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雷龍ラザファム5

 お説教が終了する。


 「………」


 頭を下げてガクリと落ち込んだ様子のラザファム。

 

「ま……まぁ、次再婚する時に気を付ければいいさ、元気だそうぜ」


 一応励ましておくことにする。


「い…嫌だ! か、彼女じゃなきゃダメなんだ……、俺には彼女しかいないんだ!」


 ガバッと顔を上げて大声で叫びだすラザファム。


「どうしたらいい!? 彼女とよりを戻すにはどうしたらいい?」

「…………」


 め、面倒臭ぇ龍だ。


「そりゃあお前……ど、どうしたらいいんだ、リーゼ?」


 正直俺に聞かれてもなぁ。

 助けて経験豊富なリーゼさん。

 彼女すらいたことがない俺が答えられるわけがない。


「えっ? わっ、わたしに聞いてるの?」

「俺が駄目ならお前しかいないだろう、さっきみたいにドンと語ってくれよ、お前の経験談でもなんでもいいから」

「そっ、そんなこと言ったって」


 急に話しを振られて焦るリーゼ。

 少し考え、リーゼが口を開く。


「えっと、とりあえずここで待ってても水真龍(ミナリエ)さん達は戻ってこないと思いますよ。仮に戻ってきたとしても今のままだと多分逃げられるかと」

「そんな……じゃぁ俺の二百年間は……意味のないことだったということか」


 ようやく理解したようだ。

 自分の行為が壮大な空回りであることを。

 

「まぁ気づけてよかったじゃないか……、もしかしたらよりを戻せる可能性がゼロになってないかもしれないじゃないか」

「そ、そうですよ」

「なんにせよもっと動いた方がいいぞ、まずは奥さんの居場所を探してみたらどうだ? それと並行して守る以外で奥さんの役に立てることを身につけるとか」


 このままだと、また泣きそうなので二人がかりでフォローしてやる。


 可能性ほぼゼロだと思うけどぼかして表現してみた。

 下手すりゃ既にNTRの可能性もあるが……、黙っとこう。

 再発狂するかもしれん。

 取り扱いには気をつけなければならない。

 キレモノ注意だ。


「そうだな、待っていてもしょうがない……か。お前の言う通り頑張ってみる」

「ああ……、ちなみにもし生活関係のスキルを伸ばしたいんであれば、西の森にいるダイダリアンというゴブリンが先生としてお勧めだぞ、もし気が向いたら行ってみるといい」

「ゴブリンのダイダリアンか……その名は覚えておこう、助言すまないな」

「いいさそれぐらい、ついでに一人で悩まない方がいいぞ、これは経験談だ。」


 何にせよ、気持ちが前を向いてくれたのであれば何よりだ。

 











「二人とも、今からでも俺の住処に来ないか?」


 ラザファムのメンタルが少し回復したところで、俺たちは山頂にある彼の住処に招待された。

 まぁ元々山頂で会うつもりだったんだけどね。

 一騒ぎあったが本来の予定に戻ってくれた。


 ラザファムの住処は山頂にある洞穴を掘り進めて作られており、入り口は狭く、中は広くなっている。

 龍の住処といっても一般家屋と大差のない広さだ。

 ラザファムは普段は人形態で過ごしている。

 龍の大きさに合わせて家を作るのは時間的にも経済的にも手間がかかるからと言っていた。


 俺たちはリビングまで案内される、行く途中の通路も男一人ぐらしだからしょうがないが、少々こみごみしている。

 リーゼは眉間に皺を寄せて顔をしかめている。

 俺はそんなに気にしないけど、女性にはきついかもしれんね。


 リビングに向かう途中、土で埋まった部屋を見つけた。

 理由を聞いたら、二百年前に室内でお酒を飲んで目が覚めたら埋まってたとのこと。

 この件で酒癖の悪さを自覚したラザファムはそれから外に出て飲むようになったらしい、以降点滅行為を初めて今に至る。 


 



「そこらへんに適当に座ってくれ」


 一応リビングだけは普段使用しているせいか、それなりに片づいていた。

 あくまでそれなりだけどね、部屋中央のテーブルに向かい合わせに置いてあるソファーに腰掛ける。

 

「私は食事の準備をするわ!」


 リーゼがリビングルーム端にある簡易調理場で食事の準備にとりかかる。

 まだ晩飯を食べていなかったのでお腹が空いた。

 一応オーク肉は食べたんだけどね、動いたからお腹が減った。


 ラザファムは自分が用意するといったのだが、この住処の雑然とした状態を見てリーゼは自分でやると判断したようだ。


 頼りにならない男だよ。

 他人のこと言えないけど。



 必然、食事ができるまでの間、対面のソファーに座ったラザファムと二人で話をすることになる。


「奥さんに会わなくて却ってよかったんじゃないか?」


 奥さんが帰ってきて、この部屋の状態を見たらどう思うか簡単に想像がつく。


「今考えればそうかもしれんな、お前達のおかげで冷静になれたよ」


 ラザファムが両手を組んで笑う。


「ふふ、少しいい顔になったな、さっきのは生気のない死人の様な顔だったからな」


 先ほどより余裕が出てきた模様。


「おいおい、あまり見るな……恥ずかしいだろう」

「ふふふ、すまんな」


 見つめあう俺とラザファム。

 奇麗な顔してやがる。


「男同士で何やってんの?」


 調理場からリーゼの声が聞こえた。

 聞いてたのか……、そういえば彼女耳がいいんだったな。





「それにしてもアルベルトは凄まじい魔力を持っているな、その膨大な魔力のせいで妻と勘違いしたわけだが……」

「ああ……、なにせ千五百年生きているからな」


 俺の言葉に手を顎に当てて考えるラザファム。


「そんなわけない……と言いたいが否定はできんな。その魔力量なら十分に在り得る。酔っていたとはいえ、まさか負けるとは思わなかったぞ」


 奥さんとは別の件で首を項垂れて落ち込むラザファム。

 ただでさえ強い古龍でも最強とされる真龍がガーゴイルに敗北したんだもんな、無理もない、少し慰めてやるか。



「がっかりすることはない、世界は広いということだ」

「あ、ああ……」

「悔しいか? だがこの敗北は必ずお前を強くするはずだ」

「…………」



 凄まじく上から目線の台詞になってしまった。

 言われたのが俺なら間違いなくイラッとするな。


 変な空気になったので話を変えよう。



「そういえば山頂からよく俺たちの魔力の強さまで感知できたな? 一応これでも魔力は隠しているつもりなんだが……」

「ああ、うまく隠せていると思うぞ。だが雷龍は他の古龍と比べても特に魔力感知能力が高いのだ。他の種族なら気づかないだろう」


 ふむ……


「魔王でも気づかないか?」

「恐らく気づかないだろう、手が触れる距離まで接近すれば魔王ならわかるかもしれんがな」

「そうか……」

「魔王に感づかれるとやはり面倒か?」


 俺は実力を隠すつもりはないが、積極的に広める気もない……

 その場で出たとこ勝負が俺の生き方だ、深く考えず自由に生きるのだ。

 もちろん降りかかる火の粉ははらわせてもらうが。

 ただし規模が火の玉とかになったら全力で逃走させていただく。


「面倒なんだろうけど、今更な気もするな」

「リーゼ嬢は魔王の妹だからな」

「ああ」


 まぁ彼女に対しても元々隠す気はなかったけど。

 ただ彼女が信じなかっただけだ。

 ダイダリアンもそうだったが普通は信じない。


「仮に魔王に気づかれたとして……消されるか、派閥に取り込まれるか、まあお前なら相手がイモータルフォー(死なずの四人)でもなければ問題ないだろう」

「今は戦うつもりはないけどな……、翼をイモータルフォー(死なずの四人)に燃やされたばっかりだし」

「た、戦ったことがあるのか……相手は誰だ?」

「相手はベリアだよ、魔王ランヌの隷属魔法の影響下にあったせいで強制的に戦わされていたんだ」

「ベリアか……よく無事だったな」

「ああ、彼女(ベリア)が俺との全面戦闘を避けてくれて助かった。主が死ねば精神支配が解除される隷属魔法の特性を考慮して、彼女(ベリア)ランヌ()を殺すことを最優先に行動したんだ」


 まぁ助かったといっても、翼の分のおしおきはするけどな。

 一応感謝の気持ちもあるんだけどさ。

彼女(ベリア)に対する俺の気持ちは少し複雑なのだ。

 だからお尻ペンペンした後に、ありがとうと感謝の気持ちを告げよう。


「しかしお前……、いろいろとおかしな点が多いな。今のお前が隷属魔法にかかるわけがないから、随分昔から魔法の影響下にあったってことか。よくそんな長い間無事でいられたものだ」

「ああ……、理解が早いな。妻の気持ちは理解できなかったのに」

「うるさいぞ」



 その後も話題を変え、話は続く。


 一段落着いた頃、リーゼが俺達の前に鉄鍋を持ってやってきた。


「できたわよ!! ボア鍋にしたわ!」

「「おぉ~~!!」」


 リーゼの料理が完了したようだ。

 鍋の中はグツグツ煮えて、とてもうまそうだ。


 それではお食事にしましょうか。












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