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エロゴイル2

「ひひひ、何でこんな森の中にエルフがいるんだかわかんねえが、こいつは運がいい」

「集落についてからたっぷりかわいがってやるからなぁ」

「いやもう、ここでやんね」

「馬鹿、もうちょっとで着くんだから我慢しろよ」


「……」


「あっあの、そのエルフは私の……」


 弱者を演じるのだ。

 奴らの油断を誘うために……


 おどおどした感じを前面に出していかねばならない。


「あん! まだいたのか! 見逃してやるからとっとと失せろ!」


「で、でもそのエルフは私の奴隷で」


「殺されてえのか?」


「ひぃぃぇぇっ!」


 普段やらない役だから、不謹慎だけど少し楽しくなってきた。


「じゃ、じゃぁせめて後ろに連れているゴブリンを二人をいただけませんか?」


「あん?」


「見ての通り、先の戦争で翼を失いまして、奴隷が欲しいのです。」

 

 ゴブリンとエルフの交換の提案。

 ここまでは予定通りだ。

 さぁ、どうでる。


「おい、どうする……」


 ワーウルフ達は迷っている様子だ。

 しょうがない、ゴブリン達を解放するため、ここはリーゼの価値をアピールする作戦でいこう。

 

「おいリーゼ、ちょっとの間、何を言われても我慢しろよ」

「え? え?」


 俺は小声でリーゼに耳打ちする。

 プレゼンテーションの始まりだ。 


「お、お願いします、実はそのエルフ、まだ新品同様の処女なのです」

「なに?」


 ビクッとするリーゼ。

 おいおい、あんま動くなよ。

 すまんがここからはアドリブでいかせてもらうぞ。


「おい! もっと近くに来い!」


 リーゼの腕を引っ張って、俺の手元に引き寄せる。


「ファラの街で奴隷として売るつもりだったので手は付けていません、鉄の意志で触るのを我慢したんですよ私」

「お、おう」

「あどけない顔に反した挑発的な乳房も、男を惑わす美曲線を描くお尻も揉みしだくのを我慢しました」

「ほ、ほう」


「もっと隅々までよくご覧になってください彼女の体を!」

「ちょっ」


 手枷を掴んで、彼女の両腕を上に持ってくる。

 今の彼女はバンザイした後に、両手をくっつけた状態だ。

 邪魔な手がなくなったおかげで、胸の谷間もキュッとしたくびれも男達からはよく見える。


「ほらもっと近くで! そこからじゃ遠いでしょう!」 


 どこかからギリギリと歯ぎしりをする音が聞こえるな。

 間違いなく幻聴だろうけど。


「…………」


「これからあなた達は彼女の体を思う存分楽しむのでしょう? このやわらかそうなお椀型の綺麗な胸、見ただけで極上だとわかりますよね。肩を揺すってみるとホラ! この通りプルプル動いてます、これを***したら天にも登る気持ちでしょう。他にもつつくとその分だけ押し返してくれるだろうお尻を***したり、あまつさえ***したりと、あなたたちはできるんですよ、なんて羨ましい」


 ワーウルフ達がリーゼの体を見てゴクリと唾を飲む。

 なんかリーゼの肌にぶつぶつしたものが浮かんでね?


 多分寒いんだろうな。

 布を巻いただけだしな、しょうがない。

 もう少しの我慢だぞ。



「こんな極上のエルフを提供するんですよ! ゴブリンの二人ぐらい譲ってくれたっていいじゃないですかぁ!」


「あのなぁ、別にお前を殺しちまえばそんなの関係ないんだぜ」


 まだ駄目か、しょうがないハッタリでビビらせよう。






「言うことを聞いてくれなかったら自爆します」


「な…………に?」


「自爆します、だったら皆一緒に死んでもらいます、ここいる全員木端微塵になればいいです」


「はったりを言ってるんじゃねえぞ」


「事実です、私はガーゴイル、自爆なんておてのものです」


 え? ガーゴイルって自爆機能ついてたっけと相談するワーウルフ達。

 真っ赤な嘘だけどな。

 そんなものついてるわけないだろう。



「ま、まぁいいんじゃね、ゴブリンぐらい、エルフが手に入るなら安いもんだ」


 少し待つと、ワーウルフの一人が俺の提案を飲んでくれた。

  

「だそうだ、勝手にもっていきな」


 よし、作戦成功だ。


「あ、ありがとうございます、では失礼します」








 二人のゴブリンに近づき、無事に保護完了だ。

 これでワーウルフは二人を傷つけることができない。

 俺が全身全霊を持って守ってやる。


 これでようやく反撃を開始できる。


「もう大丈夫だぞ! 二人とも、巻き添えをくらうから向こうにいこうな」


 俺はゴブリン達に語りかける。


「あ、え」

「あの」


 まだ何が起きたのか信じられないようだ。


「お前等を助けに来たんだ、リーゼ、もう大丈夫だぞ! おもいきりやれ!」









「ひひっ、お尻さわっちゃおっと」

「あってめぇ! 抜け駆けすんなよ! 集落に着いてからって話しだっただろ」

「じゃんけんで負けたんからしょうがねえだろ、荷物持ち」

「触るだけだって! いいだろそれぐらい」

「じゃあ俺胸な」


「ふふ、うふふふ」


「あん?」


 アルベルトが連れたゴブリン達との距離はもう百メートル以上離れただろう。

 もう十分よね、もういいわよね!


「あぁぁぁ! 我慢した、よく我慢したわ私! 後で覚えてなさいよアルベルトぉぉ!!」


「あん? なんだこの女突然叫びだしたぞ」

「絶望しておかしくなっちまったんじゃねえのか?」


「おかしくなった? 正常よ私は、じゃなければあなたたはとっくに死んでいるわよ! こんな風にね!」


 『アイスランス』


「がっ…………」


「え?」


 胸を触ろうとしたワーウルフが氷の槍に心臓を貫かれて崩れ落ちる。

 突然の事でワーウルフ達は何が起きたのかわかっていない。

 

「あら、血がついちゃった、まぁこんな服とも呼べない服なんて二度ときないからいいけど」


「は、あ、なっなにが!」


「まだ気づかない? 私はあのエロゴイルの奴隷なんかじゃないわ! あんた達からゴブリンを取り戻すのに一芝居うったってだけ!」


 好き勝手やってくれちゃって、後で覚悟しなさいよ!

 どさくさに紛れてセクハラまがいのことをしたガーゴイルの顔が思い浮かぶ。

 

「覚悟しなさい! ゴブリン達の敵を討たせてもらうわ!」


「何故エルフがゴブリンと……」

「調子に乗るなよ、小娘が」


 もう、小娘って年でもないんだけどね。

 でもなんであいつ私が経験ないってわかったのかしら。


 残ったワーウルフ達が今更戦闘態勢に入る。

 

「行くわよ!」



 隠していたリーゼの魔力が解放され、濃密な魔力が辺り一面に拡がる。

 想像以上に大きな魔力にたじろぐワーウルフ達。


「う……あ」

「あ、なんだよ……コレ」


 遅蒔きながら彼等は気づく、自分がどれほどの危機的状況に陥っているのか



 『ウォーターカッター』

 『ロックバレット』

 『ウインドカッター』 


 展開するは、水、土、風のレベル2の魔法。

 ハイエルフは基本四属性(火、水、土、風)全ての魔法適正がある。

 今唱えたのは低レベル魔法だが、威力が低い分小回りが利き、こういう森での戦闘では非常に有効だ。 

 それにハイエルフである私の魔力があれば、低レベルの魔法でもワーウルフを殺すのに十分な威力を確保できるしね。

 それにこんな障害物の多い空間で大魔法を使うわけにもいかない。

 

 近接戦闘もできないわけではないけど、種族特性上魔法戦の方が得意なのだ。


 リーゼの正面に出現した水の刃、風の刃、岩のつぶてがワーウルフに向かって射ち出される。


「ぐぁ」

「げっ」


 一人、二人と地に崩れ落ちるワーウルフ達。


 これで残りは二人。


「三属性の並列展開! うっうそだろ!」

「なっなんでエルフがこんなに強いんだよ……」


「エルフじゃないわよ、私はハイエルフ」


 生き残ったワーウルフ達は驚きを隠せない。


「ハイ……エルフだと?」

「なっ、なんでそんな種族が性奴隷の格好してこんなところにいるんだよ!」


「せ、せいどっ!? あんた達がゴブリン達を奴隷にしたせいでしょうが!」


 引き続き魔法を大量に展開していく。


「にっ逃げろぉぉ!」

「おいっ、俺を置いてくんじゃねえ!!」


 万に一つの勝算もないと理解した彼等は一目散に逃げ出していく。


「逃がさないわよ!」


 ワーウルフは敏捷性の優れた種族だが、単発の魔法ならまだしも、この数の魔法から逃れる術はない。


 背中に魔法の直撃を受けて、バタンと倒れるワーウルフ


「る……し、ゆる……して」


「あら、まだ生きてたの?」


 ワーウルフはかろうじて生きているといった体だ。

 放って置いてもやがて死に至るのは確実だ。


「頼、む」


「駄目よ、今まで遊び半分で命を奪ってきた報いを受けなさい」


「……」


「せめてもの慈悲で苦しまないように逝かせてあげるわ」














 戦闘も終了したので、アスタとリンを連れてリーゼに合流する。

 視線を下に送ればそこにはワーウルフの五人の死体がある。


「無事片づいたみたいだな、めでたしめでたし」


「いえ、まだよ、まだ一番死ななければならない男が残っているわ!」


 ん? ワーウルフは確認した限り五人だったよな?


「何、まだ隠れている奴がいたの……って うっぉぉぉ! 何すんだテメエ!!」


 飛んできたウインドカッターをブリッジで緊急回避する。

 玉のお肌に傷がついちまうじゃねえか。


「ちっ かわしたか、あんたのことよ、アルベルト!」


「あん?」


「このセクハラガーゴイル! あんたが私のことをどう思っているかよくわかったわ! ネチネチと生々しく人の体を寸評してくれちゃって寒気がしたわよ! よくもこんな屈辱を!」


 大事な部分に直接触れたわけじゃないんだからいいじゃないか。


 ……とは言わない、考えなくてもどうなるかわかるからだ。

 こういう時はとりあえず謝るに限る。


「す、すまん」


「すまんで済むと思ってんの!」


 じゃあどうしろと?


「せ、性奴隷扱いされるとは思わなかった。 まだ誰ともしたことないのに……」


 最後の方はボソボソ声だったがなんとなく言いたいことはわかる。

 そしてこういう時男が何て言えばいいのかもわかってる。


「責任とるよ! 結婚しよう!」


「私が損するだけじゃない!」


 そ、そこまで言わなくてもいいのに。

 ちょっとショック、

 俺の何が駄目だっていうんだ。

 金も地位も名誉もない、容姿も優れない男だけど愛だけなら与えられるのに。

 

 地上最強のヒモになれるのに……



「あ……の」

「お二人は一体?」


 俺がリーゼの怒りを真摯に受け止めていると

 少年ゴブリン達がおずおずと遠慮がちに会話に参加してきた。


 ありがとう会話を中断してくれて。

 忘れていたわけじゃないんだよ。


「すまんな置いてきぼりにして。とりあえず彼等に回復魔法をかけてあげてくれないか?」

 

 二人とも傷だらけで満身創痍だ。

 はぁ~と大きくため息を吐くリーゼ。


「……わかったわよ」


 よし、無事に難局を乗り切ったかな。

 ふう~、あぶねえ、あぶねえ


「この恨みは絶対に忘れないからね」


 なんとかギリギリ致命傷で済んだぞ。


 


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