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模擬戦2



 模擬戦が始まった。


 久しぶりの戦い。

 少なからずわくわくするぜ。


(……さて、ルミナリアはどう動くか?)

 

 自分で言うのも何だが、ルミナリアにとって俺は得体の知れない相手だ。

 翼の無いガーゴイルの俺がどんな戦いかたをするのか。

 なかなか想像はつかないだろう。


 何せ俺自身も現在進行形で考え中だからな。

 当人にわからんものをわかるわけもない。


 

 前面に『水弾(ウォーターボール)』を展開していくルミナリア。

 先制攻撃は譲るとしようか。


「……いきますよ」


 手を前に突き出すと同時、一つ、二つと挨拶替わりに飛んでくる『水弾(ウォーターボール)』。



(うん? 避けるまでもないんだが……)

 

 俺の左右を、皮一枚の距離スレスレで通過していく水弾(ウォーターボール)

 『水弾(ウォーターボール)』は背後の壁にぶつかり消えた。



「……ど、どうして避けないんですか?」


「当たらないってわかってたからな」


「……」


 今の攻撃は、俺の反応を見る確認の意味もあったのだろう。

 ご丁寧に発射前に声掛けまでしてくれたしな。

 

 勿論、俺の強さについてルミナリアは聞いている。

 先ほど本人も『手加減はいらなそう』と発言していた。

 ただ、実際に見たわけではない。

 万が一のために最初に俺の実力を確認しておきたかったのだろう。

 種族性能を考えたら、圧倒的に差があるわけだしな。

 彼女らしいといえば、らしいけど。


(……余計な心配を)

 

 普段の俺を見ていればそんな心配は……いや、心配しかねえな。

 この街来て、ギルドの実績も貝拾いと魚の護衛だけ。

 城でものんびり過ごしている時間が多かった。


 先日の酒場の騒動の時、ルミナリアに腕相撲で勝ったことはあるが、ルミナリアは酔っぱらっていたし、覚えてないだろう。



 よし、最初に彼女の心配を取り除くとしよう。


「すまん、ちょい中断な」


「アルベルトさん?」


「……あれでいいか」

 

 俺の視線の先は対戦相手(ルミナリア)ではなく、その向こう側。

 魔王様お手製の強固で分厚い壁だ。

 ルミナリアがその様子を不思議そうに見ている。

 

「……見てな」


 抑えていた魔力を開放する。

 右手を上にかざし、掌に魔力を集中、ルミナリアと同じ『水弾(ウォーターボール)』を生成する。

 ぐんぐん大きくなり、俺の身長を超える直径二メートル大の大型の『水弾(ウォーターボール)』ができあがる。


 まぁ、これぐらいで大丈夫だろう。


「らあっ!」


 大きく振りかぶり、『水弾(ウォーターボール)』を壁に思いっきりぶん投げる。 

 風切り音を上げ、猛烈な勢いで壁に衝突する『水弾(ウォーターボール)』。



 ――――――ドゴオオォン!!


 

「んなっ!」


「……っ!」


 耳を塞ぎたくなる轟音が訓練場を満たす。

 わずかに遅れ、壁の破片がパラパラと空から降ってくる。

 訓練場は近隣住民に配慮し、防音魔法も張ってあるのでまぁ問題ないだろう。


 まだ全力ではなかったろうが、ルミナリアの攻撃では傷つかなかった壁。

 その壁の所々がひび割れ、衝突箇所には大きな円形の窪みができていた。


「「……」」


 驚きの声を上げ、口を半開きにしたまま呆然とするルミナリアとリーゼ。

 片方は純粋な驚き、もう片方は「あんた何やってんの? どうして二分前に壊さないって約束したのに破るの?」って意味の驚きだろうが。

 

 にしても……


「随分固ってえな、もっと威力上げてもよかったか」


 さすがは魔王クライフお手製の魔法壁ってところか。

 貫通とまではいかずとも、もう少し傷つくと思ったんだけど。


 想定以上の強固さだ。

 それなりの魔力を込めたつもりだったんだけど。

 今の倍くらい魔力を込めても大丈夫そう。


 これなら、ルミナリアも遠慮なく戦えそうだ。


「……ま、まだ上がるんですか?」


「やろうと思えばな」


 ルミナリアの問いに頷く。


「……これは」


 彼女の額から一筋の汗が流れる。

 先ほどの光景を見て感じたであろう、彼女の動揺が伝わってくる。

 手加減しなくていい相手なのは十分伝わったはずだ。


「こ、壊さないでって、言ったのに……」


「す、すまん、後で元に戻すから」


 リーゼに謝っておく。

 模擬戦が終わったら俺の土魔法で壊れた箇所を修復しておく。

 ちゃんと後のことも考えてるから大丈夫よ。


「てわけで、余計な心配はするな。仮に攻撃が当たっても大丈夫だから」


「……わ、わかりました」


 ルミナリアが強く頷く。

 普段の俺からは想像もできないだろうけど。

 最近忘れがちだが、俺本当に強いのよ、信じて。

 

「……は、真龍()と戦うつもりで考えたほうがよさそうですね」


 壊れた壁を見て、ルミナリアが言う。

 納得してくれたようで何よりだ。


 


 仕切り直し。

 再び開始線の位置に戻る。


 先ほどにも増して真剣な表情のルミナリアと対峙する。

 

「……全力で行きます!」


「おう」


 リーゼの開始合図と同時、身体強化魔法を発動させ、開始線から後ろに下がって距離をとるルミナリア。

 

 ルミナリアを囲むように、前後左右万遍なく直径三十センチメートル程の水弾(ウォーターボール)がボコボコと生成されていく。

 

「……」


 ルミナリアが距離を取ったのは水弾を展開する時間を稼ぐため。

 絶好の好機とまでは言わないが、本来ならわざわざ見逃す理由もない。

 正直、この段階で妨害するのは簡単。

 

 だが……あえて待つ。


 同じ水魔法の使い手として、どう戦うのか興味がある。

 それに……万全の状態で迎え撃ってこそ俺だろう。

 まぁ姑息に戦うのも俺っぽい気もするけど。

 つまり、何だって俺なんだけど……

 

 ま、まぁ要は自由だということだな。

 いつでも動けるよう自然体で待機だ。


 実戦ならまだしも、模擬戦初戦でいきなりそういうことをすると小物っぽくなりそうだしな。

 年上ならではの受けの姿勢、懐の広さを見せておく。

 真っ向からルミナリアの攻撃を受け止めるのだ。


 そんな俺の態度を余裕と取ったのか、侮りととったのか。

 戦意に満ちた顔で、こちらを睨み付けてくるルミナリア。

 

 プカプカと浮かんでいる『水弾』の数は十を超える。

 どうやら準備も整った様子。



「……さぁ、お手並み拝見といこうか」


 遠慮は無用と、『水弾(ウォーターボール)』がビュンビュンと飛んでくる。

 先ほどのやり直しに見えるが、その速度は段違い。

 当たればまぁ……痛そう。


 飛んできた水弾を軽くサイドステップして回避。

 弾毎に微かな速度差をつけており、避けるのに少し気を遣うが、十分に対応できる範囲だ。


 避けられるのは想定内だったようで、ルミナリアに焦りはない。 放つと同時、残った水弾を引き連れ、一直線にこちらに向かってくるルミナリア。

 ポニーテールがリズムよく揺れ、軽快な足音が聞こえる。

 

(ふむ……もう少し距離を取って戦うと思ったが、接近戦か)


 警戒しているのかもしれないな。

 さっきの俺の魔法を見て、遠距離の魔法戦では分が悪いと判断したか?

 

 ルミナリアとの距離が零に近づいて行く。

 

(……速いな)


 俺やリーゼならともかく、並の奴では目で追うのも困難な速度。

 まぁ仮にも古龍、身体強化すればこれくらいのスピードが出せるのは予想している。

 だから俺が警戒しているのは、それよりも……ここからだ。


(まさかのグラップラー(格闘スタイル)じゃないよな?)


 だとしたら予定外の戦闘スタイルだが。

 彼女の手にはなんの武器も握られていない。

 見た目で勝手に決めつけるのは良くないんだけどな。

 どんな戦いかただろうと彼女の自由だし、文句を言うつもりはない。


 ただ、普段清楚な印象の彼女だからギャップみたいなのがある。

 なんにせよ、この距離なら余裕で避けられる。



 ……と思った、次の瞬間。


 彼女の周囲に展開されていた『水弾』が手元に集まっていく。

 そして……。


「……む」


 彼女の手には水の槍が握られていた。

 徒手空拳で向かってきたかと思えば、一瞬で武器有りへとシフト。 球形から槍形に、水の形状変化の流れもスムーズで、タイムラグがほとんどない。

 

 当然、間合いの計算が狂う……が。


「甘えよ……」


「っ!」

 

 隙ができないように、体を捻って、ルミナリアの突きを最小限の動きで回避する。

 

 わずかに、驚いた表情を浮かべるルミナリア。

 残念ながら、そう簡単にはいかない。

 ……何かあるとは思っていたからな。


 突きを繰り出した後、前傾姿勢で無防備になるルミナリア。

 

「……隙だらけだぜ」


 とは言ったものの……どうしようか?

 あまり乱暴な攻撃を仕掛けるのもなんだしな。

 とりあえず、拘束でもしておくか。


 抱きしめてもセクハラとか言われねえよな、今回は。

 そんなことを考えていると……


 今度は水の槍の先端が変形し、俺の背中を回り込むように水がぐるりと伸びる。

 更に俺とルミナリアの間を遮るように、水盾(ウォーターシールド)


「そういうことね……」


 彼女の戦闘スタイルの一端を理解する。

 今度は水の鞭、水の盾か。

 魔法で作った水の武器だからな。

 自由に形状変化できるなら、槍に拘る必要もない。

 

 彼女の周りにプカプカ浮かんでいる水弾は、攻撃、防御といつでも使える水のストックってところか。



 ……感心している場合じゃないな。


 黙って拘束されるわけにはいかない。

 一撃でも貰ったらアウトってルールだからな。

 

 鞭に拘束される前に、上に大きく跳躍して回避す……


「……あ」


 まただ……飛んで失敗に気づく。

 つい、翼があった頃の癖でジャンプしてしまった。

 今の俺は空中で身動きを取る手段がないってのに。


(が、学習しろよ……俺)


「もらいました!」


 彼女はそんなミスを見逃すほど甘くはない。


 空中で無防備な俺目がけ、ルミナリアの『水弾(ウォーターボール)』が連続で飛んでくる。

 模擬戦だし、あの威力なら当たっても痛いで済むけど、そういう問題でもない。


 我ながら、ちと反省せねば。

 ラザファムの時も痛い目みたけど、長年の癖みたいなのはなかなか抜けない。

 あの時もリーゼに余計な心配をさせてしまったからな。


 どうにか、目の前の攻撃を避けないと。


「ぐっ!」


 生成した自分の『水弾(ウォーターボール)』を胸にぶつけて、軌道修正、強引に空中移動する。

 ルミナリアが放った『水弾(ウォーターボール)』が、俺がさっきまでいた場所を通過していく。


 も、もうちょっと弱めの威力でよかったな。

 ルミナリアの『水弾(ウォーターボール)』を回避するために、俺の『水弾(ウォーターボール)』でダメージを受ける。

 

(我ながら矛盾しまくりの行動だ……)


 何がしたいのかよくわからんが、気にしたら負けだ。

 実戦ならやらんが、今回はルミナリアの攻撃を全部回避するのが勝利条件の一つなので。

 そう、無理矢理自分を納得させておく。


 どうにか避けたが、依然ピンチだ。

 攻撃の失敗を悟ったルミナリアが、俺の態勢が崩れた今のうちにと、着地点目がけ、猛スピードで駆けてくる。



「……っぶねぇ」


 だが、結局それも失敗に終わる……

 着地と同時に後ろに跳躍し、距離を取ることに成功。

 無事回避に成功する。

 

 あ、危なかった……焦ったぜ。


 とにかく、安易に上に飛ばないよう注意しなければ。

 平面で攻撃全部避けるつもりでいこう。




 再び、ルミナリアの攻撃が始まり、それをひらすら俺が必死に避ける時間が続く。


 互いの距離感などに応じてルミナリアの水が適切な武器に変化する。

 近距離では剣、中距離では槍か鞭、遠距離では矢、水弾を射出。

 自由自在に形状変化する水。

 時折、『水弾』が俺の背面に回り込んで死角から飛んできたりするが、魔力感知を使えば目に見えなくても、水弾の位置を正確に把握できる。

 おかげで、どうにか回避可能だ。


 こ、これ……相当、神経使うぞ。

 ファラの街の訓練で複数の衛兵とトリスを相手にして、似たようなことをやったが、それに勝る難易度だ。


(まったく……相手は一人だってのにな)


「これが最強種の一角か……この年でおかしいだろ」


「それならいい加減っ、あ、当たってほしいんですがっ!」

 

 ……それとこれとは話が別だ。わざとあたる理由もない。

 接待みたいな真似したらルミナリアは不機嫌になるに決まってる。




(なんか新鮮だ、こんな戦いは)


 ふとそんなことを思う。


 これまで戦ってきた古龍はどちらも龍型だった。

 溜めブレスのぶっ放しとか、全体攻撃多めの大味なイメージが強かった。

「喋るな、問答無用で死ね」って感じで、あれはあれで面倒だったけど。


 水を自らの手足のように操るルミナリア。

 この辺のセンスは水龍という種族的なものだろう。

 俺も水魔法は得意だが、ここまで緻密なコントロールはできない。

 もしできたら、水流操作すれば海でも簡単に泳げて問題解決なんだけどな。


(地上でも戦えるというだけのことはある)


 こういう読み合いというか、相手や状況に合わせて武器を変える、変則的な戦いかたは龍形態で身につく技術ではない。

 まだ若いはずだが、相当、修練を積んできたのだろう。

 水真龍である母親にかなり鍛えられたって話だしな。


 俺は心の中でルミナリアに称賛を送る。

 だからって、花を持たせるような真似はしないけど。


「……あ、当たらない! 後ろに目でもついてるような」


「まぁ似たようなもんだな」


 息を荒げるルミナリアさん。

 まぁ空振りばかりだと疲れるわな。

 今のところ全部回避に成功している。


「……初見で全て躱されるなんて」


「最初で仕留められなかったのはまずかったな。大分動きに慣れてきたぞ」


 とはいえ、結構危なかったけどな。

 

 ぶっちゃけ、自爆とはいえ一発は貰ったようなものだ。

 自分で提案しといて何だが、ここまで回避に神経使うと思わなんだ。




「よ、よくまぁ魔法もほとんど使わず、あれ全部避けられるもんね……多分何発か貰ってるわ私」


 丁度後ろで見ていたリーゼが感心したような呆れたような声を出す。



 ルミナリアの戦いかたを考察する。

 確かに、ルミナリアなら自分の魔法で武器を作ったほうがいいだろう。


 余程強力な武器じゃなければ、自分で作った武器のほうが性能は上だ。

 まぁ、それについては俺も同じなんだけど。

 武器を持って戦闘する姿が想像できない。


 剣から槍、槍から鞭といった具合に自由に水の形状変化が可能なら、武器を変えるごとに水を生成する必要もない、故に魔力消費も少ない。

 それに、一から魔法で武器を生成するよりも早く武器チェンジできる。


 とはいえ、戦ううちに欠点もいくつかわかってきた。

 戦法と言うよりは彼女自身のだけどな。

 

 まず、作った水弾全てを同時に操れるわけではなさそう。

 ストックの十個のうち精々半分の四、五個ってところか。

 あれ、全部縦横無尽に動き回るとしたら、さすがに魔法も使わないと防げない。


 それに、一度遠くに射出した水矢や水弾はコントロールを失う。



 他にも……

 

「こ、今度こそ!」


 当たる気配を感じない故、焦ったのか、攻撃が少し雑になってきた感じがする。

 矢継ぎ早に繰り出してくるルミナリアの攻撃をとにかく避ける。

 

(ぼちぼち攻撃に移るとしようか)


 変幻自在で、遠距離から接近戦までこなすこの戦闘方法には欠点もある。

 ルミナリアは水だからこそ、制御ができるのだ。つまり……


「おらよ」


「え?」


 ルミナリアの生成した水の武器に干渉しちまえばいいのだ。


 ルミナリアの水の武器が俺に当たる直前。

 俺の土魔法を彼女の水魔法に混ぜる。

 二つが混ざればどうなるか……当然。

 

(泥になる)


 二人の共同作業で合作の泥が完成する。

 地面に泥が落ち、ビチャッと音をたてる。


「…………はい?」


 間の抜けた声を出して、唖然とするルミナリアさん。

 こんな方法で対処する相手なんて今までいなかったのだろう。

 師匠であるはずの母親は水龍だしな。


 俺は簡単にやってみせたが、実際は迫りくる武器速度も相当なモノだし、ピンポイントでそこに、土魔法を当てるのは困難を極める。


「混ぜればこうなる。当然の結果だ」


「だ、だからって、こんな……い、一瞬で?」


 水魔法のコントロールならまだしも、単純な魔法の発動速度は俺のほうが格段に上だ。

 俺が何年戦ってきたと思ってる。

 まだまだ若い奴には負けしない。


「さて、そろそろ俺から仕掛けさせてもらうぞ」


「くっ!」

 

 特に反撃が禁止されているわけではないからな。


 大分ルミナリアの動きにも慣れてきた。

 形状変化する水の武器による攻撃は厄介だ。

 

 だが、本人は少し動きが正直過ぎる。

 強いが、現時点では親父さんほどではない。

 彼女は今人化状態なので、単純な比較はできないけど。


(……将来的にはすさまじいことになりそうだけど)


 変化する水の武器はともかく、ルミナリア自身はわりと動きが直線だから読みやすい。

 普通なら水の変化に気を取られて、本人の動きを観察する余裕なんてないだろうが。


 つまりまぁ……なんだ。


石の鎖(ストーンチェイン)


「んぐっ!」


「……足下がお留守だってことだ」

 

 地面から生えた石の鎖がルミナリアの右足に絡みつく。


 足を取られて、ビタンと体を地面に打ち付けるルミナリア。

 ちょっと痛そう、心が痛む。

 まぁ訓練の範疇ということでこれくらいは許してくれ。

 



 勝負が決着したと見て、リーゼがこちらに歩いてくる。


「あの鎖……解けないのよね、かったいのよ」


 経験者は語るというやつか。

 そういや、ファラの街のトリスの騒動の時、リーゼに使ったな。


 あの時のリーゼの拘束された姿は俺の目に今でも焼き付いている

 ボディラインがそれはもう、くっきりでていましたね。



「さて、これで……」


「……まだです!」


 もう勝負は決したと思ったら……


 その目はまだまだ、やる気に充ちている。

 結構な負けず嫌いみたいだな。


 その気概は買うが、ここから何かできるのか?


「……ん?」


 ルミナリアに右足に魔力が集中していくのを感じる。


「あああぁっ!」



「お、おいおい、まじかよ」


「……うそ」


 少しずつだが、鎖にヒビが入っていく。

 ただ意地を張っていたわけではなかったようだ。


 俺の『石の鎖(ストーンチェイン)』を自力で解くとはな。

 あの鎖、街でリーゼを束縛したのと同じくらいの強度があるんだけどな。


 ピシピシと悲鳴を上げる鎖、もうじき壊れそう。

 リーゼとルミナリア、二人が戦ったら、結構いい勝負になるんじゃないだろうか?


 まぁ……それはそれとして。


「追加だ」


石の鎖(ストーンチェイン)』、『石の鎖(ストーンチェイン)』、『石の鎖(ストーンチェイン)』、『石の鎖(ストーンチェイン)



「ぐっ!!」


 ルミナリアの四肢に追加の鎖が絡みつく。

 これで完璧に降参コースだろう。


「……く、空気読みなさいよ」


「ん、んなこと言われてもよ」


 ルミナリアを完全に拘束して、一応の決着だ。

 

 

「さすがにこんだけ拘束すれば動けねえだろ」


「ん? 私のとき、もっと酷かったわよね」


「……」


 それはお前、どさくさで鎖で(おっぱい)を余計に縛るためだ。


 ……怖いので真実は口には出さないけどな。


 魔法による間接痴漢。

 ばれなきゃ罪には問われない。


 

 そんな感じで模擬戦は一先ず決着した。

 




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