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2・遊園地 part1

 ベッドの上には、涼しげな色のボーダーの7分丈と花柄のワンピースが広げられている。


「さて......どっちが好みなのかな」


 スラッとクールな印象なら前者。

 キャピッとキュートなら後者だ。

 というかどんだけ楽しみにしてるんだ私!? キャピッとか柄でもない!

 ギャルか。

 待ち合わせにはまだ2時間もあるのに今からこんなんじゃ、後々心配になる......

 いやでもまぁ、デートだし。

 この歳で初デートって考えただけで結構心に来るけど、それ以上にわくわくする。

 はたして、浅木さんはどんな格好をしてくるのか。背が高いからパンツとか凄く似合いそう。

 そして私は何を着ていこう。

 ニヤニヤしながらそんなことを考える。

 亜季が見ていたら、「何1人で笑ってるの気持ち悪い」とか罵倒されそうだなぁ......

 まぁとりあえずとして、朝御飯食べようと思った私であった。




「うわわわぁぁぁぁぁーっ!!!」


 走る。

 通行人なんて知らないよ。

 ただただ全力疾走。

 何故かって?


「遅刻だぁぁぁぁぁ!!」


 なんともう15分も過ぎている。

 ご飯食べたあと、丁度よく気持ちいい部屋で眠ってしまった私は、30分くらい前に目覚めたのだ。

 本当に私ってやつは............なんてどうしようもないんだ。

 結局ワンピースで来てしまったので、とてつもなく走りにくいし。

 呆れられたらどうしよう! 多分立ち直れなくなっちゃう。


「はぁはぁはぁ......あっ!」


 居た! 浅木さん居たよ!

 浅木さんは噴水の淵に座りながら待っていた。

 急いで駆け寄ろうとして、立ち止まってしまう。

 だって、浅木さんが、なんか、輝いて見えるから。

 少し上を向いているその表情はとっても格好よくて、通り掛かる女性はついつい見てしまっていた。

 そして服装。

 細身のパンツに鮮やかな青のシャツ。それだけなのに凄く似合っていて、不思議だなぁ。

 見とれていると、浅木さんがこっちに気付いて駆け寄ってくる。


「月音!! なんだ。来ないかと心配しちゃった」

「あ、ごめんなさい」


 これは反省しなければ。


「立ち止まって何やってたの?」

「え......っ!?」


 言わなきゃいけないの!? 恥ずかしいですよ!

 カーっと顔が赤くなるのが分かる。


「まぁ、なんと言うか......その......見て......ました............」

「ん? 何を?」


 あ、わざとだ。

 顔がにやけているし、何よりからかっていることを隠していない!!


「ちょ、ちょっと!」

「くくく!! ごめんごめん」


 むー。本当にもう......

 呆れた私はそこで気付いた。


「そういえば。遅れてごめんなさい」

「ん? あ、あぁ。大丈夫だよ。そんなに待ってない」


 そうなのか、良かった。

 心の罪悪感は少しだけ引いてくれた。

 浅木さんは私に手を近づけて、


「行こうか」


 そして私の手を握る。

 あぁ恥ずかしい!! こんなイケメンと手を繋げる日が来るとは......

 私達は、駅へと歩いた。

 その間私が下を向いて顔を隠していたのは言うまでもない。




「うわー! 結構いるねー!!」

「まぁ休日だしね。家族連れも多いな」


 件売り場は行列を作っており、中まで混雑している模様。

 それで夏日よりだから暑いのなんの。熱中症には注意しなきゃな。

 なんて考えていたら、目の前に小さな女の子が走ってきた。


「お母さんっ」

「うぇ!?」


 私の裾をギュッと握り、女の子はそう言った。

 お、お、お母さん!? 私!?

 うろたえる私に苦笑いしながら、浅木さんは優しい笑顔で女の子に問いかけた。


「お母さんは違うよ。 どうしたの? はぐれちゃったの?」


 こう言うとき、「迷子なの?」と聞くと変にプライドが働いて子供が騒ぐ事があるらしいと、テレビで聞いたことがある。

 浅木さんは知っていたのかな?


「お母さんっ!!」

「あらら」


 だが女の子は私をお母さんだと言い張る。いや、これはこれで結構恥ずかしいものだよ?


「優美子ー!!」


 と、そこにこっちに走ってくる女性。

 私達の前までくると、女の子の手を握って頭を下げる。


「すみません、うちの娘が」

「あ、いえいえ! 可愛い娘さんですねっ!」

「ええもう本当に。やんちゃ盛りで大変です」


 うふふ、と笑顔を浮かべて女性はそう言う。


「お二人はカップルですか?」


 お母さん!? 思わずそう叫びそうになり、慌てて口のなかに押し込む。唐突に何を......


「はい」


 浅木さんが答える。


「まぁ! まだまだこれからね!!」


 何が!?


「じゃ、お邪魔しちゃ悪いから」


 本当にすみません。そう言って去っていく彼女の後ろ姿を見ながら思う。


「......子供欲しいなぁ」


 柔らかくて純粋で。何よりあの笑顔!! なんだか今の一時でとてつもなく癒された気がする。

 私、子供好きかもしれない。

 横を見ると、浅木さんが頬をかいてそっぽを向いていた。

 ん?


「どうしたんですか?」

「...............なんでもない」


 顔が赤いような気がする。浅木さんまさか、熱中症じゃあないよね......

 なんて考えて、私は馬鹿だったことを再確認。


「子供......欲しいんだ?」

「っ!? っ!?」


 あー!! あー!!! 穴があったら入りたい!!


「ちょっ! ち、違......くはないけど、ちょっと誤解があってですね! た、単純に子供が可愛いなってことでですね!! 他意はないと言うか!」


 もう何なのだろう。私はなんでこんなに慌てているのだろうか。

 そんな私を見て、浅木さんは。


「くくくくくくっ!!」


 大爆笑かよ!!


「いやー! なんで月音はこんなに面白いんだろうな~」

「むぅ」


 頭をポンポン叩くのを止めて欲しい。一応、人前。


「まぁそう言うところが可愛いんだけど」


 カァッと体が熱くなる。顔には火が灯り、握る手にも力が入りそうだ。


「じゃあ行こうか」


 そう言い、浅木さんはずんずか列へと向かう。

 本当に人の気も知らないでもぅ。

 でも私も、浅木さんのそう言うところが好きですよ。

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