fiction 10
担任の先生に呼び出されていたアスト。だが移動中にふと疑問が浮かび上がる。
「そういえば呼び出された場所って、戦闘学の授業の場所のような…」
だんだんと足が重くなってくる。だが呼び出しされて行かなかったらさらに酷いことになりそうで仕方がなく覚悟を決め、戦場に行くような気持ちで指定された場所まで突き進む。
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「げっ! まじかよ」
着いてみるとやはりそこには担任の姿は見えず、予想していたレグルス先生がいるかと思ったらさらに悪いことになっていた。
「え~と、なんで人類史の先生が?」
悪い予感は当たるといった気がするが、予感よりさらに悪いケースに限り、当たらない場合があるらしい。よりにもよって黒髪短髪鬼畜地獄魔人眼鏡女鬼教師の出現だ。
「ほう、私の名前をまだ覚えていないようだな、問題児君? それもそうだな、私が自己紹介をしている時唯一寝ていたのは君だからな」
どうやら入学早々眠りについていたのはアストただ一人だけらしい。
「エルツィンだ。死んでも忘れるなよ」
エルツィン…最近何処かで聞いたような、と思い出していると、剣がいきなり飛んできたため取り敢えずその剣を取る。
「私も貴様に時間を割くのは御免被りたいのだがな、レグルス先生がどうしてもというので仕方がなく付き合ってやるんだ。感謝しろ」
と、またもや何処からか手にした剣をもち、いきなり襲ってきた。先程の試合で戦った槍使い――名前はもう忘れた――の攻撃とは次元が違う速さだ。そのため仕方がなく受け流し、後ろに下がる。
「うわ! あっぶねー! いきなりなんだよ!」
「ふん、レグルス先生が言っていたことは確かだったか…おい、貴様、その技は何処で覚えた?」
「…その技って何のことですか?」
取り敢えず目的もわからないため、師匠直伝必殺技<すっとぼけ>を発動する。
「ふん、ごまかさなくていい。その技…いや、その動き…左卿流剣術の中でも四凶派と呼ばれる中の一つ、窮奇派のものだろ?」
その言葉を聞き、瞬時に臨時態勢へと切り替える。
「まあアレンジを加えてバレないようにはしていたようだが先程の攻撃を流した際はアレンジも出来ず、奥義<流技>をそのままつかってしまったようだしな」
先程の行動を思い出し、自責の念に駆られる。
元老院との絡みはバレていないとは思うが、仮にエルツィンが親衛隊の犬であれば目をつけらるのは不可避だろう。
「そう身構えるな、何を企んでんだか知らないが私には関係ない。取り敢えず確認したかったのはその実力だ」
だがそこで意外な発言をする。
「実力?」
「今度の学園別対抗戦の面子が何人か足りなくてな、お前、出ろ」
……どうやら心配していたことでは無いらしい。
「ああ、因みに拒否権はない。それと負けたら…な?」
色々な爆弾発言を置くだけ置いてさっさと行ってしまった…
「そういえば…レグルス先生が言ってた元序列入りの軍人上がりの人の名前もエルツィンだったような…」
ようやく思い出したアスト。
右卿軍と左卿軍の兵士を合わせて国軍兵士と呼ぶが、その国軍全体で、階級とは違う序列がある、戦闘力、固有能力等を踏まえたもので、全体の中で上位一万人だけが序列に入れる。なので上位一万人に入れば序列入りを名乗っても間違いではない。だが世間一般では序列入りとは上位百人を指す言葉なのである。そのためエルツィン先生は最低でも九十九位以上ということになる(レグルス先生も序列入りで、エルツィン先生はそれより上の順位だったらしいから)。その事実をようやく認識し、今になって恐怖を覚える。
「いや、序列入りなんかにビビってたらダメだ…俺が目指さなければならないのはそんな所じゃない…」
取り敢えず人類史の授業だけは寝ないよう心に決めるアストであった。




