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そのガーゴイルは地上でも危険です ~翼を失くした最強ガーゴイルの放浪記~   作者: 大地の怒り
リドムドーラの街編

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城侵入1



 リドムドーラ城への侵入準備を進めていく俺たち。

 城侵入の目標はクライフとの接触。

 魅了にかかっているか確認し、無事の場合は本人から内密に情報を引き出したいところだな。


 正直、現時点でクライフに対するベリア側の考え方など、不透明な部分が多すぎるからな。

 相手の思惑が明確でない状況だと、どこまで強気に動いていいか判断に困る。


 まぁ、文句を言っても始まらない。

 少しでも侵入成功率を高めるために作戦を立てていく。


 城への侵入は一回目で成功すれば何も問題はないが、最初はどうしても手探りの部分が多く、危険な対象を避けながら慎重に移動するとなると移動に時間がかかる。

 侵入チャンスが何度もあるとは思わないが、それでも警戒されなければ明日には繋がる。

 焦って無茶は禁物、引き際はキチンと考えるべきだ。

 一回目の侵入で得た有用な情報を元に作戦を練り直して、次侵入すればいいのだから。


 とにかく、ベリアたちに見つからないことが大事だ。


 発見されれば、以後城の護りは厳しくなり、城への再侵入は困難になるだろう。

 ベリアが俺の存在を知ってなお城を留守にするとは思えないからな。




 メーテルさんが城内部の情報に詳しい諜報員とコンタクトをとるために外に出ていき、その間にリーゼと相談して城内部や周辺の図を見ながら侵入計画を立てていく。

 侵入時間帯、城周辺の兵配置、諸々考慮して侵入経路の候補を導き出す。


 やがて戻ってきたメーテルさんを加えて話し合い、侵入作戦が決定した。

 作戦は所々行き当たりばったりだが、短時間で考えたにしては上出来だろう。

 少なくとも最初の侵入まではうまくいくはず。


 城の上階ほど内部情報は少なく、未知の部分は多くなる。

 メナルド城でもクライフが宝物庫など重要な諸室には結界魔法を仕掛けていた。

 それと同様に、リドムドーラ城に魔法的な結界など、なんらかの仕掛けがないとは限らない。


 ま、その辺は臨機応変に対応するしかない。

 認識阻害系の魔法ならば俺には通じないし、大体の状況には対応できるだろう。


 俺の身体性能とミラージュリングがあれば、クライフに会える確率は低くないはず。

 ミラージュリングは発動にかなり魔力を消費するが、俺ならば一日中発動させていても魔力切れの心配はない。




 夜になり移動を開始。メーテルさんの家を出て、リーゼと二人で極力人通りの少ない路地を通って城の東側へと歩いてていく。

 ミラージュリングは二つ、使えるのは俺とリーゼだけ。

 メーテルさんは敵に見つかる可能性が高いのでお留守番だ。


 城の正門は南側にあるが、今回は厨房や食糧庫に繋がる城東側の裏通路から侵入する。

 正門付近には大勢の兵士がおり、解放された屋外庭園なども近くにあって人が集まる。

 わざわざ自分からリスクを冒す必要もない。


 東側から侵入する理由は他にもある。

 ベリアが留守かどうかの情報を迅速に入手するためだ。


 留守の判断指標になるのはベリアの食事の時間。

 食事の時間が遅く、ベリアが留守のようなら、裏通路に小石を二つ並べて置いておくそうだ。

 裏通路に入ってベリアが留守の確率が高ければそのまま突入、そうでないなら一度引き返す。


 食事時間の情報については城の厨房で働いている諜報員が知らせてくれる。

 メーテルさんが事前に動いてコンタクトをとってくれた人だ。


 食事の時間だけで、ベリアの留守を判断するのは確実性に欠くのは理解している。

 だが、リーゼはベリアと思われる女性が温泉に通うのが日課だと話していたと言った。

 温泉で遭遇したのが本当にベリアなら、今日も城を留守にしている可能性は低くないはずだ。

 他にアテがあるわけでもないし、今はその情報に縋るしかない。

 



 リドムドーラの城に辿り着いた。


 石造りでできた八階建のお城、メナルド城よりも少し大きい。

 城をグルリと囲む擁壁の外から、俺たちは城を見上げる。


 装飾が随分と派手だ、城だけでなく擁壁まで細かい模様が彫られている。

 最上階の屋根からは尖った針のようなオブジェがいくつか空へと伸びている。


 まぁ街全体が随分と派手だし、城だけ地味というのも変かもしれんがな。


 侵入五分前となり、樹木の下で最終確認をする俺たち。

 密集した木々がうまい具合に俺たちの姿を隠してくれる。


 リーゼはここに待機する予定だ。

 城内部ならともかく、この位置ならそうそう見つかることもあるまい。


 リーゼからは共振石というアイテムを事前に渡されている。

 二つ対になっていて見た目はただの四角い石だが、一方が震えるともう一方もリンクして震える特性を持つ石だ。震えさせるには魔力を込めればいい。


 外で何かしらの異常が発生、もしくは俺の方で失敗した場合は石を震わせる手はずになっている。

 会話はできなくとも単純な合図ならば問題ない。

 二つの石は一定距離離れるとリンクせず、有効距離は直線距離で五百メートルというところだが、城の内部からこの位置なら問題はないだろう。


「よし、そんじゃあ行ってくる」


「……危ないと思ったらすぐに引き返して」


「ああ、わかってる」


 リーゼに別れを告げ、潜入作戦を開始する。


 ヒョイっとジャンプして擁壁を乗り越え、特に問題なく地上にある裏通路へと。

 幅三メートルくらいの薄暗い通路を進んでいく。

 少し歩くと通路脇に並んだ小石を発見。

 ベリアはいないと見て、城の内部へと突入していく。


 二階への階段を目指して歩き、通路脇の食糧庫や厨房を通り過ぎる。

 部屋の中からは肉の焦げるいい匂いがしてきたが我慢しよう。

 ピクニックに来たんじゃねえし、つまみ食いして怪しまれるとか間抜け過ぎる。

 何人かと通路ですれ違ったが、堂々と歩いていく。


 やっぱ便利だぜ、認識阻害。

 おかけでコックが「お前を料理してやる!」などと言い出すようなこともなかった。



 ちなみに、ミラージュリングが対象に有効か無効か。

 魔力感知や纏う雰囲気、それに長年の勘を頼りにすれば兵士の実力はわかるし、大体の判別はできる。


 ぶっちゃけ、魔力感知でクライフやコルルの位置を下階から把握できれば一番楽なんだけどな。

 ここからでは反応が見つからない、もっと近づけばわかるかもしれないけど。


 魔力が外に零れない特殊な場所にいるのか、もしくは魔力を隠蔽しているからか。

 戦闘中の魔力解放時ならともかく、隠蔽されると見つけるのは難しい。


 隠蔽するのは単純な理由で、魔王クラスの存在が魔力を全開にすると周囲が威圧されて委縮し脅えてしまうからだ。

 余程自己主張の激しいやつじゃないと、そんな真似はしないだろう。

 前に暴走した変異種のように、知性の低めな魔物なら気にしないだろうが。


 メナルドに居た時もクライフは外に魔力が漏れないようにしていた。

 強者程、魔力制御が巧みで外に魔力が零れず感知しにくい。

 それでもラスとラボぐらいならどうにか探れたが、コルルやベリアといった魔王連中となると更に隠蔽も巧みだ、感知できなくてもおかしくはない。


 ま、俺より魔力感知が得意なラザファムなら探れたかもしれんがな。



 事前入手した見取り図を適宜確認しながら移動していく。


 緊急時に地図を見ながらだと素早く動けないので、地図は極力暗記したかったが覚える時間が足りなかった。

 意外に思うかもしれないが、俺は記憶力の良い方じゃないんだよ。


 それでも、低階は一般開放されているフロアも多く、かなり詳細な図が記載されており、基本的に各階同じ諸室配置で似たような構造なので迷う心配は少ない。

 低階は連続階段となっており、一気に一階から四階へと移動する。


 この辺りは火山帯で地震が頻繁に発生するため、ある程度地震に配慮した建物構造になっている。

 偏心、ねじれ、だっけか? 例えば階段の位置を変にバラけさせたりするとソレに影響するとか、なんとか。

 専門家じゃないから詳しいことはわかんねえけど。

 どっちかっつうと、俺は大地震を起こす側だしな。


 ま、なんにせよだ……スムーズに移動できるので助かる。

 


 時々、道を間違えそうになり、見取り図を見るため立ち止まったりしながらも、四階、五階と順調に進んでいく。


 階段近くには衛兵も立っていたが指輪のおかげで完全スルーだ。

 二十分が経過し、六階への階段を発見する。

 なかなかいいペースだろう。


 だが、メーテルさんに聞いた話では本番はここからだ。


 俺は気を引き締めて移動する。

 情報ではこのフロアからはコルルナイトがいる。

 俺と似たような全身鎧を装備した奴らが徘徊しているとのこと。

 かなりの実力者らしいので注意が必要だ。

 俺は彼らを刺激せずに行動しなければならないのだが……。


 うん……ていうか、もうね。


 現在、階段を上っている最中、まだ六階に行ってないってのに既に嫌な予感がしている。

 


 ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ、ガチャ、ガッチャ。

 


 一段、一段と階段を上がるごとに大きくなって聞こえる金属音。


 この先の光景を考えたくねえが、行くしかない。


 俺は覚悟を決め、階段を出て廊下へと移動する。 

 

 




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