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別行動3

更新遅れてすみません。

現在、仕事諸々立て込んでおりまして

落ちつき次第ペースをもどすつもりです



二話同時更新一話目です

 ―――――――コルル視点―――――――


 眼前の光景の状況を整理する。


 床で眠っているのは、私の睡眠魔法の範囲内にいた男たちだ。

 店に入ったとき、一触即発の危険な雰囲気がしたのでまとめて眠らせた。

 一人は壁際、脚の掛けたテーブルの隣で気絶している。

 店にいる男たちは恐怖の顔を浮かべ、ブルブルと身体を震わせている。


 普段はあまり北東区画の方には行かない私がここにいるのは先日、部下から気になる報告を受けたからだ。

 それはこの店が普通の飲食店に成りすまして、客の女性を罠に嵌めて娼館に売っている……という内容だった。

 腕の中でス~ス~と静かに寝息を立てている黒髪の女の子。

 怪我はなく乱暴された跡は見えないが、男たちに女の子が囲まれていた状況を見るに丁度犯行現場に遭遇したようだ。


 眠る姿を見ていると、男の一人がゆっくりと私の後ろに回り込んで攻撃しようとする。


「やっ、やめろ馬鹿っ!」

「てめえは魔王の顔も知らねえのかっ!」

「……なっ!」


 仲間の男が慌てて制止する。


「うん、そうやって大人しくしているほうが利口だよ。抵抗しても無駄だし、君たちはどうせ逃げられないから」


「「コルル様っ!」」


 丁度いいタイミングで連れて来た配下のサキュバスたちが店に入ってくる。

 店内で戦闘の気配がしたから、わたし一人で先行して店に来たのだ。


 部下たちの手で城の牢屋へと連行されていく男たち。

 店は取り壊し、あとで彼らを魅了して事情聴取を行い情報を引き出す。

 店主の娼婦斡旋先情報などから、さらに多くの関係者が見つかるはずだ。


 店の摘発など、部下に任せればいいという考えもあるけど、魔王である私がこんな真似をするのにも理由がある。

 風俗街のあるこの街では綺麗な女性は金のなる木だ。

 街には見目麗しい女性を無理矢理捕まえて、お金を稼ごうとする者がたくさんおり、どれだけ捕まえてもこういった連中は手を変えて現れる。


 街が無法地帯にならないよう治安維持には力を入れているが、街全域を監視することはできない。

 それでも、こうして魔王である私が定期的に外に出れば犯罪者に対しかなりの抑止力になる。

 他の仕事もあるので毎日とはいかないし、摘発も基本は部下に任せることのほうが多いけども。


「……コルル様、この少女はいかがしますか?」


「う~ん、どうしようか?」


 睡眠魔法に巻きこんでしまった、手元の少女を観察する。

 捲れたローブから覗く非常に整った顔……相当な美少女だと思う。

 なるほど、あの男たちが犯行に及んだのも納得。

 一歩間違えれば彼らの毒牙にかかっていたわけだけど。 


「……よし」


 私の中にある考えが浮かぶ。


 起こさないように、少女を部下のサキュバスにソッと引き渡す。

 こんな綺麗な子を放置すると、別の犯罪に巻き込まれかねないしね。

 少女を城に連れて行くことに決めた。






 ―――――――アルベルト視点―――――――


「ふぁ~あ」


 大きな欠伸をしながら、ベッドから身体を起こす。

 二度寝して眠りから覚めた時、空は大分赤くなっていた。


 頭は大分スッキリとしている、よく眠れたようだ。

 これなら夜の活動に支障は出ないだろう。


「……うん?」


 起きて家の中を探すも誰もいない。

 おかしいな、夕方までには戻るって話だったのに。


 少し変だなと思いながら帰りを待っていると、玄関の向こう側に人の気配がした。


 お、ようやく帰って来たかな。


「……ただいま戻りました」


「おう、お帰りメーテルさん。 ……あれ?」


 玄関の前にいるのはメーテルさんだけ、一人足りない。


「リーゼはどうした?」


「え? まだお戻りになってないのですか?」


「ああ、ここにいるのは俺だけだぞ」


 メーテルさんが俺の言葉に困惑の表情を浮かべる。


「……おかしいですね」


「ていうか、俺は二人一緒に行動しているもんだと思ってたんだが?」


「その予定だったんですが、商業ギルドの図書室を出た後で別れたんです。大体、今から三時間くらい前に……」



 メーテルさんがその時のことを説明してくれる。


 ギルドで調べものを終えて、二人で遅いお昼でも食べようかと相談しながら道を歩いていると、突然人が駆け寄ってきて、メーテルさんに急患の依頼が飛び込んできた。

 緊急依頼で断りにくい状況だったのと、既に大方の準備を終えていたため、リーゼの同意を得たメーテルさんは患者の元に向かった。そのあと二人は別行動になったってわけか。


「う~ん、適当なお店でお昼食べてのんびりしてるのかね?」


「それなら、まだいいんですけど……」


 いや、まぁ……リーゼも子供じゃないんだし大丈夫だと思うけどさ。

 だが、一時間ほど経過して空がかなり暗くなってきてもリーゼは戻らなかった。

 玄関に人の気配がして帰ってきたと思っても、午前中に頼んでいた荷物が届いただけだった。


 アイツは時間にルーズな女じゃない、と思う。 

 どっちかといえば待ち合わせで待つ側になって怒るイメージだ。 


 なんか本当に嫌な予感がしてきたぞ。


 不安を覚えながらもメーテルさんと一緒にリーゼの帰りを待つ。



 外に出て探しに向かうべきかと話していると……。


「……む?」


 床から伝わる振動、この家のほうに近づいてきている大きな足音。

 扉の前に大きな存在が一つ。俺はコイツを知っている。

 この気配で姿を見ずともわかる、一昨日会った巨人の片割れだ。


 それにしても俺、巨人とのエンカウント率高すぎない?


「お~い、いるか~」


 巨人の低音ボイスが聞こえてくる。


 確認するようにゴンゴンと家の壁を叩く音、ノックとはかけ離れた音だ。

 まぁ巨大な大きな手では仕方ないけど、あれでも気を遣っているのかもしれない。

 しかし、街で兵士をしている彼らがどうしてメーテルさんの家に来るのか?


 ここはクライフの諜報員の住処。コルルの命でメーテルさんを拘束してにきたとか、そんな目的でなければいいのだが……巨人に対し、警戒心が湧き上がる。

 俺はメーテルさんに危害が加えられないように護衛モードに入る。


「心配しないで大丈夫ですよ」


「あ……おい」


 扉の前に立とうした俺をメーテルさんが手で制して、外に出る。


「……ジャンドさん」


「おお、よかった。家にいたか」


 メーテルさんが顔を見せると、ホッとした顔を浮かべる巨人。

 大丈夫という判断は正しかったようで敵対的な感じはしない。

 むしろその逆だった。


 メーテルさんに頭を下げるジャンドという名の巨人。


「今日はドボルを診てくれてありがとう。友人として動けないアイツに代わって礼を言いに来たんだ。俺も昼間は仕事だったし、そんな時間もなかったからな」


「そうでしたか、それはご丁寧に……その、ドボルさんの今の様子は?」


「宿舎で熟睡しているよ、ちょっと前までの苦しみはなんだったんだってくらいに穏やかだ。迷惑な野郎だぜ」


「あはは……でも、元気になってよかったです」


「朝は普通にしてたのに、突然高熱出して倒れたからびっくりしたぜ」


「病気は自覚症状のないものが多いですからね。大丈夫だと思っても水面下で進行しているので怖いんですよ。感染しないためにもキチンとしたお店に行くことをお勧めします。それに身体が大きいと薬代も高くつきますから」


「そうだな。店代をケチると碌なことがないって痛感した。当分はお金を貯めることに専念するよ」


 苦笑する巨人。

 感染、店、風俗好きの巨人……キーワードからまぁなんとなく事態の想像はつく。

 話の経緯を聞くに風俗嬢に病気を移されたようだ。

 メーテルさんが対応した患者は巨人の片割れだったらしい。


 仕事で慣れているのか、メーテルさんはそういう話題にも平然としている。

 どこかほのぼのした雰囲気で会話をする二人。

 巨人にはこの街に来て何回も行動妨害されていたから、今回も何かあるんじゃないかと警戒していたが、その心配は杞憂だったようだ。


「用はそれだけだ。すまないな、突然来たりして……驚かせてしまったか?」


「……いえ、そんな」

「まったくだ」


「……あ?」


 やべ……つい本音が口に出てしまった。

 巨人が俺の存在に遅れて気づく。


「その声、その鎧、この前割引チケットくれた兄さんか」


「……おう」


「ははは……広い街なのによく会うな」


 俺の姿を見て大きく笑う巨人。


「お知り合いだったんですか?」


「まぁ……ちょっとな」


 少し驚いた反応を見せるメーテルさん。後で説明すると彼女に話す。

 巨人と会話するつもりはなかったが、さっきの話で気になっていたことがあったので聞いてみる。


「な、なぁ……お前さんの相方が倒れたのって俺のプレゼントしたチケットの店が原因じゃないだろうな?」


 いや、まぁ……話を聞くにこいつらの自業自得ではあるんだけど。

 そうだとしたら、ちょっとモヤモヤした気持ちになるからな。


「違うって。兄さんがくれたチケットの店はコスト、安全面、諸々を考慮して、キチンと厳選された優良店だ。病気に感染する心配はねえよ」


「そ、そうか」


 どうやら心配することはなかったようだ。

 さすがギンのお勧めする情報だ。


「いい友達を持ったな、兄さん」


 まぁ、こんなことで友情を確かめられるってのもどうかと思うが……。


「ところで兄さん、相方といや、前に一緒にいた綺麗な姉さんはいないのか?」


「アイツは今は別行動してる。お前ここに来る途中で見なかったか?」


 せっかくなので、俺はジャンドに聞いてみる。


「……いや、見てねえな」


「そうか……ったく、夕方には帰るって話なのに何やってんだアイツは……」


「夕方って……もう夜だぞ」


 マジで心配になってきたな。

 これ以上遅くなると、今日の侵入作戦に影響がでるかもしれない。


「なぁ、聞きたいんだけどよ。今日も姉さんは白ローブの服を着て外にでかけたか?」


「あ、ああ……そうだが」


 俺に問いかけ、考える素振りを見せる巨人。


「どうしてそんなことを聞くんだ?」


「同僚の兵士から聞いた話なんだが……今日、捕物があってな」


「捕物?」


「裏で犯罪を行う店がこの街には結構点在するんだよ。届け出を出さずに不法なサービスを提供する店とか、ぼったくりバーとかな。勿論、そういった連中を捕まえるために街の兵士たちが目を光らせてはいるがな」


 ああ、その辺の話はリーゼからも前に聞いたな。


「で、その捕物が今日の午後、この北東区画で行われたらしいんだ。それで……城に連れていかれた者たちの中に白ローブを着た黒髪の女がいたって……」


「えっ!」


「……あぁ?」


 巨人から飛び出た予想もしない発言を聞き俺とメーテルさんは顔を見合わせる。


「……ほ、本当なのか、それ?」


「あ、ああ。つっても俺も人づてに聞いたことだから保証はできないが……」



 おいおい……おいおいおい。


(……ど、どうすりゃいいんだよ? この事態)


 現実から逃げるように思わず空を仰ぐ俺。



 状況が一気に複雑化していく。




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