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『これは記憶ーー』
「本当に弟子になるつもりか?」
そこにいるのは二人の男女
「俺は…母さんを、父さんを…フィーネを殺した奴らを殺さなきゃならない!」
美という概念を具現化した女性と
「実行犯だけを殺したって何にもならないぞ」
怒という概念を具現化した少年
「なら、上から根絶やしにするだけだ!」
「上に介入するにはそれ相応の地位が必要だ。…例えば、連合公国最強の座——卿とかな?」
「…なら…俺がなる…俺が最強になればいいんだろ!」
「ふふ…ふふふ…あーっはっはっは!最強になる! か。まるで子供の世迷言、いや、まだ子供だったな。…だが、本気だな?」
「っ! …ああ、本気だ。俺が、なってやる!」
「…いいだろう。お前には権利がある――最強になる権利がな」
「けんり?」
「そうだ。お前の魂は最強になる権利を持ってる。…いいだろう、弟子にしてやる。連合公国最強の座に座らせてやる」
「ほ、本当か!!」
「ああ、本当だ。但し、まともな人間の生活を送れるとは思うなよ」
「ああ、わかってる」
「アスト=ベルガルド」
「え?」
「これからお前の名前はアスト=ベルガルドだ。私の苗字を上げるんだ、感謝しろよ」
「…ああ、俺は、これから――アスト=ベルガルドだ」
『——これは記憶』
『一人の少年が死に、一人の少年が生まれた記憶』
「安心しろ。お前ほど人を殺す才能を持ってるやつはいない。…私以外には、な」