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fiction 7

 大分新入生たちも学園に慣れてきた時期、生徒の中にも既に派閥が出来ていた。だがこれはこの学年特有の話ではない。というのもこの学園に入学する生徒にはいくつかの種類がいる。


 まず一番多いと思われるのがレストと同じ様な学歴目当てである。学校なんかじゃ将来は変わらないと思っている人もいるが、この学園には当てはまらない。たいして身の入っていない学生生活を送っていたとしても卒業したという事実さえあれば、ある程度の将来は確約されているのだ。それほど、この学園のブランド力というものは凄まじい。ま、とはいえ人生そんな簡単には出来ておらず、かなりの才能が無ければこの学園に入ることすら出来ないのだ。しかも才能のある奴が連合国家中から押し寄せてくる。

身の入っていない学生生活を送るとはいっても入学できた時点で相当の才能がある事の証明と言えるのだ。そのことを知り、レストは意外と頭が良かったのかと見直した、失礼なアストであった。


 さて、先ほど才能があるものしか入れないといったが正確に言うとそれは嘘である。いや、完璧に嘘という訳でもない。というのは普通に入ろうとすれば学力は必須になってくる。普通(・・)に、だ。

もちろん抜け道が用意してあり、所謂特別枠というものだ。といってもただ本人が特別枠で入りたいといっても入れる訳ではない。親が院上層部や軍上層部、そして貴族といった錚々たる面子に限るのだ。

因みに院上層部といっても右院、左院だけで元老院は滅多にない。何故なら元老院という組織は完璧実力主義の組織なのである。

 そのため、子供を継がせようと思って特別枠で入学させても、後々元老院に入る時にもちろん失格となるし、特別枠でしか入学できないようなものは元老院に入ることはできないだろう。

 そもそも元老院というのは入るための条件が知られていない、謎の組織でもあるのだ。

 そのため一般の家庭に生まれた人で入れるのは、基本的に右院、左院、右卿、左卿の四つしかない。しかしそこである程度の年数を働き、ある程度の功績を遺したりすると時々元老院になれる人が現れるらしい。

 貴族院は完全に世襲制であり、一番門閥を重視する。そのため一般人が一般人のまま・・・・・・貴族院に入ることはまず不可能である。まあ抜け道は存在するが…

あとは親衛隊も存在するが、一番謎なのがこの組織である。仕事内容から隊員の素性まですべてが謎なのである。


 とまあ話がそれたが、とにかく特別枠で、とくに貴族のご令嬢ご子息たちが入学してくる。

彼らの目的はもちろん勉学を励むためではない、繋がりをつくるためである。まあ他にはコミュニケーション能力を高めるためという目的もあるが、一番の目的といえば貴族間でのコネクション作りが欠かせないものとなっている。そして将来貴族とコネクションを持ちたい院志望のものや、軍志望のものたちも集い、ある程度の派閥を作り上げることになる。


 ちなみに特別枠で入ったものと、一般枠で入ったものとの学力の差は昭然たるものがある。では進級はできるのかと思うかもしれないがそこはうまく作られており、特別枠の生徒は必修科目の単位数の三分の二の量で通過できるのだ。つまり一学年の時は午前中クラスにいさえすればいいのだ。ちなみに学力考査はパスできる。これだけでも相当の恩恵だが、貴族様はいろいろと参加しなければいけない行事なども多く、毎日来れるわけではない。まあ三分の二の日数来ればいいだけなのだが、万が一でも留年しようものなら一生そのレッテルが貼られることになる。

 一般人には大したことではないかもしれないが貴族の界隈では大変な汚点となる。そのための保険がとある選択科目たちだ。大抵の学科には語尾に"学"がついているが、それがないものがある。それらが暗黙の了解で貴族の保険となっている授業である。それらの授業はとにかく自由なのだ。たとえば音楽は別に楽器を演奏してもいいが、演奏の鑑賞も音楽の内にあるとして、実質音楽をただ聴いているだけの授業となる。もちろんテストなどもない。既にわかる人もいるかと思うが、芸術も同じような理由からただの鑑賞会となっている。そして参加の是非も自由なため、それらの授業を適当に受けていればその分のマージンが取れるという寸法である。


 こんな楽な授業?なのだが別に特別枠の生徒限定というわけでもない。だが実際に一般生でこれらの授業を選択するものは少ない。なぜかというと、それは生徒たちの向上心の高さにある。

この宇宙を二分する巨大勢力の一つから天才が集まるのである。ではどこで差がうまれるかというと、それは偏に向上心の高さの差と言えるだろう。先ほど身の入っていない生徒でもなんちゃらとはいったが、実際そんな生徒は少ない。


 そのためレストという、芸術と音楽をとっている一般生はかなり珍しい種類なのだ。

では選択科目の時なにをしているかというと…


「ようアスト、聞いてくれよ。昨日の授業で可愛い子を見つけてさあ。その子、とっても上品で奥ゆかしいんだよなあ」


 ふざけた野郎である。どうやら貴族のご令嬢を狙っているらしい。


「お前なあ、何しに学校きてんだよ」

「そりゃあ彼女を見つけに決まってんだろ。だいたい学園一の問題児には言われたくねえぞ」

「どっちもどっちよ。かたや来ても寝てるだけ、かたや彼女をつくりにですって? はあ、一応この学園は名門校のはずだけど?」

「まあまあそういわずに。要するにレスト君は将来のお嫁さんを探しに来てるんだよね。将来のことを考えて行動するなんて偉いよ。それにアスト君は……ええと……ほら! 休息だよ! 生き物はみな生きていればエネルギーを消費するんだから。たとえばこの星の固有種の眠り猫だって食べ物を食べたら二、三日は起きないよね、それと同じだよ!」


 因みに眠り猫とはこの星では怠け者の代名詞的存在である。まったくもってフォローになってない。


「あ、ああ。ありがとな…」

「ぷっ、眠り猫、よかったじゃねえかアスト。お前の居眠りも正当化されたな」

「全くされてないわよ。あとレストもよ」

「ちぇ、だがよアスト。お前だって女の子に興味あんだろ?」

「ま、興味がないっていったら嘘になるな。だが彼女を作る気はねえよ」


 その時答えたアストに恥じらいはなかった。それも当たり前である。

恥ずかしくてこんなことをいった訳では無い。

 その気持ちは幼少期のとある時期から決めていたことであった。

 その理由は…


「お前、まさか両方イケるくちだったのか。別に恥じるこたあねえぜ。この広い宇宙だ。探せばいくらでもいるさ」

「…おい……」

「お、応援してます。」

「……おい………」

「星によるけど法律上問題はないわよ。この星じゃないけど人間でも、亜種でもない完璧に違う生き物どうしでも結婚できるところもあるらしいしね」

「…だから…ちげえわ!!! 勘違いして話をひろげるな! へんに噂になったらどうするんだ!」

「え、違うのか? なんか普段はみせない真面目な顔してそんなこと言うもんだから。てっきりそうだとおもったぜ」


(顔に出てたか…まだまだだな…)


「ええ、あんな真面目な顔初めてみたわ」

「…ふう、よかったあ」


 全くひどい奴らである。リタに関しては本当に安心している。


「あら、もう移動の時間ね」

「そうだな、アストが彼女を作らない理由はまた今度にするか」

「勘弁してくれ」


 そしてそれぞれの授業場所に移動することになった。

 因みにアストがオールマイティーという噂がきちんと学年中に広まったことがわかるのはそう遠くない未来であった。

もしこの話で不愉快に思った方がいたら申し訳ございません。

ある程度同性愛については広まっている(現在の日本ぐらい)という設定ですが、生活していた星や環境によりその価値観は変わると思われるので、そのことについてどう思っているか、登場人物によって分けていることにしています。

ネタばれになるので詳しいことは言えませんが、リタの反応は、彼女が暮らしていた環境により、すこし否定的になっています。

そのことについては設定上仕方がないので申し訳ございません。

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