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ルミナリア2

 クラーケンの討伐依頼はギルドの準備が何時終わるのか未定。

 なので、後に回すことにした。


 クラーケンを一度生で見てみたかったんだけどな。


 依頼は日程が決まってからでも受けられるって話だ。

 その時にリーゼかクライフに確認をとればいい。

 もし都合が付けばその時にもう一度考えよう。


 そんなわけで、今日は砂浜でサンドシェルの討伐(貝拾い)に勤しむことにする。


 せっかく意気込んでギルドに来たのに、何も仕事を受けないのもな。

 クラーケン討伐との落差が激しいが気にしたら負けだ。





「ルミナリアさん、今日は暇かな? 良ければこの後僕と……」


「あっ、ずりぃぞお前、抜け駆けすんなよ、てわけで俺と」



「すみません、今日は先約があるんです」


 ギルド内では、人に囲まれるルミナリアの姿が確認できる。

彼女(ルミナリア)はギルドで人気者のようだ。


 ギルド期待の新人という話だったからな。

 水龍だから戦闘能力も高いし、あの人を惹きつける容姿もある。

 なかなか皆に愛されているようだ。

 

 やはり男の方が比較的数が多いな。

 あわよくばお近づきになりたいと考えているのだろう。


 申し訳なさそうに丁寧に誘いを断るルミナリア。

 人気があるのもそれはそれで大変そうだ。




「兄ちゃん」


 でも今は、彼女(ルミナリア)のことが少しだけ羨ましい……

 断っておくが、彼女の人気に嫉妬しているわけではない。


「なぁ、ガーゴイルの兄ちゃんよぉ」


 俺の方にはもっと碌でもないやつしか来ないからだ。

 何で俺が兄ちゃん呼ばわりされてんだろ?


「うるせえな、さっきの今でよく話しかけられるなお前、どういう神経してんだよ」


 俺を騙そうとした、ギンと呼ばれた詐欺サハギン。

 こいつが先ほどからしつこく話しかけてくる。 


 後で一言文句を言ってやろうと思っていたが。

 まさか、相手側から積極的にアプローチしてくるとは思わなかったよ。


「だから悪かったって、機嫌直してくれよ。ほれ、ポーションやるから」


「いらん」


「いいから持ってけって、あって損するもんじゃねえだろ」


 ポーション瓶を無理矢理手に握らせようとするサハギン。


「必要ねえって、ポーションなんて」


 この詐欺サハギンが……

 なんでこんなに強気なんだコイツ。



「それは危機意識が足り無さすぎるんじゃねえのか?」


 しかも、逆ギレしやがって。


 あまりにもしつこいので、ポーションを受け取ることにする。




「そんなんだから俺に騙されそうになるんだっつぇっ!!」


 調子に乗り過ぎだ、この野郎。

 反省の色が全く見えないので、サハギンの鱗を一枚むしってやった。

 






「兄ちゃんはあの水龍の女の子が気になるのかい?」


「別に気になるって程じゃねえよ」

 

 先ほど、俺がルミナリアに視線を送っていたのに気づいたサハギン。

 俺が彼女に興味があると思われたみたいだ。


「水龍ルミナリア、メナルドの街に来たのは三カ月前。受けた依頼はシーサーペントやデスオクトパスの討伐等、難易度の高い依頼も多い。ギルドに登録してから最近まで、その仕事振りには目を見張るものがある」


 聞いてもないのに喋りだすサハギン。


「そんなにペラペラと他人の情報を喋ってもいいのかよ」


「これくらいなら、街の人間に少し聞き込みすればわかる」


 まぁそうかもしれねえけどよ。


「本人が嫌がる情報は他人には話さねえよ」


 つまり、本人が嫌がる情報を知ってるんだな。 


「兄ちゃんがつい見てしまうのもわかるぜ、可愛いもんなぁ。評判いいんだぜ彼女、性格も良いみたいだしよ」


「…………」


「しいて言うなら、人化状態だと鱗がねえのが欠点なんだけど」


 それ一部の奴以外には長所だ。



「性格良いって本当に?」


「ああ、道に迷っている人を案内したり、砂浜で子供達と遊んであげたり、同じギルドの仲間の悩み事を聞いたりと……」


「…………」



 もしかして、本当に良い奴だったのだろうか。

 思いっきり拒否してしまったけどよ。


 詐欺師の言うことだから、嘘かもしれんが。

 だが、冷静になってみると、あの対応はいくらなんでも酷い気がしてきた。

 俺にも反省すべき点はあるのかもしれない。



「さっき握手を求めてきた手を叩いちまったよ」


「兄ちゃん……何してんだよ」


 半分以上はてめえのせいで疑心暗鬼になっていたのが理由だがな。


「でも、案外彼女なら一言謝れば許してくれるんじゃねえか」


「う~む、でもなんか格好悪くねえか?」


「おいおい、そんなの今更だろうよ」


 事実だけど、やっぱりコイツむかつくな。



「まぁ兄ちゃんの好きにすればいいさ、今回の詫びってわけじゃねえけど、何か聞きたい情報があれば聞いてくれ。何でもってわけにはいかないがな」


「…………」


「じゃあな」


 そう言い残し、俺の元から離れとするサハギン。

 何勝手にどっか行こうとしてるんだお前。



「逃がさん」


 俺はサハギンの首根っこを掴まえる。

 

 のこのこと現れたのが運の尽きだ。

 もう少し反省してもらおう。


「な……何をしやがる。は、外れねえ……何だこの力は」


 俺の手を外そうと、ジタバタ暴れるサハギン。

 俺から逃げられると思うなよ。


「今日の仕事を手伝ってもらうぞ。俺を騙そうとしたのは水に流してやるから、それぐらい付き合え」


「何で俺が! ギルドの中での暴力行為は禁止されてるんだぞ馬鹿が。エルザぁ! 聞こえてんだろ! こっちを見ろぉ!」


 叫び出すサハギン。

 そう言えば、罰金を払うって話だったな。


「こっちを見ろぉ! おいエルザ! 聞いてんのか貧乳エルフ!」


 俺を受付してくれたエルザがビクッとするが、それだけ。

 職員達は見ないフリをしてくれるようだ。

 そういえば、コイツ(サハギン)の鱗を剥いだ時も、何も注意されなかったしな。


「俺がどうなってもいいのかよ! 哀れなサハギンが目に入らねえのか!」


 多分どうなってもいいんだろうなぁ……

 サハギンが吠えるも、周りは無視を決め込んでいる。


「選べ、砂浜で貝拾いか、貴様の鱗を剥ぐかをな」


「か、貝拾いでお願いします」


 ようやく諦めたサハギン。

 日ごろの行いが悪いからこうなるんだ。



 まぁこんな奴でもいないよりはマシだろう。



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