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お仲間募集2

「二人共、二度とこんなマネをしないでくださいね!! 他の方の迷惑です!!」


 掲示板を使って派手に仲間の募集活動をしようとした俺とギンだったが……

 ギルド受付嬢のエルザに見つかり現在叱られ中。


 ギルドの中で大人しく正座をする俺とギン、当然注目を浴びる。

 周囲の視線が中々に痛いぜ。



「今回の事は深く反省しているぜ、色々と考えさせられた」


「善処させていただく所存だ」



「……私はやめてくださいと言っているんです、そういう逃げ道のある回答ではなく、ちゃんとイエスかノーかで答えてください」


 彼女にとって俺達の回答は満足できるものではなかったらしい。

 ここでふざけてノーとか言ったら余計に時間がかかりそうなので、素直にいこう。


「……」

 

 受付嬢の目が開いている、それはもう俺たちを鋭く睨みつけている。

 ギロリ……そんな音が聞こえた気がした。


 こいつはやべえ……


「「イ……イエス、ご迷惑をおかけしました」」


 謝る俺とギン。


「言質はとりましたからね、二度とこんなことはしないように……」


 エルザはそう言って、仕事に戻って行った。

 去り際、「朝は……だったのに、なんでこんな状況になってるのかしら……」とかブツブツ言っていた。


 再び活動を開始する俺達。


「結局、地道にやるしかないってことか、明日もギンに頼むことになりそうだな」


「まぁ今日中に仲間を見つけるのは無理そうだしな。しょうがねえな」









 結局午後の時間は、掲示板に貼る作業と受付嬢のお叱りの時間でほとんど過ぎてしまった。


「とまぁ、そんな事があったわけだ」


「「……」」


 夜、城に戻った俺はリーゼ達と夕食を食べている。


 現在、お仲間募集中であることをリーゼとクライフに話す。

 二人は黙って聞いてくれていた。

 

「俺が街のギルドマスターに一筆書こうか? ギルドの運営には直接関わっていないが、それぐらいならかまわないぞ、魔王である俺の声なら無視できないだろうしな」


 まぁ朝はそれも考えたんだが……

 魅力的な提案ではある。


「一時的ではあるけど協力者もできたしな、多分どうにかなるだろ……、今の方法で駄目だった時は頼らせてもらうよ」


 確かに、色んな依頼が受けられれば便利ではあるが……

 既に保険(ギン)があるしな、本人の気持ちは知らんけど。

 現段階でわざわざ魔王様の力を借りることもないだろう。


 もちろん、別の街に行くとなったら話は変わってくるんだろうけど。

 その時にまた考えればいいだろう。



 決してギンと離れたくない……わけではないはず。



「でも……協力者ができてよかったじゃないの」


 ほんの少し安堵の表情を浮かべるリーゼ。

 少しは心配してくれていたのかもしれない。


「ああ、今度紹介するかもしれん、サハギンのギンって奴だ」


「サハギン……また珍しいわね」


「サハギンって珍しいのか?」


「種族の数はそれなりに存在するわよ、陸で会うのが珍しいって意味ね。水陸どちらでも生きられるから、陸で会っても不思議ではないんだけど……、基本的には一族自慢の三叉の矛(トライデント)を普段から片手に持って、海で漁をして暮らす種族だったはずよ」


三叉の矛(トライデント)?」


 ギンの奴、三叉の矛(トライデント)なんて持ったなかったけどな。

 まぁ、今日は俺が無理矢理依頼に参加させたようなモノだからな。

 家に置いてきたのかもしれない。


「で、そのサハギンはどんなやつなの?」


「そうだな、情報に精通していてな、他人の個人情報を盗み取るのが趣味な奴だ」


「……一緒にいて大丈夫なの? そのサハギン?」


 先ほどと一転、リーゼが心配そうな表情を浮かべる。

 まぁ、彼女(リーゼ)の言う事もわかるんだけど。


「大丈夫だろ、仮に騙されたとして、俺がどうにかなると思うか?」


「まったく思わないけどね」


 まぁ話をした限りは多分、それほど悪い奴ではないだろう。

 だからって良い奴でもないが……、やや悪寄りかもしれん。

 

 でも、今日会ったライオルとかいうエルフよりはずっとマシだ。

 

 もちろん、ギンの悪癖についてはアレだけどさ。


 情報の漏えいについては気をつけなきゃ駄目だと思うが……

 まぁ俺の事情を言っても信じない可能性は高いけどな。



「クラーケンの件はすまんな、自由に依頼を受けさせてやれなくて。もう向こう側(ベリア)には使者が着いているはずなんだが……」


「別にかまわねえよ、今回は縁が無かったとしても、この先受ける機会はいくらでもあるだろ」


 クラーケンの件について話すと、クライフに謝られた。

 「気にするな」と声をかけておく。


 人生は長いのだ、焦る必要はないさ。

 






 翌日、俺は昨日同様に、朝早く起きてギルドに向かう。


 ギルドの掲示板には仲間募集中と書かれた俺の紙が貼ってある。

 昨日お叱りを受けたので、ライオルの紙から少しだけずらした位置だ。


 紙には何も書かれていないので、まだ俺に興味を持ってくれた人はいないみたいだ。


 ちっとだけ期待していたが、まぁしょうがない。


 さて……ギンは、と。

 もうギルドに来ているんだろうか?

 まさか、バックれるという事はないだろうが……


「うす、兄ちゃん」


 少し遅れてギンがギルドにやってきた。

 どうやら余計な心配だったようだ。


「お、ちゃんと来ていたか……もしかしたら来ないんじゃないかと思っていたが」


「家の場所も兄ちゃんには割れているしな、昨日一日だけってのは口約束だったとはいえ、堂々と破棄するとは思わなかったが……」


「……」


 ギンの言いたいこともわかるが……

 その辺は自業自得だと思って諦めて欲しいものだ。

 


(ん?)


 俺はギンの姿を見て、ある事に気づく


「ん、どうしたよ兄ちゃん? こっちをジッと見て、見てて楽しいもんじゃねえだろ俺の体なんて」


 そんなモンに興味なんてあるかよ。


「お前、何でそんな格好をしてるんだ?」


「そりゃあ、今日は初めから兄ちゃんと依頼を受けるって決めてたからな」


「それは助かるんだが」


 サハギンの愛用武器は三叉の矛(トライデント)だって聞いてたのに。

 眼前には腰に短剣をつけ、背中に長弓を装備したギンの姿……


「……俺がどんな武器を装備しようが、自由だろ」


「……」

 

 気のせいか、少し不機嫌そうな表情を浮かべるギン。

 聞いて欲しくなさそうな感じだ。

 何か事情があるのかもしれんな。


 昨日、人から情報を盗みだそうとしておいて、それはないだろうと思わないでもないが……


「まぁいい、考え方は人それぞれだしな」


「そういうことだ」


 トライデントを装備しなくとも、現状で問題があるわけでもない。

 気にする程の事でもない。



「ほれ、とっとと依頼を受けに行こうぜ」



 これから依頼を受けるっていうのに、わざわざ空気を悪くすることもないだろう。


 さて、今日も一日、頑張るとしましょうか。


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