倒だから適当に取り合う。こういうところではよくあることだ。戦闘前の気が立ってる状態は少しでも自分の強さを誇示したい衝動に駆られる者がいる。この目の前の男もそうなのだろう。


「ほぅ、あのなよなよコルットが大口を叩くんだな」


 三人はゲスな笑いを上げた。


「もやしっ子にはここは無理だよ。同郷のよしみでこのカーリ様が忠告しといてやる。さっさと帰んな」


 カーリは睥睨しながらサリーに言う。こういう輩は雑魚と決まっている。そもそも優勝者を一人決める大会に取り巻きまで一緒に参戦するとはよほど自分の力に自信がないのだろう。図体だけがでかいでくの坊だ。


「一人で戦う勇気のないやつに言われる筋合いはないね。恥かかないうちにさっさと帰んな」


「何を」


 三人はサリーの挑発に青筋を立てる。だが、手は出さない。そういうルールなのだ。控室での戦闘は禁止されている。三人とサリーは暫く見つめ合う。そして三人はふんと鼻を鳴らしてそのまま後ろを振り返った。


「もやしっ子じゃ大怪我するのが落ちだろうからと、仲間に入れてやろうと思ったがやめだ。速攻で潰してやる。覚えとけよ」


 肩越しにカーリがそう言って、三人は別の場所へと去って行った。今回の大会はサバイバル形式であり、カーリ達のように徒党を組んで戦う者もいるようだ。実際ルール的には問題ない。最後に一人残ればそれでいいのだから、生き残った者達で話し合ってギブアップすればよいだけだ。


 そういう意味では仲間になれるのなら仲間になっておいた方が得だとは思う、が如何せんカーリ達は大した戦力になりそうになく、また態度も気に食わなかったためサリーは相手にはしなかった。そもそお仲間になるような空気でもなかった。


 サリーは周りを一瞥する。徒党を組んでいるのがほとんどで、先ほどのカーリ達の他には騎士装に包まれた五人組や、兄妹のような二人組の剣士がいる。大方カーリ達は自分達よりも数の多い集団を見つけて焦って仲間を探しているのだろう。他にもカーリ達と同じように仲間を探しているような者達がいる。どうやら一人で戦うのは随分と不利になりそうだ。サリーも目ぼしい仲間を探すことにする。


「あーら、断っちゃたんだ」


 と、探そうと動き出したときにどこからともなく女の声が聞こえてくる。サリーは声の方を見るとそこは柱で、柱の陰から声の主が現れる。


「聞いちゃった。さっきの会話」


 茶目っ気に声を弾ませながら妖艶な女性が現れる。魔術師の類だ。部族の集落は脳筋の男のイメージが強いが魔術師や女性の兵士もちゃんといる。ようは強ければ兵士にはなれるし、対アマゾネスの軍編成には女性兵士は有効だ。また対魔術軍にも魔術師は有効なのだ。


「一人で戦うつもり」


 妖艶な女性はサリーに語りかける。その声は甘く、性的なものを刺激するかのようだ。実際、サリーはその姿と声を見て身体が異様に高ぶるのを感じた。下半身には緊張が走り、上半身は動悸が激しくうねる。呼吸もどこか苦しくなり、息がどことなく熱い。サリーはこのような感覚が初めてであり、自身の感覚に戸惑う。


「だいぶ、強がってたようだけど、貴方強いの」


 女性がゆっくりとサリーに近づいていく。女性が近づくたびにサリーは身体が緊張で硬くなっていくのを感じた。寄るな。そう言おうとするが、言葉が出ない。


「あら、何そんなに緊張しちゃって」


 女性がサリーの周りを回りながら楽しそうに話す。どうやらこちらの異変に気付いたようだ。サリーは気を引き締め直して息を吐き切る。


「君は誰」


 サリーは目は合わせないようにしながら言う。


「私はメーテ」


 すると背後に回っていたメーテが肩越しに軽くもたれかかってきた。それを認識した瞬間にサリーは抑えていたものが爆発しそうな勢いで暴れ回るのを感じ、メーテを押し倒したいと本能で感じる。無論理性がそれを止めて押し倒したい衝動は女性を引きはがす行動へと昇華される。サリーは距離を取り、身構える。何かの魔術にやられてるのかもしれない。


「触るな」


 強くサリーは突き離した。メーテをにらみつけ警戒を解かない。


「可愛いんだ。坊や」


 対するメーテは余裕の表情で笑い上げていた。そして、何もしてないわよと口を添える。サリーはその言葉を信じてはいなかった。あまりにも不思議な体験で、今もなおどこかで混乱している。


「ねえ、私と組まない。悪いようにはしないから」


 メーテは真面目に構えてそう言う。サリーはその言葉の響きに少し落ち着きを取り戻す。彼女もまた仲間を探している一人の様だ。


「申し訳ないけど、大会の商品は必要でね、賞金の方ならあげられるけど、願いの権利は頂くよ」


 断ることも考えたが、サリーは前向きに考えた。この女性の魔術は何か得体のしれないものがある。敵となったら厄介そうだ。と、理屈では考える。が、実のところはこの女を守らなければという不思議な感覚も伴っていた。


「へぇ、願いね。何の願いかしら。まあいいわ。それでも私は構わないわ」


「もう一つ、俺はまだ君を完全に信用したわけじゃない。二人が生き残った時は俺が勝者になる。でいいかな」


 サリーにとってはメーテは得体のしれないところが多い。裏切るような感じには見えないが、念のための提案だ。


「ええ、わかったわ。それでいいわよ。ただ」


 メーテは少し逡巡した後快く応える。しかし、すぐにサリーを見据えて言葉を足そうとする。


「ただ、願いが聞かれない分、私の願いを代わりに聞いて欲しいの。勝ったらでいいわ。私と一晩付き合って頂戴」


 サリーは一瞬何のことかわからなかった。しかし、身体の奥底から歓喜が溢れ出してきて、その感覚に諭される。この女はこの身体を求めている。きっとそうだ。何故自分はそんなことがわかる。訳がわからない。


「喜んで」


 頭は訳がわからなく混乱しているのに口から出てきたのは快諾の言葉だった。それがさらに混乱を産む。


「ありがと」


 メーテはウインクする。サリーはそれを見るとドクンと心臓が跳ね上がる。


「君、何かした」


 サリーはメーテを睨み付ける。自分の感覚が自分でないようだ。不快感が募ってくる。そしてそれが相手への疑いを強くする。相手は魔術師だ。何かの魔術で攻撃されているのかもしれない。


「んっ、いえ、何もしてないわよ」


 メーテはころころと変わるサリーの態度に疑問符を持つ。メーテはそれでもサリーの様子が変なことには当てをつけており、すぐさま不敵な笑みを浮かべてサリーを見つめる。


「あーあ。別に魔術なんかは使ってないわよ。貴方のその感覚の答えは優勝したらわかるわよ。夜が楽しみね」


 そう言ってメーテは軽く笑い声をこぼす。そして、おもむろにサリーに近づき、頬にキスをした。


「ちゃんと守ってね。私の騎士様」


 メーテは立ち去って行った。サリーは一歩も動けなかった。動けないだけでなく、抵抗もできなかった。キスされる瞬間、魂が抜けてしまったような全身と思考の硬直を体験した。よくよく思い返すと、それまでに沸き起こって来た感覚は不快なものではなく、どこか幸福感に満ちていた。ただ、思考とリンクしなくてそれが不快だったのだ。


 確かに相手に敵意はなかった。ただ利用してやろうというほどの印象も受けない。何かを自分に感じ、味方にしようとしている印象だった。最終的な目的はわからない。


 いや、それも気になるがやはりメーテといた時に感じていた不思議な感覚が気になってしまう。メーテがいなくなると随分と落ち着いてきた。やはり魔術の類なのか。警戒はずっとしていた。魔術を使ったような形跡はない。理由は優勝したらわかると言っていた。一体何だというのか。サリーは考えが纏まらない。


 サリーは大きく息を吸い、ゆっくり吐いていった。先程の感覚を含め、わからないことが多いが、今やらなければならないのは大会で優勝することだ。身体が入れ替わってから思うようにいかないことは多い。あの感覚もそれに準ずることなのだろう。早く術者を見つけ出し、術を解いてしまえば問題ない。サリーは今一度気を引き締め直すのだった。


 大会が開始した。全参加者が闘技場の中央に集まり、戦って生き残るサバイバル形式。参加者は全部でざっと五十人くらいで、グループで分けると三十組くらいだろうか。結局仲間を見つけることができずに一人で戦う者も多いようだ。そもそもは優勝者を一人決める大会なのだから、それはそれで正しいとも言える。だが実際はグループとして戦う人達の方が有利であるのは変わらないだろう。


 サリーはメーテの位置を確認する。ある程度ばらけてスタートさせられたため、必ずしも味方が近くにいるとは限らない状況なのだ。メーテは位置的には対極のグループに交じっていた。魔導士タイプは接近戦が苦手である。早めに合流したいものだ。


 と、そうこうしているうちに一人が襲い掛かってくる。サリーは支給された盾を使い受け流し、同じく支給された剣で切り払う。斬り払うと言っても剣に殺傷能力はなく、ペイントが塗れるようになっている。


 このペイントが二箇所、付いた者は失格となる。ペイントはある程度智からを込めないと塗れない仕様だ。獲物は皆支給されたもので、短剣からハンマーまで好きなものを好きなだけ持てる。とは言っても実際はせいぜい二つか三つくらいしか持てない。それ以上持つと邪魔だし、重くなって上手く動けなくなるだろう。


 サリーは盾と剣を持っている。弓を持っても良かったが、大会までの期間でそこまで詰められなかった。基本的な動作と、剣術がそれなりにできるようになったくらいだ。やはり身体が違うと頭ではできることもそうそう簡単にできなかった。せいぜい元の身体の十分の一程度のパフォーマンスしかできないだろう。それほどに筋力も感覚も違ったのだ。


 一人を斬り払ったが、すぐに後ろから襲い掛かられる。上手く横にステップして避け、一撃を食らわせたかったが、そこまで身体がついてこなかった。そのまま集団から抜け出すことにして駆け出した。メーテの位置は。サリーは一通り見渡すが、メーテの姿を確認できないでいた。もうやられてしまったか、一瞬そんな不安が過ぎる。この形式だと魔術師は不利だ。物理的にしかペイントする手段がないため、近距離で獲物を交わすことになりやすく、近距離戦闘が苦手な魔導士は瞬殺される。現に自分がいたスタートグループの魔導士は既に失格となっている。


 とは言え、まだ始まって一分も経っていない。考え過ぎかもしれない。ともかく、安全地帯を探そうとする。こういうサバイバルは先に体力を使い果たした者の負けである。この身体の体力はそんなに多くない。前半はできるだけ戦闘を避けていきたい。


 と、なるべく戦闘地域から離れるように駆けていると、三人組がこちらに向かってくるのが見えた。カーリ達だ。宣言通りサリーを潰しに来たのだろう。おそらく戦闘地域から離れて一人になっていたため、簡単に見つかってしまったのだ。サリーは観念して迎え撃つことにする。できるだけ他から邪魔が入らない様に位置を調整する。三人は分け目も降らずに突っ込んできた。


 三人組の構成はカーリが片手斧、細めの手下が長剣、太めの手下がハンマーだった。細めのやつが一番素早く斬り込んで来る。サリーはそれを受け流して蹴りを入れる。すぐさまカーリが真正面から振りかかってきて、それを盾で受け止める。


 カーリの一撃は重く、耐えるので手一杯だった。そこへ太めのやつがハンマーを回してこちらに狙いを定めてくる。サリーはどうにかカーリを太めの男との間に流して、攻撃を阻止する。


 が、細めの手下がその頃には体勢を立て直して、背後から斬りかかろうとしてくる。サリーは盾を手放して横に飛び退き、側転からのバク転をして距離を取る。


 と、太めのやつのハンマーが飛んで来た。サリーはなんとか剣で受け止める。ハンマーの勢いを殺さずにそのまま後方に飛ばされてるように体重を預ける。距離を更に取って体勢を整えるためだ。


 やはり三人がかりでは少し分が悪い。どうにか数を減らさなければならない。或いは一対一の状況を作る必要がある。


 「ほう、コルットにしては随分と身軽に動き回るじゃねえか。まあ、苦しむのが長くなるだけだぜ。さっさと降参しな」


 カーリが余裕しゃくしゃくと笑う。他の二人も併せて笑っている。サリーは挑発には乗らずに目を閉じて冷静になる。三人の動きをイメージした。一人一人ならさほど苦戦するほどの力量ではない。攻撃を待つのは向こうのコンビネーションを許すのと同じだ。


 では、自分から前に出てその連携を崩すしかない。サリーは目を開けて改めて三人を見据える。既にこちらに動き出していた。サリーもまた躊躇せずに三人に突っ込む。


 やはりかかりは細めのやつだった。けさ、切り上げ、逆けさ、突きと連撃を繰り出してくる。サリーはそれらを全て受け止めずに躱していく。するとカーリも振り下ろしてくる。そこで初めて細目のやつの剣戟に剣を合わせる。細めのやつの突きがサリーの斬り上げで跳ね上がり、カーリに切っ先を向ける。カーリは振り下ろしていた斧を止め、バックステップで距離を取る。


 その間にサリーは素早く細めのやつの背後に回り細めのやつをカーリに突き飛ばした。細めのやつの獲物がそのままカーリに向かっていく形になり、細めのやつは当てることができないそれを制御するのと、身体の制御をするのでバランスを崩し大きく転んでしまう。カーリはいくらか激昂したのか、鋭く踏み込んでくる。


 と、太めのやつのハンマーが飛んできた。サリーはそれを遠心力を使って思い切りカーリの方へ弾き飛ばす。カーリは完全に怯み、体勢が崩れる。そこへサリーは素早く迫り、がら空きのボディに一撃を加え、悶えたところを細めのやつの方へ蹴飛ばした。細めのやつは体勢を立て直し立っていたが、その瞬間にカーリが倒れ込んできて、二人して転げてしまう。その拍子にカーリの獲物が細めのやつにぶつかる。ペイントはしっかりついたようだ。


 さて、サリーはそんな二人は無視して太めのやつの方へ接近する。太めのやつはもう一度ハンマーを回すためにハンマー部分を回収し、回し始めていた。サリーは構わず突っ込んでいく。当然、太めのやつはサリーにハンマーを投げつけた。サリーは寸でのところでなんとか躱し、剣で鎖部分を絡め取る。そして、ハンマーが伸び切ったところで思いっ切りハンマー部分の方へ鎖を引っ張り、太めのやつの体勢を崩す。


 太めのやつはサリーの方へ数歩よろけてしまう。サリーは剣に絡ませている鎖を素早く抜き、無防備な太めのやつに斬りかかる。太めにやつは防御手段がなく、そのまま二撃を貰うことになる。これで一人は片した。が、サリーはかなり身体を酷使したため、ここで一気に身体が軋む。やはりアマゾネスの時のようにはいかない。


 と、カーリ達が思ったよりも早くに復帰し、二人で交差しながら襲い掛かってくる。サリーは十分な休息が取れずにカーリの一撃に吹き飛ばされる。剣でガードしたため直撃は避けたものの、体勢が完全に崩れてしまった。次の一撃に対応できない。細めのやつが容赦なく迫ってくる。そして細めのやつが一撃を繰り出した瞬間急に細めのやつが横に吹き飛んだ。サリーは一撃を覚悟していたため、今起こったことが理解できなかった。それはカーリサイドも同じで、目を丸くしている。


「ふぅ、ぎりぎり間に合ったみたいね」


 どこからともなくそんな声がしたかと思うと、目の前に杖を持ったメーテが姿を現す。杖の先は細めのやつがいたところにあり、どうやらそれで突き飛ばしたようだ。魔術で人の目に触れないように隠れていたようだ。


「助けに来たわよ」

 メーテはカーリに対峙しながら少しだけサリーに顔を傾け、ウインクをしてくる。サリーは心臓が高鳴るのを感じた。だが今はそれどころではない。


「ありがとう、助かった」


 サリーはそう言いながら体勢を立て直す。形勢逆転だ。二対一である。カーリも状況を飲み込めたのか、警戒して近づいて来ない。サリーは迷わずに突っ込んだ。


 一対一では負ける気がしない。低い体勢のまま鋭く踏み込み鋭い突き上げをする。カーリはそれをぎりぎりで躱し、片手斧を軽く振り下ろす。サリーはバックステップで躱し、もう一度鋭い突きを繰り出す。


 カーリはそれを斧の平で受け止めるが、斧に罅が入ってしまう。カーリはバックステップで距離を取ろうとするが、サリーはそれを許さずに詰め寄る。そして素早く流れるような三撃を食らわす。カーリは二撃は斧で対応したが、二撃目で斧が割れしまう。そしてそのまま三撃目を直撃で貰うことになる。


「ぐふっ。くそ。コルットなんかに」


 カーリ達三人は失格となり、その場を離れていった。


「あらら、貴方やっぱり強いのね。助ける暇なかったわ。感が当たってよかった」


 メーテはそう言いながらまた姿を現す。どうやらまた不意打ちを食らわそうと隠れていたようだ。


「それにしても結構潔いのね、あの三人組。ルール通りに素直に退場しちゃうなんて。まあ、監視がいるから下手なことしても意味ないんだけど」


 メーテがぽつりとそんなことを言う。メーテの言っているのは、二撃を食らった後にがむしゃらになって襲い掛かって来なかったことを言っている。獲物を使ってペイントすれば失格後でもバレなければ相手を倒すことができるのだ。


 もっとも、言うように監視が、正しくは結界が張ってあり、不正をしてもバレてしまうのだが。メーテの言う通りあのカーリ達なら気にせずにそれくらいはやってきそうではあった。まあ、不正がバレると他の大会に出られなくなるため、やっても損するだけであり、それは理解しているのだろう。


 とにもかくにもとりあえずの勝利だ。少し気が抜ける。サリーはかなり身体に負荷のある動きをしたせいか身体中がひくついており、その場に座り込んでしまう。


「あら、お疲れのようね。頼れる騎士様がそんなんじゃ困るわね。ちょっと待ってって」


 メーテがそう言ってぶつぶつと呪文を唱えて身体を回復させてくれる。サリーは身体の

のひくつきがなくなっていき、楽になっていくのを感じた。


「どう、仲間が私でよかったでしょ」


 メーテはにっこりと自慢げに言った。


ご感想頂けたら幸いです。

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