表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/180

初依頼

「ほう……お前ら双子だったのか?」

「おう!! 俺が兄のイチ、シキが弟だ」


 リザードマンのイチが誇らしげに胸を叩く。

 兄のどこに誇るとこがあるんだかわからんけど……


「何言ってんだお前……俺が兄だろ、お前の卵は俺が暖めたんだぞ」

「卵を温めたのは母ちゃんだろうが、適当な事言うんじゃねえよ……そもそも同じ卵から産まれただろうが!!」

「適当じゃねえよ!! ちゃんと卵の内側から温めた」



 イチの発言にシキが異を唱える。

 二人は似すぎていて、外見だけじゃどっちがどっちだかさっぱりわからない。

 俺は双子の体から漏れ出す魔力の波動でどちらか判断している。


 リーダーのリュー曰くこの二人はいつもどちらが兄かで揉めているそうだが、この争いは放っておけば沈静化するそうなので放置しておく。

 こんな争いをしているが、この双子の仲は決して悪くないとのことだしな。

  

 どちらにせよこいつらのことは名前で呼べば問題ないだろう。

 


「さて……と、どの依頼を受けるか……何か希望はあるかアルベルト?」


 ダークエルフの傭兵ギルド受付嬢と話していたリューが、その後ろで親交を深めていた俺と双子リザードマンに問いかける。


「俺は何でもいいぞ……リューに任せるわ。こんなナリだが戦闘に関しては任せてくれ」


 つーか戦闘や魔法関係の仕事以外に俺にできることがない。

 もうちょっとできることを増やしたい所ではある。

 錬金術の知識も少しはないわけではないが、千五百年前の知識だからなぁ

 時間があったら、今どうなって調べておくのも悪くないかもな。



「たいした自信だな、ならこれにするか……まだ昼だし、夕方には帰ってこれるだろう」


 リューが依頼の紙を手に取り、受付にて受注する。





 一悶着あったが無事に俺は依頼を受けることができた。

 やれやれだ。

 受付のダークエルフさんも気にしてくれていたようで「よかったですね」と言ってくれました。


 今回、俺達の受注した依頼は怪鳥コカトリスの卵の殻の採取だ。

 コカトリスは体長三メートル程度の鳥の体と蛇の尻尾を持つ魔物だ。

 戦闘能力も高い上に、嘴により強力な石化攻撃をする。

 ある意味でワイバーンよりもやっかいな魔物だ。


 まぁ耐性のある俺には関係ないけどな。

 弱点のない自分という存在が時々怖くなる。



 ファラの街の南側には沼地があるのだが、少し前までコカトリスの群れがこの時期繁殖のために集まっていたとのこと。

 いた……とあくまで過去形であって、ギルドの話では現時点で卵は孵化済とされている。

 

 今回の依頼は卵の殻の採取が目的であって、討伐依頼ではない。

 コカトリスの卵の殻は武器等の作成に重宝される。

 殻を武器、防具の生成の際に混ぜ込むと武器の強度が微弱ながら増し、破損しにくくなる。


 ちなみに卵の殻の採取依頼が何故個人ではなくグループでの依頼となっているのか?

 それは卵の殻がもの凄く重いため、一人では運搬できないことが主な原因である。

 殻も厚く一センチはあり、卵一個につき五十キロはあるのだ。

 よく親コカトリスは飛べるものだと思う。

 重い卵を産んだ後親のコカトリスはスッキリした顔ですぐに別の場所へと旅立つようだ。


 親がいなくて大丈夫なのか? と思うかもしれないが、戦闘能力のない雛も固い卵の殻があれば外敵が来ても怖くない。

 自力で卵を割って出てくる頃には雛は既に一定レベルまで成長しているというわけだ。






 ファラの南門を出て、沼に向けて湿地帯をリザードマン達と共に進んでいく。

 今の所は順調に沼へと近づいている。

 依頼の特性上、行きは楽だが荷物の多い帰りは辛い。

 リーゼの持ってるアイテムボックスがあればいいんだけど、そんなレアアイテムを持ってるのは一握りだ。

 そんなものを一般の傭兵に期待してはいけない。


 その代わりと言っては何だが、片道二時間の道程なので、大がかりな準備の必要もない。

 重量のあるコカトリスの殻……荷車を使えればよかったのだが湿地では荷車での移動は困難だ。

 直接袋に詰めて肩に担いで持っていくのが無難だろう。


 

 依頼遂行のため俺たちは、運搬役、護衛役、索敵役に分かれることになる。

 運搬役は戦えないので、何人かは魔物が来たとき運搬役の護衛をしなければならない、索敵役はいわずもがな。

 幸い割れても依頼は失敗にはならないが、報酬は下がる。

 一応殻が大きい程、含まれる魔力が多く、殻の重量当たりのギルドの買い取り相場も高い。


 ちなみに俺は現在魔物索敵役をしている。

 索敵というかレーダー係というか……、魔力感知で周囲の魔物を検知してリザードマンに知らせる係だ。

 リザードマンはどちらかといえば近接戦が得意で魔力の扱いに秀でていないため、ガーゴイルの俺が索敵役としては適役だというわけだ。

 視界が悪いので魔力感知が使えないと索敵ができないしな。


 てわけでまじめに仕事仕事!

 最低限の仕事はこなさないとな。

 お金が貰えませんからね。


「イチ! シキ! 左右の茂みに一体ずつ魔物の反応ある……多分ビッグコブラ、気をつけろよ!!」

「「おお!!」」


 この辺りは湿地が多く、蛇系の魔物が多い。

 コカトリスは蛇系の魔物を好んで食べる……この辺りが産卵場所に選ばれるのもそういった背景があるようだ。


 戦闘行為は基本リザードマンが担当している。

 別に俺が戦闘担当でもいいんだけどね、まあ楽ができるならどちらでもいいけど。

 危なくなったら助けてやればいいしな。

 案外気を使って見た目弱そうな俺を索敵役にしてくれたのかもしれない。


 でもちょっと暇だな……


「リュー!!」

「応!!」


「ふふふ……声が聴きたかっただけ」

「真面目にやれゴラァ!!」



 リザードマン達と冗談まじりの行為をしていたら湖はもうすぐそこだ。

 ふざけているように感じるかもしれないが、手は抜いていない。

 索敵の精度もよく、リザードマン達にもやるじゃねえかとお褒めの言葉をいただいた。

 この分なら報酬も人数で等分してくれるだろう。


 魔物もそれなりに出てきたが、人数が減ったとはいえリザードマン達の連携は中々のものだ。

 危なげなく出てきた魔物を順次始末していく。

 

 そして…………


 



「おっ、沼が見えてきたぞ」

「おお……あれか」


 予定通り特に問題なく二時間で沼に到着した。

 本当に何の変哲もないただの沼だ。

 周囲には灰色の卵の殻っぽいものの破片が散らばっている。

 多分アレがコカトリスの卵の殻なのだろう。

 大きいもので一センチ位はあるな。


「結構沢山あるな、もっと集めるのに苦労するかと思ったけど」

「本当はもうちょっと大きな欠片があればいいんだけどな、大きなのは既に回収済みたいだ……、持ち込んだ内容に応じて報酬が増えるのはいいが、如何せん重いから質が良くないと労力と報酬のつり合いがとれねえんだ」


 俺の疑問にリューが答えてくれる。


「でもまぁこの辺りはそれ程強力な魔物もいない、コカトリスも時期的なものだ。グループ依頼の中でも危険は少ない方だし失敗のリスクも低いから、手堅くお金を稼ぐにゃいいかと思ってな……それでも今日明日の宿と飯代くらいは稼げる」

「なるほど」


 ちゃんと考えて受注してるんだな。

 長年リーダーをやっているだけあってしっかりしている。


 よし!!

 ではさっそく卵の殻を集めるとしようかね……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ