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fiction 18

「すまないね、アスト君。実力だけはあるんだけどね...まあ直ぐに慣れるよ」


(慣れるかよ!!)


 大いに口に出してつっこみたっかったが、一応上級生故我慢する。


「あの口論してるうちの銃をもっている方はパルメ=ワルワット、見ての通りのマギカ・ブラスター使いだ」


 紹介されたと思われるツインテールの女子生徒を見てみる。

 やはり一番目につくのは手にしている銃だろう。通常の銃器とは一線を画したデザインで、淡く紫色に光っている球体が銃身に埋め込まれており、どこか神聖さすら感じさせる。

 それにしても...


「ブラスター使いですか...珍しいですね」


 マギカ・ブラスターとは、魔素をエネルギー源とした銃器の総称である。同じ魔素をエネルギー源として使う魔法と比べて利点といえば、やはり誰でも使えるという点だ。ある程度の才能、ある程度の努力が必須な魔法に比べて、マギカ・ブラスターを使用するには魔素さえ保持していればいいのだ。しかも指を動かすだけで発動できるので、魔法と比べて時間短縮は非常に容易だ。


 だが実際軍で常日頃使用している者は殆どいない。というのも魔法と比べて大いなる欠点があるからだ。


 一つ目としては、応用性の少なさだ。

 これは言うまでもない事実だ。同じ魔素量でも銃弾として打ち込むだけのマギカ・ブラスターと比べれば魔法の応用性は圧倒的だろう。さらにマギカ・ブラスターの利点の一つであった発動の速さも、この応用性さえあれば魔法でも何とかなるのだ。


 二つ目として、利便性の低さである。

 魔素をエネルギーとして使用する為には魔素が存在していると考えられている魔素空間から、実空間へ移動させなければならない。勿論魔法もこの工程を経て術を行使しているわけだが、その魔法には出てこない概念として”魔素の保管”が出てくる。魔法は魔素を移動させた瞬間に消費するが、マギカ・ブラスターは発射までの時間、実空間での保管の必要性が出てくる。

 比較的新しい分野のため魔素の保管効率は芳しくない。そのため戦闘前に込めていた魔素がいつの間にかなくなっていた! ということになりかねないのだ。


 そのためある程度の魔素を保有している者は魔法を、銃器の取り扱いに長けている者は通常兵器を、という選択はいわば常識と化しているだ。


「大丈夫だ。彼女の実力は私が保障する。まあ私が保障しても何にもならんとは思うが」

「いえ、学園対抗戦の面子を束ねているエルミネスさんの言うことです。それにさっきの射撃、精度といいタイミングといい恐ろしいほど完璧でした」


 取り敢えず今回の単位は何としても取っておきたいがため、なるべく好印象で接しなければ! と下心ありありのアスト。だが射撃の感想に関しては紛れもない事実だあった。


「あら、それがわかるなんて中々デキるじゃない」


 すると、口論していたパルメが会話に入ってきた。もう一人の人物と口論している最中に聞いていたのだろう。


「そのカンペキな射撃を避けられたのはどこのどいつだっけ?」

「あ、あんたね~! ろくに攻撃も出来ないくせに!」

「攻撃できないじゃなく攻撃しないの。わかる? ブラスター馬鹿ちゃん? ぷークスクス」


 と思ったらまたもや口論をし始めた。

 ...仲がいいんだか悪いんだか


「は~全くお前たちは。ちなみにあっちのがミシュー=ルーベラスだ。感知系の固有能力故、直接戦闘にはあまり関わらない」


 マギカ・ブラスター先輩と口論している人物はなんと固有能力者らしい。

 直接戦闘には関わらないらしいが、感知が得意な奴がいるのといないのとでは遥かに勝率が違ってくる。それにしても4人(3人+1体?)とも女子生徒とは...


「で、最後だが...ほら、もう一個飴あげるから自己紹介してくれ。」


 最後に残った、人か機械かよくわからないモノの自己紹介を餌付けにより試みるエルミネス先輩。その作戦は功を奏したのか頷く例のモノ。


「.........ルミ=ミネス.........」

「...えーとエルミネス先輩、あれでお終いですか?」


 どうやら人であるらしいルミ=ミネスという人物は非常に小柄で、年上とはあまりにも思えない。

 さらにとんがり帽子とローブを羽織っており、制服が意味をなしていない様相だ。


「そうだ。まあいつものことだから許してやってくれ。アレでも魔術の天才として中々名が通っているんだ。あと私のことはルーシェと呼んでくれ。他のメンバーに関しても上級生だからと言って気にすることはない」


 口論をしている二人は、会話に入ってきていないことから拒否はしていないのだろう。

 ロボット人間に関しては渡された飴を食すのに忙しいらしい。まあ何も食べていなくとも無反応だろうが...


「それにエルミネスは他にもいるからな。確かアスト君の学年にもいたはずだ。知らないか?」

「いたような、いなかったような...家族なんですか?」


もし家族だった場合、覚えていないなどと言ったら機嫌を損ねてしまう可能性があったため、濁すアスト。


「家族ではない。親戚と言っていいのか...まあそんなことはどうでもいい。あとアスト君、私はそんな短気な人間ではないよ。」


...どうやら読まれていたらしい。末恐ろしい、と思うがすぐに考えるのをやめる。


「そんな怖がらないでくれ。さて、では漸く本題に移りたいが...学園別対抗戦についてどれだけ知ってる?」

「はい、全く知りません」


 変にごまかしても見破られそうだったので正直に答える。


「ま、エルツィン先生の推薦だ。何も説明していないのは予測済みだから心配する必要性は無い」


 だがそれが功を奏したようだ。しかしエルツィン先生には随分振り回されているのがわかる。


「ではとにかく学園別対抗戦について基本的なことから説明するぞ」


 面倒くさいと思ったが、学業では到底単位をとれそうに無い故、なんとかここで単位を取らなければならない。そのため逃げ出すわけにはいかないのだ。(ちなみに担任の話は何も聞いてなかったため、貴族御用達の授業があることをアストはまだ知らない...)


因みにツインテールのパルメ先輩とミシュー先輩の口論はまだ続いている...


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