オークション3
本日三話目~~
結局ライトニングソードは千二百万ゴールドという超高額で落札された。
俺が一日頑張っても十万ゴールドも稼げないのに、あいつはちょっと鱗を売り払っただけで大金を稼げるのか。
納得……いかない。
これは……あれだな。
金欠になったら奴の鱗をもらおう……
俺はある意味で凄い奴と友達になったのかもしれないな。
凄い利用価値が……いや、なんでもない。
友人をそういう目で見るのはいけないことだ。
「ね、興味深いだろう?」
興味深いというか、黒歴史というか、苦笑するしかないわ。
「レイはラザファムと会ったことはあるんだもんな」
「あるよ、クライフの付き添いでだけどね。マリーゼルの話を聞いてびっくりしたよ」
ハイエルフで魔王クライフの筆頭部下のレイだ。
ラザファムと会った事もあっても不思議ではない。
「お前はナザリさんに捨てられんなよ」
「大丈夫だよ、僕は守るだけの男じゃないから」
「そうか……そういえば」
「なんだい?」
「いや、ファラに来て十日以上経つけどプライベートのナザリさんを見たことないと思ってな」
もちろん、レイ専用のメイド兼秘書なので仕事では見かけることは多いのだが、仕事をしている彼女しか見たことがない。
「そりゃあ、プライベートのナザリの時間は僕が独占しているからね、他の男がナザリの魅力に気づいたら大変な事になるから、しっかりガードしないと……」
それ、プライベートじゃないよな。
ラザファムとは別の意味で心配なんだが……
まぁ今の所二人とも幸せそうだし、第三者の俺がどうこう言っても仕方ないけど。
っと、ショッキングな出来事があったせいで動揺してしまった。
奴には奴なりの俺の知らない事情があったんだろう。
そう無理矢理自分を納得させることにしよう。
見なかった事にしてやる。
今はそれよりも別件の方が大事だ。
本来の目的を忘れてはいけない。
「お、いよいよだね、卵の殻」
そう、いよいよ出番がきたのだ。
さて、いくらの値がついてくれるかな。
「皆様、お次の商品はこちらです」
司会の合図に合わせて、リューと双子が三人がかりでステージ中央まで卵の殻を運ぶ。
やはり重そうだな……手がプルプルしてる。
だから手伝おうかと言ったのに……
頼むから下に落とすなよ。
「私たちが今回出品させていただいたのはコカトリスの卵の殻になります、卵の殻自体は珍しいものではありませんが、これほど綺麗な形態の卵はそうなく、希少価値が高いと思われます」
リューが卵のアピールを始める。
普段粗野な口調の奴が敬語使ってるから違和感凄いわ。
いや、場所が場所だからしょうがないんだけどね。
入札者は神様ですからね、お金を受け取るまでは下手にでないと。
「な……なんだあれ」
「ほう……これは」
「……面白い」
ラザファムの剣程ではないが、それなりに注目されているようだ。
参加者の反応は悪くない。
「綺麗だな」
「ああ、まるで人工的に作られたみたいだ……」
間違えてはいない。
人工的に作られたものだからな。
卵加工職人のアルベルトです。
「それでは皆様、こちらの卵の殻、五万ゴールドから!」
いよいよ入札開始される。
「六万!」
「十万!」
「十五万!」
みるみる金額があがっていく
ちなみにギルドの買い取り提示金額は十二万。
手数料で引かれたとしても既に越えている計算だ。
「十八万!」
「二十万!」
「二十五万!」
いいね、この調子なら、皆で等分しても五万以上は手に入るぞ。
オークションの参加は正解だったようだ。
「三十万!」
「三十万!三十万出ました、ほかにいらっしゃいませんか? それでは!」
三十万、十分な金額だな。
予想より大分高い。
需要もあるとこにはあるものだなあ。
手数料引かれても、二十六万九千ゴールド残る。
普通に売却するよりも十五万ゴールド近く得した計算だ。
これまでギルドで稼いだ分と合わせて、当面の生活費には困らないな。
安心してメナルドに行ける。
もう居候じゃなくてもやっていけそうだ。
さて、これで入札タイムは終了。
誰もがそう思っていただろう。
ところが…………
「ひゃくまん~~、ひゃくまんよ~~」
後ろから間延びした緊張感のない声が聞こえた。
聞き間違いか? どっかで聞いたことのある声だな。
ゴブリンの雄と雌の声を間違えた俺だ。
可能性もないわけではない。
耳に入ってきたのは現時点の三倍以上の金額だ。
普通に考えたらあり得ない。
「あ?」
「え?」
会場に沈黙が満ちる。
司会の人も驚いて反応が遅れる。
「…………」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。
「ひ、百万! 百万です! 他にはどなたか……いらっしゃいませんね、それでは百万ゴールドで落札決定です」
卵の殻に百万ゴールドという大金。
当然、周りから入札の声はあがらない。
卵の殻は百万ゴールドですんなりと落札された。
リュー達も唖然としている。
嬉しい誤算なのだが、まだ現実を理解できていないようだ。
「まじかよ……」
百万て……どこの物好きだよ。
いや、こっちとしては嬉しい限りなんだけど
落札人物を一目見ようと、俺は後ろを振り向いた。
「やった~~、落札できた~~」
落札したそいつは黒紫髪のダークエルフの女で名をレオナといった。
先日お世話になった錬金術師の知人だった。
お前かよ……
でもまぁ……ありがとうございます。
最高の餞別をいただきました。
これでメナルドでも余裕をもって旅することができそうですわ。




