fiction 2
「ーーこれらのようにこの代の総統の時代には数多の偉人たちがいた。ブレイズ=ブライドの逸話などは聞いた事がない者はいないだろうな。だが今日の授業では稀代の天才、アインハルツについてだ」
先日、エリスとの一悶着の後、クラス分けが行われた。やはり悪い勘というものは当たるものでエリスとは同じクラスになってしまった。
「今までの歴史で彼を超える天才はいないといっても過言ではない。その理由としてあげられるものがある。それはなんだ、エリス答えてみろ」
「はい、アインハルツの偉業で一番と言われているのは人類未到達領域問題の幾つかを解いてしまったからです。人類史上ラストテーゼを解いたものは彼以外誰一人としていません」
そして次の日には早速授業が始まり、今現在進行形で面倒臭い人類史の授業を受けている。一年目は必修科目が多く、今の授業もそれの一つだ。
「その通りだ。ちなみに内容はわかるか?」
「魔法師不介入時における魔素エネルギーの化学エネルギーへの変換実現です」
よりにもよって将来何の役にも立たない人類史の授業である。ならば必然的に襲ってくるものがある
「さすが学年主席入学だな。ついでに私の授業で眠っているバカを叩き起こしてくれないか?」
そう、それは睡魔である。それに勝つには強靭な精神力が必要とされる。
「アスト、早く起きなさい。このバカ」
「......わーってるよ、起きればいいんだろ」
「ではアスト、簡単な問題だ。他のラストテーゼを一つでもいってみろ。」
だが学年主席様の隣に座っているためーー決して寝ていたからではないーーとばっちりがきて短髪黒髪眼鏡の怖そうな目つきの女教師に目をつけられてしまった。
「そりゃあれですよ。鶏が先か卵が先かってやつですよね」
仕方がないため真面目に返答をするアスト。
(要するに絶対分からない問題って事だろ? そんなの簡単だろ。)
「ほう、貴様はどうやら私と学会の両方に喧嘩を売っているようだな」
どうやら面倒臭い事になったらしい。鶏と卵ではなく、カエルとオタマジャクシだったらしい、などと見当違いの事を考えているとエリスが勝手に喋りだした。
「アインハルツによって解かれたもう一つのラストテーゼが魔素の存在性で、他に解かれていないものとしては惑星での支配生物の人型への収束の謎や、神性の存在ーー」
どうやら両方違うらしい。ここはエリスに任せてもう一眠りしようと睡眠体勢に入っていくアストであった。
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「ーーでは皆さん、次の休みの日までには選択授業の仮決定用紙を出しておいてください」
非常に、非常に面倒臭い授業たちがようやく終わりやっと帰りのHRである。あの後短髪黒髪鬼畜眼鏡女教師にこってり絞られた後も面倒臭い授業の連続でもうすでにこの学校でやっていける自信をなくしたアスト。
「では気をつけて帰ってくださいね」
と、どうやらHRもおわったようだ。担任の教師は人類史の短髪黒髪鬼畜地獄眼鏡女教師とはまるで真逆の長髪桃髪天使女神女教師だ。不幸中の幸いとはこの事である。
帰りのHRが終わり、皆がぞろぞろと帰り支度をはじめている中、一人の男子生徒が声を掛けてきた。
「よう、アストでいいんだよな? 俺の名前はレスト=アーカインだ。これからよろしくな、有名人さんよ」
と、人当たりの良さそうな笑顔で声を掛けてきたのはレストという人物らしい。なんというがパッとしない顔である。それにしても自分の名前を知っている事、それに有名人ということに疑問をもつアスト。
「ああ、よろしくな、レスト。それにしても俺が有名人だって? 冗談はよしてくれよ」
「冗談な訳なねーだろ。今じゃ有名人といったら超絶美人の学年主席であるエリス様と、いつでも寝てると噂の問題児であり、かつエリス様の飼い犬と言われるアストだぜ? 有名にならない方がおかしいだろ」
(........はい? 今聞き捨てならない言葉が聞こえたような気が)
「おい、おれはいつから犬になったんだ?」
「だっていつもエリス様から躾を頂戴してるって話だぜ。実際授業中散々叩かれてたじゃねーか」
「取り敢えずおれは犬ではない」
学生の噂とは怖いもので直ぐに広まってしまう。さらに入学早々つけられた印象が今後ずっとつきまとう可能性を考慮するとまだそこまで時間が経っていないうちに芽をつむっておくべきだろう、などと真面目に今後の対応策を練っていたら突然レストが笑い出した。
「ん、どうした? ヤバいもんでも食っちまったか?」
「プッ、くははは。そんな真面目な顔するなって。エリス様の飼い犬って噂は今俺が作っただけだよ。ま、学年一の問題児ってんで有名人なのに変わりは無いけどな」
こいつは一回しめておくべきかもしれない、と本気で思う。
「そんな事よりアスト、選択授業はどうする気だ?」
と、うまく話を逸らしにきた。今からさっきの話を自分から蒸し返すのもおかしく、仕方がないためその話にのる。
「戦術学、戦闘学、魔法学だな」
選択授業については既に考えておいた為、直ぐに答えることができた。ちなみに戦術学は座学で他の二つは実戦形式である。ちなみに魔素学というものもあるが、それは魔法学と違って座学であり、魔法が如何なるものか学問的見解で勉強していく授業である。
「おいおい、なんだよその戦闘狂みたいな選択科目は。そんな選択にしてる奴なんてそうそうーー」
「あらアスト、何故私とまるっきり同じ授業を選択しているのかしら?教えてくれる、ワンちゃん?」
(よ、よりにもよってこいつと同じ授業を選択してしまうとは。だが俺ができそうな授業はこれのほかにないっ、ていうかワンちゃんだと? あいつさっきの会話聞こえていたな。.....まあ隣だからあまり前だけど。)
「なんで入学早々こんなに不幸が続くんだ」
(ラストテーゼだかなんだかで神の存在性だかなんだかいっていたが俺も一つ解いてしまったらしい。そう、神はいないという答えをな......)