表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/180

雷龍ラザファム2

 ゴブリンの集落を出発して三日目。

 ここ二日はひたすら山登り中だ。

 順調に山頂へと近づいてきている。

 リーゼ曰く、このペースでいけば今日の夜には雷真龍ラザファムの棲み家に着くとのことだ。

 

「そういえば何で雷真龍は夜になると光り出すんだ?」


 雷真龍と知り合いのリーゼなら知っているかもと思い聞いてみた。


 ダイダリアン曰く夜になると山頂にいる雷真龍が光るという。

 徒歩でファラに行くためには、雷真龍の光った位置から現在地を逆算して移動するらしい。 

 話通りなら多分今日の夜には光っているのが見えるはずだ。

 

「え? なにその話?」

「ん? 知らないのか?」

「う、うん。少なくとも三百年前はそんなことしてなかったはずよ」


 何か心境の変化でもあったのかね。

 別に龍が光ろうが、光るまいがどうでもいいが。

 なんでかな、すごい嫌な予感がするんだよな。

 リーゼの話は三百年前の話だ。

 その間に雷真龍が急変してなければいいけど。


「少し雷真龍のこと聞いてもいいか?」


 リーゼが首肯する。


「最期に会ったのは兄様がエルフ族の長になった時の挨拶回りで立ち会わせ時ね、元々その前からラザファムさんと兄様は友人同士で交流があったんだけど」


 ふーん、相変わらず情報がボロボロ出てくるなこの子。


「その時は奥さんのミナリエさんと、まだ幼い娘のルミナリアちゃんと一緒に山頂で仲良く暮らしてた。ちなみにミナリエさんは水真龍ね」


 娘さんと奥さんがいるのか。

 そしてよりによって奥さんも真龍かよ。

 やば過ぎんだろファラ山脈、そりゃランヌも手はださないわ。

 何故かベリアには手を出してたけど。


「とても暖かい家庭だったわ、いつか私も家族を持つならこうなりたいと思う位にはね」

 

 リーゼも女だし、やっぱりそういう気持ちはあるんだな。


「後、今更聞くのもなんだけど、事前の約束なしで行っても大丈夫なのか?」

「大丈夫よ! いつでも来てくださいねって言ってたから!」


 それって、社交辞令じゃないか? 

 と思ったが本当に今更なので黙っておく。


 それにいくら知人でも三百年も会わなかったら、少しはためらいや遠慮がありそうなもんだけどね。

 

 


 その後リーゼの暴露話を聞くも、結局その雷真龍が何故夜光るのかはさっぱりわからんかった。

 まぁ、直接会って本人に聞けばいいか。










 日が落ちて夜になった。

 

 予定より少し遅くなったせいで、お腹が減ったので、袋から取り出したレッサーオーク肉の串刺しを片手に食べながら歩く。


 もう後一時間しない内に山頂に着くはずだ。

 ぼちぼち光が見えてもいいころだが…………ん?

 

 あ、あれか?

 確かに山頂が光ってる、てか点滅してる。

 

「ほ、本当に光ってる……」

「だな」


 半信半疑だったようで、リーゼも驚きを隠せていない。


「な、何で光ってるのかしらね?」

「俺に言われてもな」


 あいつら古龍の生態等知る訳ないじゃないか。


「定期的に光らないと死ぬ病気とか?」

「だったらもっと前から話題になってるだろ」

「そ、そうよね」


 リーゼと一緒に山頂を見つめる。


「でもまぁ、綺麗だな」

「そうね」


 目に映るのは夜静かな山の頂から広がる光の円。

 なかなかに美しい光景だ、いいものを見れた。

 教えてくれてありがとうダイダリアン。


 ああ……いいなぁ

 何故世界はこんなに美しいのか……


「お前もそう思うだろう? オーク肉」


 右手の焼肉に話しかけるも当然返事はないが気にしない。

 死せる屍のようだ。


 それにしても本当に美しい光景だ。

 山頂まで距離があるはずなのにまるですぐそこで光っているように感じる。

 ふふ……俺としたことが雰囲気によっているのだろうか。


「ちょっ! ちょっとアルベルト!! あれ!」


 俺が感傷に浸っていたら、リーゼが酷く慌てた様子で俺の肩を揺すってきた。

 なによ、なんなのよ。


(あれ?)


 これ……本当に光が近づいてきてないか?

 えっ、うそっ、ちょっと待って……

 光が近づいてくるってことはつまり……

 雷真龍がこっちに向かってくるってことだよな。


 山頂から猛スピードで俺たちの目前に迫ってくる暴力的な光源

 空気が震え、木々がざわめく、そして……遅れて突風が吹きこんでくる。


 そこに現れたのは我こそが龍の中の龍といった体で全身金色に輝く雷の龍、体長は十メートル位だろうか、尻尾を含めればその倍はいくかもしれん。

 大きな翼をはためかせ、こちらを龍族特有の何考えてんのかわかんない目でジッとこちらを見つめてくる。


「…………」


 なんだコラ、本当に眩しいので近づかないでいただけますかね

 ついでにこいつ……気のせいか体をユラユラさせてないか? 


「…………」


 さっきからじっとこちらを見つめてくる雷真龍。

 どうした?さすがに古龍に恨みを買った覚えは……、あったかもしれないがこいつとは会ったこともない。


「あ、あのラザファムさん、お久しぶりです、私です、クライフの妹リーゼです」


 リーゼがご挨拶を開始する。

 さすがのリーゼも相手が雷真龍で少し緊張している感じだ。

 知人アピールお願いします。

 人のパーソナルスペースに全身で踏み込んできた礼儀知らずをどうにかしてください。


「さ、三百年振りですが、わ、私のこと、お、覚えておられますでしょうか?」


「…………」


 リーゼが話しかけるも、無言の雷真龍。

 対人スキルの高そうなリーゼだが困惑気味だ。


 というか、いい加減何か喋れ。

 古龍のくせにシャイなのか

 しょうがない、俺からも話かけるか。


 さすがに古龍と敵対するのは面倒だからな。

 友好的な感じでいくとしよう。

 下手に下手にと…ここはリーゼに習って敬語とか使ってみるか


「どうも雷真龍様初めまして、私ガーゴイルのアルベルト申します、いや~噂に名高いお姿ですね、私その雷光の輝きに当てられて目がくらみ、立っているのも正直辛い程です。おっと! こんなことは言われるまでもないことですか、これは失礼」


 喋り方が胡散臭い感じになってしまったが気にしない。

 受け取り方によっては挑発にとられそうだけどね、何一つ誉めてないからな。



「……………」


「もしかして何か雷真龍様の気に障ることをしてしまったのでしょうか? ハイエルフ様に雷真龍様、超高位種族が立ち会うこの場に、下等魔族のガーゴイルである私めがいることがお気にめさなかったとか?」


 こいつが今何を考えているかわからないがとりあえず謝っておけば間違いないはずだ。


「……………」


「だとしたら知らなかったとは言え、ご無礼申し訳ありませんでした。」


「……………」


「あの………」


 相変わらずじ~~っとこちらを見つめてくる雷真龍。

 オイオイ、なんでもいいから返答してくれないかなぁ。

 少し腹が立ってきたな……。

 しかも、さっきから体をプルプルさせやがって可愛くねえんだよ

 何故か汗もかいてるし。

 プルプルさせて可愛いのは俺の相棒とリーゼのおっぱいだけだ。

 

 元々真龍にいいイメージが全くないので、俺の中で雷真龍の扱いがどんどん雑になっていく。

 

 もういいや面倒くさい。

 無視だ無視、先に無視したのはそっちだからな。


「もういいよリーゼ、無視して進もうぜ」


 リーゼにご提案する。

 俺は睨めっこしに来たんじゃないんだよ。



「あ……あああ、う、後ろ」


 どうしたリーゼ、お口を開けて。


 後ろって……ん?

 何だ?

 雷真龍までこっち向いてお口を開けて……。

 お前は開けなくてもいいんだよ。

 何か臭いしさ。


 アレ…………それにしてもこの感じってどっかで…………。

 これ……四百年ぶりのアレだよな、間違いなく。


 バチバチ音が聞こえるしさぁ!!


 超高密度の魔力が……雷真龍ラザファムのお口に集まっていく。

 

 





(正気かコイツ!!!)


 こんなもんこの距離でぶっ放されたら、俺はともかくリーゼ(ハイエルフ)だって無事じゃ済まないぞ。


『ガァァァァァァッl!!?』


「リーゼっ!!!」 

「きゃっ!?」

 

 身体強化魔法を超速で発動。

 すぐ傍にいるリーゼを抱え、地面を蹴って横っ跳び。

 至近距離で発射されたブレスをどうにか回避する。



 

(あっぶねぇ~)





 もうやだ…………

 なんでこいつら(真龍)初対面の相手にブレスぶっ放してくるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ