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ファラの町2

(この糞トカゲ共……どうしてやろうか)


 仕事が見つからず、やむなくギルドを出ようとしたらテーブルに座っていた三匹のリザードマン三人組に侮辱された。


 おかげで俺の気分は最悪だと言っていい。

 新しい街にやって来て……せっかく輝かしい新生活が始まるという今、出だしから社会不適合者の烙印を押されたのだから当然だ。


 物理魔法耐性の高い俺でも、言葉の暴力だけは防げない。


 大人の余裕で流そうかと思ったが……、ストレスを溜めるのはよろしくない。

 言われたままに黙っているのもムカつく。

 軽く憂さ晴らしさせてもらいたいところ。

 あいつらは俺の大切にしている俺の心を傷つけたのだから。


 リーゼの去り際の台詞……

 思い返せば彼女はこうなることを予感していたのかもしれないな。 


 さてどんな罰を与えようか……



「駄目ですよ、ギルド内での戦闘行為は御法度です。もし戦闘した場合は罰金をいただきます、どうしてもと言うなら隣に決闘場がありますのでそちらでお願いしますね。決闘場の使用は有料ですけど」

「…………え?」


 

 そんな思案をしていたら、入り口にいる案内係さんが不穏な空気を感じ取ったようで俺に忠告してきた。


 まさかギルド職員に先手を打たれるとは思わなかった。

 顔に出てたかな……結果的には助かったけどさ。

 軽率に行動しなくてよかった。

 罰金とかあったら払えないからな。




「案内係さん、彼らは?」


 俺は案内係さんにリザードマン達のことを一応聞いておく。


「傭兵チームの緑三人衆ですね、見ての通りリザードマンのチームです」


 チーム名そのまんまだな、ひねりも何もない。

 リザードマンの鱗が緑で三人だからか……


「少し前までは五人だったんですけどね、先月に二人程脱退したみたいです」

「なんでだ?」

「抜けた二人はフレイムリザードに進化したせいで仲間割れしたみたいです。実力の劣る残った三人とはチームを組む意味がないとのことで」

 

 ギルド職員さんが個人情報をボロボロと喋ってくれる。


 つまりリザードマン達も仲間に見捨てられたというわけだな。

 なんつうか、どこかで聞いた話だ。

 少し自分と通じるものがあり、親近感を感じる。


「彼等も元は悪い人たちではないんですよ……リーダーのリューさんも仲間思いの方だったんですけどね……その仲間に見限られたせいで今は荒れてしまっていますが」

「リューというリーダーはあの隻眼のリザードマンか?」

「はい……彼は依頼の途中で魔物と交戦した際に仲間を庇って片目を失ったんです、その庇った仲間が恩知らずにもチームを抜けたものですから、やさぐれるのも無理はないんですよ。もちろんだからって人を傷つけていい理由にはなりませんけど」


 

 それはまたなんというか……精神的にくるな。

 一応あいつ等も理由があってあんな態度をとったわけか……

 少しだけ怒りが薄れてきたな。

 それなら情状酌量の余地位はあるのかもしれない。

 

 物理攻撃は勘弁してやるか……

 全くしょうがない奴らだぜ。



「なぁお前等……」


 俺は仲間同士で談笑中のリザードマン達に近づいて話しかける。


「あん? なんだお前その可哀想なモノを見る目は……まだいたのかよ」

「ああ、お前達に言いたいことがあってな、とくと聞けよ」


 リザードマンの一人が俺を見て訝しげに返事する。

 面倒臭そうな表情をしているが今なら広い心をもって接してあげられると思うんだ。



「へっへ~~、おおおおっ、おまっ、お前ら仲間に捨てられたんだってぇぇぇ!!」

「「「ああぁ!!!」」」


 額に皺を寄せ血管を浮かび上がらせて声を荒げる緑三人衆。

 やっといてなんだが子供か俺は……でもまぁ最初に暴言を吐かれたんだ。

 これ位のお茶目は許してほしいものだ。

 少し公衆の面前で恥をかけ。


 この台詞俺にとっても凄いブーメランなんだけど。

 



「まてまて、そう怒るなよ、俺はお前達と喧嘩をするつもりはないんだ」

「ど、どの口が言ってんだお前は!」


 た…たしかにな。

 まぁこうなるのはわかっていた、本題はここからだ。


「少しだけでいい……俺の話を聞いてくれないか?」


 真面目な顔に切り替える、ギャップで攻めるのだ。


「なんでてめぇの話なんかっ!!」

「熱くなるなよ、落ち着け……実は俺も……仲間のガーゴイルに捨てられたんだ」


 カリカリすんなよ、仲良くしようぜ、見捨てられた者同士。

 傷のなめ合いでもかまわない。

 たんと俺の傷を舐めればいい。


「この翼のせいで……足手まとい扱いされてな……」


 出会って十分程度で仲間と呼べるのかは微妙なとこだけどな。

 俺はリザードマン達にガーゴイルに捨てられた経緯を話す。



「俺も最初は信じていたよ、仲間(ガーゴイル)の友情って奴を……」


 信じてたよ……目覚めて三十分位はな

 短い? そんなことないさ


 この街に来ているみたいだし、その内あいつらに会うこともあるだろうが……


「本当心がイテェよな……、でも見捨てた奴はコレ(痛み)がわかんねぇんだよな」

「…………お前」


 リザードマン達の目がお仲間を見るようなものに変化した……気がする。


「仲間だと思っていた奴に捨てられ、やりきれない気持ちになるのはわかるよ。だがな……他の奴にあたっても何にもならない……虚しいだけだ。言われた奴がどう思うか……同じことをされたおまえ達ならばわかるだろう?」 


 我ながら説教臭くなってしまったな。


「そうだな……すまねぇ、気が立っていたとはいえお前には酷い事を言った」


 リザードマンの一人が頭を下げて謝罪する。


「「すまん……」」


 残る二人も続いて頭を下げた。

「てめえと一緒にすんな」とか言われる可能性も考えていたが……

 案内係の言う通り悪い奴ではないよう。

 最初はあれだけ俺のこと馬鹿にしてたからただの街のチンピラだと思っていたけど、すんなり謝ってくれて逆に吃驚だ。


「わかってくれればいいさ……自己紹介もまだだったな、俺はガーゴイルのアルベルトだ」


「俺はリューだ、リザードマンで傭兵チーム緑三人衆のリーダーをしている。」

「イチだ、緑三人衆のメンバーの一人」

「シキだ、右に同じだ」


 俺は三人の謝罪を受け取る。

 

 そしてここで天啓を受けた。

 いいことを思いついたぞ……、この話の流れならいけるかな。



「よし、じゃあ皆で仲直りついでに皆で軽く依頼を受注しようか、それで水に流そう」



 確かに俺は個人では依頼を受けることができない。

 厳密には受けることはできるが、依頼人の用件を満たしていない。

 だがそんな俺でも協力者がいれば依頼を受けることが可能だ。


 受付係のダークエルフに聞いた話だと、複数人チーム用の依頼というのもあるらしい。


 これは決まった報酬を受注した皆で分け合うというものだ。

 当然チームの人数が増えれば一人頭の報酬も少なくなるが、安全性は増す。

 先ほどまではこの街に来たばかりで知人もいなかったのだが、うまくこいつら(リザードマン)を依頼に巻き込めば俺でも依頼を受けることができるはずだ。


 何せ現状俺は無一文だからな。

 このままだと飯も食えないし、宿にも泊まれない。

 最悪リーゼがいる領主の館にたかりに行くという手もあるが、それは最後の手段だ。

 

 俺の提案にリザードマン達が三人で互いに顔を見合わせる。

 ちょっと話の流れが強引過ぎただろうか?


「依頼を受けるのはかまわねぇけどよ……その体で戦えるのか? 傭兵ギルドのグループ依頼となると大抵は魔物関係になるから大なり小なり戦闘は避けられないぞ」


 リザードマンリーダーのリューが代表して俺に疑問を投げかける。


「問題ない……と言ってもお前らは信じられないよな。そうだな……もし俺が役に立たなかったら報酬はいらない……これならどうだ? 俺が役に立ったなら報酬は四等分でお願いするよ」


「まぁお前がそれでいいなら俺はいいけどよ、報酬等分である以上はそれなりに働いてもらうぜ? お前らもそれでいいな?」


 リューというリザードマンリーダーが仲間の二人に同意を求める。


「あいよ!!」

「リューがいいならいいんじゃねえか」


 リューの決定に他二人のリザードマンも首肯して同意を示した。

 よし!! これで今日の晩飯はどうにかなるかもしれん。


「話もまとまったみたいだな……それじゃよろしく頼むぜ! 三人共」


 リザードマン達とガッシリと握手を交わす。


 こうして俺はリザードマン達と傭兵ギルドの依頼を受注することが決定した。

 ここにガーゴイルとリザードマンという異色のチームが結成される。

 

 まぁいつも異色のチームしか組んでないんですけどね。

 



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