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異世界勇者は速度と拳で無双する  作者: 山科碧葵
『異世界召喚』編
1/93

第一話「テンプレ召喚と異世界」

 現代日本。平成時代サブカル文化の代名詞である秋葉原に、一人の少年が現れる。

 真っ白なシャツにグレーのズボン。典型的な高校生の制服姿で、某有名アニメ店から退店した。


 沈みかけた太陽の光は閃光のように眩しく。紅鮭のような朱色に輝く夕日を照らし、都内最大の電気街を華麗に彩っている。


 このまま日が落ちれば、妖艶な闇に思い思いのイルミネーションを照らす、煌びやかな摩天楼が浮かび上がることだろう。

 夕暮れから深夜とは、街が一番綺麗に見える時間帯だ。

 闇夜に照らされ、可愛らしい女の子との淡い夜を過ごす。――朝や昼間には味わえない至福の時である。

 愛する“貴方”と二人きり。誰もが一度は夢見る情景だろう。


 だが現実、そう上手くはいかない。想い合う二人だけの世界など、考えたところで時間の無駄だ。





 ――三人目。


 少年が店を出てから、メイド服を着た女性が三人も前を通った。

 こんな光景、普通では無いのだろう。オタク日本と呼ばれたこの世界でも、やはりサブカルチャーは一般市民には敬遠されるのだ。

 だが、秋葉原(ここ)ではそれが認められる。自分が求める物を探求し、さまよい、そして到達する。全ての始まりの場所。


 全ての需要(ニーズ)が許される街。


 こう呼んでも過言では無いだろう。日常から批判された者たちが集い、その趣味を公然と晒しても誰にも文句は言われない。



 少年――秋葉神保(あきばじんぼ)もその中の一人である。

 両親と兄三人、家族全員がオタクという“普通”という言葉からは世界一かけ離れた少年であり、幼少からの生活環境のために彼もその色に染まってしまった。


 だが彼には、通常のオタクとは一線を画している特徴――能力がある。

 兄三人からの教育により目覚めた全オタクの憧れとも呼ばれる、いわゆる主人公能力。

 半強制的な特訓により目覚めた彼の能力。日常生活には不必要極まりない、まさに“無駄”な能力である。


 父親行きつけのメイド喫茶にて、十名のメイドさんに囲まれて毎日のようにスマイルの特訓をした。

 何やら『自然な笑顔を作る』だとか言われた気がする。

 一番上の兄が連れてきた『ゴッドスマイル武田』と『アルカイックスマイル本田』という女性に、一昼夜作り笑顔を見せられたり。

 大雪の中『女の子の頭を撫でるための優しい手を作る』と言われ、一晩中お地蔵様の頭に降り積もった雪を撫で落としたこともある。

 母が言うには『かさじぞう』のお爺さんのような、温かい手を手に入れるためらしかった。

 主人公とは頑丈でなければならないと言われ、カミジョー拳法なる右手のみで闘う戦闘スタイルを身につけさせられた。

 右手と左手で握力が30以上も差ができた。

 だが平凡な日常生活ではそんな物何の役にも立たない。


 女の子の優しい声のみを排除する『難聴』

 女の子の誕生日を絶対に忘れず記憶する『記憶力』

 逆に幼少時の幼馴染との結婚の約束を忘れる『都合の良い記憶』

 普段は目まで前髪がかかっている暗い人なのに、笑顔を見せると前髪が消え去る『ニコポ』

 別称マジカル・ハンドとも呼ばれる、生物の頭を撫でただけでトリコにする『ナデポ』


 気が遠くなるような教育の結果。彼にはそのような能力が付加された。

 ついでに可愛らしい幼馴染まで用意されるという。まさにオタクの憧れであり、主人公の鑑。




 ――五人目。


 五人目のメイドさんを見送ったところで、神保は背後からトンと肩を叩かれた。


「お待たせっ!」

「萌、遅かったね」

「だってぇ~、ポストカードプレゼントって書いてあったんだよ! これはもう買うしかないじゃん」


 魔法少女なアニメキャらがデカデカと印刷された袋を両脇に下げ、萌と呼ばれた少女が某アニメ店から嬉しそうに退店する。


 何を隠そう彼女が神保の幼馴染であり、結婚を約束したいわゆる『俺の嫁(オレノヨメ)』なのだが、彼女もまた真性のオタクであった。


 父親がエロゲー会社の原画家であり、母親はアニメ雑誌のイラストレーター。

 唯一の姉は真性腐女子で名の知れた同人作家である。

 絵に囲まれた生活をしていれば仕方無いことなのだろうが、彼女が好きなのものは、西洋彫刻のような筋肉美や超能力を具現化したバトル系だ。

 ちなみに苗字も『代々木(よよぎ)』であり、幼少時から『某アニメ学院にご入学なさるのですか?』と散々聞かれたという。





 二人は並んで秋葉原の街を歩く。

 日は落ちて、薄暗い街に色とりどりのネオンが妖艶に浮かびあがる。

 幸せそうに寄り添う二人。秋葉の路地裏でこのようなことをして、通りすがりに顔を合わせるオタク共に、呪い殺されそうな勢いで睨みつけられるが。

 それは日常茶飯事だ。神保も萌も、そんな小さなこと気にしない。


「神保、今日はあっちから帰ろう?」


 萌は人通りの少ない脇道を指差した。

 とくに深い意味があるわけでは無い。ただ萌は、たまにこうして行動に変化を付けるのだ。

 普段と少しでも違うことをすれば、違った人生が見えてくるかもしれない。


 高校生にしては中々詩的な事を言うな。などと思ってはいけない。

 単に異世界召喚やス○ンド能力が開花しないかな。程度の可愛らしい願いである。


 神保は前髪に隠れた目を向け、フッと口元だけで肯定の合図をした。

 そんな神保を見て萌は「にへり」と笑い、脇道へと曲がったのだが――

 


「え? 何これ」

「これは……召喚ホールか?」


 秋葉原の路地裏。他に何の変哲も無い普通の電気街。

 普段と違う行動を起こしたら、本当にファンタジックな世界へと引きずり込まれた。

 目の前に広がる闇のように黒い穴。禍々しい雰囲気を醸し出しながら、虹色に煌くネオンのような光を秋葉原の街に放出している。

 二人はサブカル文化の天才であり、神の落し子と言っても過言では無い。

 この状況だけで、凡人のようにパニックに陥ることも無く。この奇妙な黒い穴が異世界からの召喚ホールだと直感的に理解した。


「うわぁ! でしょ、でしょ? やっぱり普段と違うことすると、異世界に召喚されるんだよ!」

「その理屈はアレだけど、確かにこれは魔術師が作った召喚ホールだろうな」


 まさかここに“何か”が召喚されるわけでは無かろう。

 もしそんなことになれば異世界召喚では無く、突如現れた奇妙な怪物(モンスター)との現代ファンタジーになってしまう。

 数年前は爆発的に流行ったようだが、それは置いておいて。


 神保はフゥと溜息をつくと、召喚ホールへと一歩近づいた。


「俺は行こうと思う。グズグズして、他の生物が召喚されてしまっては元も子も無い」


 二歩。三歩と歩き出した神保の腕を、萌はギュッと抱きしめる。


「私も行く。神保は選ばれた勇者になるの、それで私は神保の慎ましく良きパートナーとして、永遠に尽くすわ」

「まるで結婚の挨拶だね」


 二人は両手を繋ぎ合って向かい合う。お互いに指を絡め合い、熱っぽい視線を交わす。

 もうこの世界には戻ってこれないかもしれない。


「萌。怖くないか?」

「大丈夫。神保と一緒ならどこだって怖くない」



 深く深呼吸をしてから。二人は一斉に、闇のように黒い穴の中へと飛び込んだ。

 この世の全てを白く塗りつぶせそうなほどに強烈な光に包まれながら、二人はこの世界から存在を消し去った。





 奇妙な黒い穴は消え去り、何事も無かったように秋葉原の時間は過ぎて行った。




 ◇




「キマシタワー!」 


 目の下に澱んだ紫色のクマを作り。

 もう何日も風呂に入っていないと思われる、山姥(ヤマンバ)のようにボサボサの髪を振り乱す。

 緑や赤の液体がベットリくっついた白衣を着込んだ少女は、ゴミだらけでお世辞にも綺麗とは言えない薄暗い部屋で。眼球にヒビが入りそうなほど充血しきった目をギョロギョロさせながら召喚魔法陣を凝視している。


 彼女はとある異世界の召喚魔術師であり、非リアだった。

 別に容姿が醜いわけでも、性格が酷く悪いわけでも無いのだが、この世界では異世界のアニメにハマる(通称アニオタ)が非常に嫌われるのだ。

 彼女は超絶なアニオタであり、アニメ関連の話なら一週間ぶっ続けで喋り続けられるだけの話題がある。


 だが彼女だって、好きで異世界アニメにハマったわけでは無い。

 環境が悪いのだ。閉め切った部屋に閉じこもっているため、人と接する機会も無く。一人暮らしのため、この自堕落な生活に文句を言う人間もいない。

 はっきり言ってしまえば自業自得なのだが、大抵の人間はここまで堕ちると自分が不幸なのは他人のせいだ。と、言い出すものなのだ。


 彼女が異世界召喚を決行した理由。それはただ、男の子の友達が欲しかったという理由だけだった。

 だがこの世界では自分の趣味を受け入れて接してくれるような男の子なんて都合の良い人間はいない。

 だがある時、彼女はある事を知る。

 異世界のニホンという国の人間の培った歴史と、彼女の生息する世界の歴史がそっくり同じだったのである。

 渡来人に米を教わり貴族が政権を持ち、武士が戦乱の世を支配して世界大戦に巻き込まれる。


 これがこの世界の歴史であり、この国の全てである。

 違うのはこの世界では科学の代わりに魔法が成長したこと。それと戦争に負けても、未だに戦争をやめないことぐらいである。

 だが、言語まで全く同じという都合の良い世界は、他に探しても見つけることが出来なかった。

 流石の魔術師でも言語改変までは干渉できないので、研究により発見したこの世界から男の子を一人召喚することに決めたのだった。



「男の子男の子男の子ぉぉぉぉ!」


 彼女の精神テンションはもうMAXを通り越し、温度計なら液体が溢れ出ている状態までアゲアゲであった。


「ヤバいヤバいヤバいよぉぉ! こんなボサボサな格好で初対面とか大丈夫かな? ちゃんとお風呂入っとこうかな。ちょっとくらいここから離れても大丈夫だよね?」


 長年人と喋っていないためか彼女は頭の中で会話できず、思ったことをブツブツと口に出してしまうクセがある。

 このクセも男の子から避けられる要員となっており、必死に直そうとしてはいるのだがどうしても出来ない。


「とっ! とりあえずお風呂に入ってきますっ! 魔法陣! 気合と根性で頑張っていてくださいね!」


 彼女はその場で着ているものをバサリと脱ぎ捨て、タオルも何も持たずに自室の横にあるお風呂場へと駆け抜けて行った。





 神保と萌が出現した場所は薄暗く、妙な臭いのする部屋だった。

 カビ臭い臭いが鼻の奥を突き、思わず咳き込んでしまう。

 広い。確かに広いのだが、壁を囲うように家具や荷物が並べられ、床には文字通り足の踏み場が無いほど物が散乱している。

 はっきり言ってしまえば、汚らしくて狭い『典型的な片付けられない人の部屋』である。


「汚いな。だけど、ここ本当に異世界か?」


 見た感じ、家具や塗装は現代日本と大して変わらない。暖炉やレンガなどのテンプレ的ファンタジックなものはこれっぽっちも存在せず。

 神保と萌はオタクの嗜みである“ペンライト”をポケットから取り出して、辺りを照らした。

 ハエがとまったカップ麺の容器や、乱雑に積まれた雑誌のような書籍が床中にぶちまけられている。

 だが、大切な物なのか古い書籍だけは本棚に仕舞い込まれ、理科室にあるような実験器具は綺麗に机の上へと並べてあった。


「とりあえず、漁ってみるか」



 二人は魔術師の部屋を物色し始めた。

 魔術師がいるかいないかは関係無い。

 それよりこの世界の言語や魔術の進化論などの書かれた書籍を探す方が先であり、異世界にはそういった書籍があるのが絶対だと信じている。

 床中に散乱した物をひっくり返し、空き巣も驚愕の行動力で部屋を乱雑に荒らしていく。

 萌は壁の隅に積まれた小さな箱をひっくり返すと、中から大判サイズの書籍が転がり出てきた。


「神保! あったわ、これ本じゃない?」

「マジか! 萌、こっちに持ってきてくれ」


 ブックカバーのついた書籍を萌が神保の元に持ってくる。

 ペンライトを口にくわえ、顔を近づけ合って書籍を覗き込む。


「こういうのを探していたんだ」

「読めるかな? ねぇ、早く開けよう!」


 お互いに片手を握り合い、期待に満ちた眼差しを向けて書籍を開こうとした刹那。


「だあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 部屋の入口から誰かの叫び声がけたたましく部屋中に響き渡った。



「きゃあぁぁぁぁぁ!」


 萌も必死に叫んだ。

 視界に一瞬チラついた肌色。今この部屋に入ってきた人は完璧な全裸である。

 魔術師イコール男性。だと思い込んでいる萌は、何となく叫ぶことにしたのだ。


「うぎゃぁぁぁぁ!」


 神保の絶叫。

 これは萌とはまた別の叫びである。

 部屋に入ってきた全裸の魔術師に対してでは無く、今開いた書籍の中身に関してである。

 神保は昔のトラウマが蘇った。


 ――萌の家に遊びに行った日、彼女の部屋に落ちていたブックカバーつきの漫画本。


 開いた瞬間びっくりして当時の彼は思わず泣いた。

 あとになって分かったことだったが、その本は萌が姉の部屋から適当に持って来た漫画本だったらしい。

 萌の姉は真性腐女子。

 これだけ言えば、神保が見た物の中身が何だったのかの想像は大体つくだろう。


「嫌ぁぁぁ! 見るなぁぁぁ!」


 魔術師は必死に部屋の中を駆け抜けて神保にタックルする。

 衝撃で後頭部を机の角に激突させ、神保の頭からブドウ酒のようにドロリとして真っ赤な血が垂れてきた。


「かはっ……!」


 当たり所が悪かったらしい。視界が暗転し、肺から空気が吐き出される。

 頭から流れ出る血塊は床を真っ赤に彩り、大きな水たまりが作られた。

 目の前でそのような地獄絵図が繰り広げられていると言うのに、桃色の髪をしたロリ系魔術師はその光景を完全に無視し、神保の右手に収まった自身の宝物を掴み取る。


「取り返したっ!」


 見られては困る非常にアレな同人誌を取り返し、魔術師はホッと胸をなで下ろした。

 だが事件はまだ終わってはいない。突然現れた全裸の魔術師のせいで、軽いパニック状態に陥った萌は、床中に散乱した“何か”を片っ端から魔術師に向かって投げつける。


 その中に大理石で作られた灰皿があった。

 ピンクのロリ系魔術師はタバコを吸うことは無いのだが、何故か部屋に落ちていたのだ。

 萌は無我夢中でそれを拾い上げると、甲子園ピッチャーが剛速球ストレートを投げるかのように足を振り上げ、全裸でうろつく変態魔術師に向かって全力で投げつけた。


「二回死ね!」


 大理石で作られた灰皿は空を切り見事魔術師の後頭部に炸裂した。

 トドメの一発が華麗にクリーンヒットする。


()っ……!」


 目の前が暗転するほどの衝撃に、肺の中の空気を根こそぎ吐き出す。

 視界はグラつき、目の前に火花が散る。

 桃色魔術師は後頭部を押さえながら、体勢を調えようとフラフラと歩き――


「ガツン」


 視界があやふやだったためか、細く小さな足の小指を机の角にぶつけた。

 じわじわと溢れる涙。そして空間が歪みそうなほどの断末魔のような絶叫。

 魔術師は小指を両手で握りながら、ピョコピョコと飛び跳ねる。

 両手で小指を押さえているせいで、魔術師の手からアレな漫画本が離れた。

 そのまま開きっぱなしになっていた召喚魔法陣の上を漫画本が通過し――


「にゃぁー! 私の宝物ぉ!」


 悲痛の叫び声が部屋に響いたがもう遅い。

 魔法陣により魔術師の大切な腐向け漫画は日本の秋葉原――ア○メイトの目の前へと転送された。



 魔術師は徐々に光を失っていく転生用魔法陣の前でオロオロとしゃがみこみ、もう戻ってくるはずの無いお宝同人誌を想いながら、デタラメに神に祈る。

 大切なお宝を失ったショックと、リンゴのようにプックリと腫れた小指の痛みに耐え切れず。

 彼女は無心に現実逃避を始めた。


「夢よ。そう夢……第一こんな古本に書いてあった呪術の真似事なんかで異世界から男の子を召喚なんてできるはず無いもんね!」


 身体をカクカク震えさせて絶望の表情を浮かべる姿を見て、萌はようやく魔術師が女性だという事に気がつき、ゆっくりと近づく。


「あの……あなたが召喚したんですか?」

「私は誰も召喚しておりません!」


 必死にうろたえる魔術師。

 乾ききった眼球は瞬きをする度にショボショボと潤む。

 目がギョロギョロと泳ぎ二秒に一回白目を剥き、文字通り目をしろくろさせながら萌の全身を眺める。

 そこで魔術師は初めて異変に気がついた。


「あれ? この子女の子だよね、もしかして召喚失敗? あちゃー……男の子、それも私と同い年くらいで同じような趣味を持った人にしか機能しない魔法陣を作ったはずなのになー……」


 ブツブツ口の中で呟く魔術師に、萌は首を傾げながら問いかける。


「あの……ついさっき必死に『私は召喚してません!』って無罪表明してませんでした?」


 魔術師はハッとして口を押さえる。

 またいつものクセが出たらしく、考えている内容が全部他人に筒抜けになってしまう。

 この間も日本のアニメ文化を検索中に見つけた『メ○ネブ!』というアニメキャラのカップリング妄想中に、宅配業者のお兄さんがちょうど来た。

 テンパった彼女は「メガネ男子サイコー」とか「ニーチャンメガネ似合ってんねー!」とか訳の分からない戯言(たわごと)をニヤニヤしながら垂れ流し、割とイケメンだった宅配屋さんにドン引きされた。


「それでも私はやってません!」


 必死に無罪表明する魔術師と哀れな目線を向ける萌。

 萌はもうこんなに必死な魔術師をこれ以上責める気にはなれない。

 それに萌はどっちかって言うとMなのだ。

 神保に優しくいじめられるのは好きだが、女の子を見下したりいじめる趣味はこれっぽっちも無い。

 可愛い年下な男の子――いわゆるショタだったらいじめたら楽しいかもな~とかなら思ったりはするが、そんな外道的な事を行動には移さない。

 オタクという生き物は、意外とそういうところはしっかりしているのだ。

 ただし彼女は、目の前で現実逃避をしている魔術師にこれだけは言っておこうと思っていることがあった。


「とりあえず……服着よっか?」

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