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メナルド観光2

 一時間の海の旅を終えて、俺達は観覧船を降りる。


「一時間と短い時間だが、実にいい旅だった、心が洗われたぜ」

「誰かさんのせいで私はそうでもないけどね、一日一回はこういうことが起きるとあきらめてるけど」


 リーゼにとってはそうだろうな。

 後、今日二回目だけどな。

 

 まぁ俺にとっては何事もなく、平和な時間を過ごす事ができた。

 だから問題はない。

 

「あ、そうだ。船から見てる途中で気になった事があったんだ、聞いていいか?」

「ん、何?」

「あの北側の灯台の先に見えた、途中海面に浮いてた棒みたいのは何だ?」


 一拍おいて、リーゼが答える。


「あの先に行くと強い海の魔物が寄ってくる可能性が高いの。あれはちょっとした目印よ、あれ以上近づいて船が魔物に襲われないようにね、」


「成程、そういうことか」


 







 まだ昼には少し早いが、露店が出ている海市場へと向かう。

 何か珍しいアイテムがあるかもしれないしな、少し見て回る。


「本当綺麗な街だよな」


「衛生管理キッチリしてるのよ、この街は水資源が豊富だからね。海に繋がる小河も流れてる。ここからじゃ見えないけど、北側には浄化魔法の込められた設備もある。街の汚染水はそこに流れていくようになっているの、そして綺麗になった水を海へと流す」


 俺の呟きにリーゼが答えてくれる。

 よく考えられているものだ。


 そんな街だから大勢の人たちが集まるのだろう。


 ファラの街もそうだったけど、ここメナルドも魚人にエルフにドワーフに、色んな種族が少し見回しただけで確認できる。


 所々からにぎやかな声が聞こえてくる。

 その声は笑い声、客引きの声等、活気に溢れた声が割合多い。


 昼だからというのもあるが、治安も良さそうだ。

 子供達も元気に遊んでいる。


「おまえ、食べ過ぎだぞ!」

「そんなことない!」

「次お前の番なしだからな!」


「もう! 仲良くしようよ~」


 まだ幼い四人の子供が皆でお金を出し合い、露店で買ったと思われる果実を、皆で回し食いしている。

 喧嘩っ早そうなドワーフの男の子三人を、エルフの女の子が宥めて、間をとりもっていた。


 元気がよくて何よりだ。



「なんか……」


「ん? どうしたんだ?」


「いいわよね……ああいうのって……」



「ああ……わかるよお前の気持ち」



 リーゼが四人の子供の様子をジッと優しい瞳で見つめていた。 



「三人とも喧嘩はだめ~、私の分、少しだけあげるから」


 エルフの女の子の提案で、男の子達の争いが止まる。

 子供ながらに女の子に気を使わせてしまったと反省しているのかもしれない。

 


 あの光景を見たら、リーゼのいいと感じる気持ちもわからなくもない。






「今から男を三人キープとは大したもんだ」



 女であるリーゼが羨ましいと思うのも無理はない。


 やりやがる、あのエルフの女の子は……


 早い内にストックを用意しておくその手腕。

 

 若くても女ってことだな。

 将来の事をよく考えている。


 


「ちがう……あんたは船で心が洗われたはずなのに、どうしてその発言がでてくるの?」


 俺の発言に、横では何故かリーゼが頭を抱えていた。





 気を取り直して、海沿いの露店を見て回る。

 商人達の客引きの声が聞こえる。


 食料品、港でとれた鮮魚、ポーション等の薬、衣料品、装飾品、マジックアイテムまで様々な店が並んでいる。

 海の向こうから入ってくるものもあるのだろう。

 

「魔石とか買わなくてもいいの? ここなら大体の属性の魔石が揃うわよ、光魔石や火魔石なんかは旅の必需品だし、魔法が使えないなら重宝するわよ」


「まぁな、でも今じゃなくてもいいかな。予定が決まってからで、俺マジックバッグ持ってないしさ、荷物がかさばるし」


「まぁ、そうね」


 なかなかの品揃えだが、

 さすがにマジックバッグは売っていないか……


 他にも魔力で強化された魔剣だとか、珍しいアイテムが並んでいた。


 つっても俺の場合、基本的に装備なんて必要ない。

 徒歩メインになったから靴が必要だったが、兜とか鎧は別になくても問題はない。


 俺レベルになると、防御力は身体強化魔法で向上させた方が格段に効率いいからな。

 兜や鎧等があっても、移動の邪魔になってしまう。


 武器も俺の力に耐えられる武器がない。


 殴った方が有効だ。


 オリハルコン製とか余程強力なアイテムならわからんけど。



 まぁ俺のことはいいや。

 


「お前はアクセサリとか買わないのか? 女の子だし、ああいう首飾りみたいなのとか興味ないのか?」


 俺はリーゼに尋ねる。


「特に必要ないわね、興味もないかな、城に行けば沢山あるしね」


 まぁそうだろうな。


 案外城でお姫様なんてやってると慣れてしまい、興味なんてなくなるのかもしれない。


「何か買ってくれるの? くれるなら貰うけど」


「いや、聞いてみただけだな、期待させてしまったなら悪いな」


「期待してないから大丈夫よ、私も聞いてみただけ」


 言うようになったじゃないか、この女。

 

 事実だけどな。

 でもまぁ気が向いたら記念にそういうのを贈るのもいいのかもしれない。


 ここで甘いイベントが起こらないのも俺たちらしいような気がする。





 適当に見て回っていたらお昼になったので、リーゼと屋台で買って食べ歩く。


 リーゼお勧めのムオール貝を屋台で買って食べる。

 以前旅でリーゼが提供してくれたフラッシュバスの焼き魚も売っていた。

 

「ムオール貝本当にうまかったな、身がプリプリしてて、噛むと中からうま味の汁が出て」


「でしょう、ここに来たら食べなきゃ損よ、気に入ってもらえてよかったわ」


「マジックバッグがあればいつでもどこでも食べられるんじゃないのか?」


「わかってないわね、潮風を感じ、海を見ながら食べるのがいいんじゃないの、その方が数倍おいしいわ」


「ほう、語るじゃないか」


 確かにその通りかもな。

 風情みたいなのは大事かもしれんな。


 

 中にはとってきた魚を客の目の前で解体して、生魚を提供する豪快な店もあった

 

「魚って生でも食べるんだな」


「まぁね、加熱とかしないて食べると、魚の中には寄生虫がいる場合があるから、食べるときは注意が必要だけどね」


「へぇ」


「まぁあんたには関係ないんだろうけど、寄生虫見たら「あたりだラッキー、おかずが一品増えた」とか言って食べそう」


「い、いくらなんでもそこまで酷くはないぞ」


 プレゼントに寄生虫贈ってやろうかこの女。


 多分そこまでは酷くないはずだ。


 最初のワイバーンを、毒抜きしないで生でかじりつこうとしたけど、それはお腹が空いていたのが原因だしよ。 




 その後もリーゼと一緒にメナルド観光を楽しんでいく。


 一応せっかくなので、クライフ自慢の資料館にも足を運んでみたり。

 あの頃のメナルドとか模型を見ても、どう反応すればいいのかわからんかったけど。


 二日目には船釣りを楽しんだりした。

 結果はあまり芳しくなかったが、海街でしかできない充実した時間を過ごさせて貰った。





 そして二日目の夜、少し早いがクライフに執務室に呼び出された。

 

 恐らく考えがまとまったのであろう。




 さて、どうなることやら……

 


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