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4 『夜は更けて――』



 それは。

 幻想的な――光景だった。


 最新の魔導技術の粋を結集したかのような。

 あるいは、太古の魔法文明の遺物が未だに稼動しているかのような。


 自分の知識には及ばない何かが刻の歯車を廻している空間だった。

 近い印象を述べるならば、此処は神殿だった。


 上の朽ちた遺跡の在りし日の姿を、縮小して地下に新たに築き直したかのような。

 だが、僕が目を奪われたのは、神殿の造形ではなかった。


 僕の視線を捉えて離さないのは、紛れもなくこの地下遺跡の中枢とも呼ぶべき存在。

 この地に満ちた『力』の収束点。


 遺跡の祭壇に浮いた水晶(クリスタル)


 祭壇の下に刻まれた魔法陣は淡い輝きを放ち、周囲には大気魔力(マナ)が粒子となって、月光虫のように虚空を舞っている。


 その光に淡く照らされた水晶(クリスタル)の中で眠る少女の姿だった。



 ● ● ●



 すぅっと開いた眼差しが最初に見たのは、何かを掴むように伸ばされた手だった。


「――――?」


 寝起き特有の軽い意識の混濁で混乱する僕に、


「あぁ、起きた」


 聞き覚えのある声が振ると同時に、ぎゅっと伸ばした手が握られる。

 その優しい温もりを知っている。


 やたらと人の手を握るのが好きな彼女は、人の心情の機微を見抜いているかのようで。


 冷たく凍えた『何か』がゆっくりと溶けていくのに安心しながら、ゆっくりと意識が覚醒へと導かれていくのを自覚する。


「ミリンダ……?」


 見慣れていない天井。

 何かを求めるように伸ばされた手。


 それを握る手。

 そして、最後に見慣れた幼なじみの顔が、覗き込むように視界を埋め尽くす。


「そーよ。それで、大丈夫?」


「……ここは?」


「わたしの家の客間の一つよ」


「………どうして?」


「あちこちケガしてたあんたを担ぎ込んで、そのまま治療して寝かせたって感じよ。わざわざあんたしかいない家まで運ぶのも時間の無駄でしょ?」


「………それもそうだ。

 ………………あぁ、ようやく頭がはっきりしてきたよ」


 寝起きが悪いつもりはないのだが、眠るまでに経験したアレコレによる疲労が心身にかなり影響を与えていたらしい。


 記憶がいろいろと曖昧になっていたが――というか、ある一つの光景に他の全てが追いやられていたというべきか――ようやく眠る前の状況を頭がはっきり認識した。


「そう」


 ミリンダが握っていた僕の手をパッと離す。

 ポトッとベッドの上に落ちた手を付いて、ゆっくりと上半身を起こす。


「僕はどれくらい寝てたかな?」


「それなりに他にも疲労を溜め込んでたみたいね。かなりぐっすりだったわよ」


 微量の皮肉の込められた言葉に、僕はほんの少しだけ目を逸らす。


 ホントに彼らには隠し事ができない。

 僕としても無自覚なところまで見透かされるのは、ちょっと困ってしまうぐらいだ。


「今は?」


「夜よ。それとも、深夜と言うべきかしらね」


「なるほど、ね」


 上半身を起こそうとすると、手伝うようにミリンダが手を引いてくれた。


 いつもよりも長く寝ていた反動だろうか。

 頭の片隅に軽い鈍痛を感じたけれど、無視できる範囲内ではある。


「あんがと」


「どーいたしまして」


 僕が上半身を起こしたところで、ミリンダはパッと未練もなさそうに手を離す。


 まあ、ここで未練がましい態度を取られると僕たちの人間関係が(こじ)れるのでありがたい配慮ではある。


「何か食べる? それともあんたが寝てる間の話を聞く?」


「両方で」


 時間短縮を兼ねた提案に、ミリンダは鷹揚にうなずくのだった。

 下手な男よりも男前な態度である。


「わかったわ。じゃあ、食堂に移動してね」


「わかったよ」


 体の調子を確かめるように、慎重にベッドから降りる。とりあえず普通に動く分には問題なさそうだ。


 細かいところにダメージが無いかは、後で身体を動かして調べようと考えながら僕は客間を出て、ランプを片手に暗い廊下を歩くミリンダを追う。


「お手伝いさんとかはとっくにお休みしてるから、わたしの適当な手料理になるけど?」


「文句なんかないよ。いい腕してるくせに」


「まだまだ修行中というか、味の探求に終わりはないのよ」


「相変わらず、その向上心は尽きることを知らないね」


 元から好奇心旺盛だったミリンダは、とにかくいろんなことに興味を抱く子供だった。


 村長の娘として必要な教養を得るための勉強も早々に学び尽くしたミリンダ(当時六歳)は、身の回りの世話を任されているお手伝いさんの目を盗んで、掃除や洗濯や料理などといった家事にも精を出していたのである。


 仕事を盗まれたお手伝いさんはため息を吐きながらも、好奇心旺盛で積極的なミリンダの懇願に負けて、そっち方面の教師とならざるを得なかったのである。


 お手伝いさんからの苦情で、その事実が発覚した時の村長さんの驚きぶりは、いろいろと有名である。


 親バカな部分も多分にあったとは思うけども、それを踏まえても当時七歳の子供の所業としては確かに驚くに値するだろう。


 ちなみに、これは余談ではあるが、そんな感じで少しばかり有名になったミリンダのやや誇張された噂にユーリが興味を持ったのが、僕たち『仲よし三人組』が『仲よし四人組』になるきっかけだったりする。


 そんなこんなで、料理を趣味の一つにしているミリンダは、その頃から僕たちにお弁当を用意してくれていたので腕は確かなのである。


 ときどき、物凄い実験料理の味見役もさせられたけども。


 学生時代もヒマがあれば、街に出て食材を買いあさり、腕を磨いて錆びさせないためにとか言いながら、振る舞ってくれていたものである。


 現在はご無沙汰だが、機会を作ってはお裾分けなどをしてくれているので、なんだかんだでミリンダの手料理は馴染み深い。


 まあ、もっとも味わっているのはトールだろうけれど。


「――はい。お待ちどうさま」


 ミリンダが言うところの適当な手料理は、香茶と卵サンドと野菜サラダだった。


 寝起きの暴飲暴食はよろしくないので、適量な感じでもある。


 湯気を立ち昇らせる香茶の匂いに、今まであまり意識していなかった空腹を自覚させられ、わかりやすくお腹の虫が鳴く。


「ゆっくり食べなさいよ」


 くすりと微笑んだミリンダに促され、僕は手を合わせる。


「わかってるよ。ありがとう。そんでもって、いただきます」


「はい。召し上がれ」


 まずはサンドイッチを一口。

 うん。美味しいね。友情が詰まってる。


「とりあえず、あんたが寝てる間に目を覚ましたあの娘と少し話をしたんだけど……」


 そんな前置きをしてから、ミリンダは話し始めたわけだけど。

 実際のところ、そんなに大した情報を得られる内容ではなかった。


「記憶喪失?」


 そりゃまたベタな展開だなぁ……なんて思ってしまう。


 だが、本の中の物語であるならばそれで片付く話だが、現実に訳ありそうな少女がそういう症状に陥っていたら面倒なことになりそーな予感が湧く。


 根拠はないわけだが。


「そーみたいよ」


 そんな僕の内心を正確に読んだように、にんまりと笑うミリンダ。


 何か悪巧みしてそうな感じだ。

 これは予感ではなく確信。


「……そっかぁ」


「心当たりは?」


「ない、と言いたいとこだけど……」


「とこだけど?」


「彼女があの遺跡で眠っていたのだとしたら、もしかすると、まだ目覚めさせていい時期じゃなかったのかも知れない」


「………ふぅん?」


 要領を得ていないと自覚している僕の発言に、軽く肩眉を上げながら理解しようと咀嚼するような間を挟むミリンダ。


「何かをしたってわけでもないんだけど。

 あの状況が正規の手順を踏んだものではないのはないと思うよ」


「どちらにせよ。それはわたしたちの手に負える範囲じゃないわね」


「そーだね」


 ミもフタも無い結論ではあるが、そうであるが故にこれ以上顔をつき合わせて議論をする余地もない。

 記憶喪失の少女に関しては、当人を交えて話をするしかないだろう。


 無理をさせない範囲で。

 なので、残る懸念を一つ口にする。


「………多分、ユーリはある程度の――もしくは、全部の事情を知っていると思うんだ」


「それは同感ね」


 ミリンダも即座にうなずく。

 かつて、ユーリの案内で(・・・・・・・)訪れたことのある遺跡。


 その奥の秘められた部屋で眠っていた少女。

 それにユーリが無関係だとは思えないし、おそらくは領主様が絡んでいるのだと思うのが自然だろう。


「それで、そのユーリは?」


「頭に血が上った状態で、崩れ狩りの真っ最中よ」


「うわぁ……」


 思わず呻いてしまう。

 基本的に温厚なユーリだけど、少ない逆鱗に触れたら、逆に止めるのが困難になる。


「状況の良し悪しの判断がつかない状況で、既にいろいろと動いてしまっているわけだから、速めに情報交換をしたいんだけどね」


「連絡はつかなかったのかい?」


「途中で切れた……というか、切られた。まさにその話題を提供する直前でね。事の順番通りに話したのは失敗だったわね」


 自分の分の香茶を口にして、憂鬱そうに息を吐くミリンダ。


「なるほど。そりゃ、ユーリなら切れるわな」


 二重の意味で。

 付け加えて、その遺跡に秘されていた者に関わりがあるなら尚更に。


「なので、とりあえず落ち着くまで待つつもりよ。

 ………………一応、領主様にも伝えるように別の人に頼んでるから、そのうち向こうから連絡してくるか、直接訪ねてくるかするでしょうよ」


「まあ、そうだね。それを待つのが最善……かな?」


「個人的に動くだけの根拠と妙案があるならご自由にどうぞ。

 ただし、朝になるまでは家からは、絶っっっっ対に出さないわよ」


「わかってるよ。とりあえず、大人しく朝まで回復に専念させてもらうよ。

 ――さて、と。ごちそうさま」


「お粗末様でした。

 それじゃあ、また明日。彼女ともその時にね」


 そんなこんなで軽い食事と情報交換を終えて、ほどなく僕たちはそれぞれの部屋で眠るのだった。




 ところで。




 日常に紛れ込んだ些細な違和に、僕は――僕たちは危機感なんてものは抱いていなかったし、後になって振り返っても実際に抱く必要はなかった。


 あくまでも、『彼女』個人に関しては、という注釈が付いてしまうが。


 故に――


 この時点での情報取得の遅れが、後々の展開に大いに影響してちょっとした大騒動に繋がってしまうのだが、神ならぬ身の僕たちにそれを知る由は無かった。



 ● ● ●



 コツコツという音が、その空間にはやけに響いていた。


 それが自分で爪先を上下させているから発生している音なのだと気づくには、随分な時間を必要とした。


「………………」


 要するに。

 自分の精神状態には、あまり余裕がないということなのだろう。


 壁に背中を預けて、思索に耽っているといえば聞こえはいいかもしれないが――既に終わったことについて考えていては、それは時間の浪費でしかないだろう。建設的ではない。


「………はぁ………」


 ユーリは気持ちを切り替えるように、大きく息を吐いた。


 森の奥にある古代の遺跡。そのほとんどが時間の経過とともに森に飲まれている上に、怪物(モンスター)の類が徘徊する森の奥にあるのだから、近隣の者が近寄る可能性も極めて低い。


 そうした地理条件を鑑みた結果。


 その遺跡の隠された地下室を改修して、『彼女』を蘇生させるための安置所としたのは、先々代の――つまりは初代の――領主様とその仲間である。


 ユーリにとっては曾御爺様にあたる人物で、要は終戦の英雄だ。

 そして、その遺跡を管理するのが主な目的で、この地の領主になったのだと聞いている。


 そんな一族の仕事である遺跡の管理をユーリが継いでから二年。


『彼女』の蘇生予定日までは、まだまだ時間を必要としていたはずなのだが、まさかの緊急事態の発生というわけである。


 ため息の一つも吐きたくなる。

 『彼女』の眠っていた祭壇は、かつての面影もなく、闇の中に沈んでいた。


 ユーリでさえ、正確には把握していないが、地脈の流れを利用したある種の生命維持装置として機能していたものらしい。長い年月をかけた蘇生法の一種と聞いていたが、その効果を受けるべき『彼女』がいなくなったことで、既にその機能は停止している。


「不幸中の幸いなのは、最低限の蘇生は完了していた……ということか」


 そうでなければ、装置が停止した段階で『彼女』は死んでいただろう。

 ミリンダから聞いた話から推理すれば、聞かなかった部分も概ねの想像は可能だ。


 少なくても『彼女』は生きている。

 それは間違いない。


 その点はソランに感謝するべきなのだが、そもそも問題を起こしたのもソランということになりそうなので、なかなか複雑な心境ではある。


「いや……」


 そもそもの問題点を上げるならば、あの『崩れ』どもの存在が起点になっていると考えるのが自然ではないだろうか?


「……ふむ。そういうことにしておくのが無難だな」


 既に散々な目に遭わせた上で、処刑も確定している連中なのだから、罪状の一つや二つを上書きしても問題はあるまい。主に八つ当たりでしかないが。


 そもそもが表沙汰にするのは、非常にマズい案件なのだ。これは。


「何とか闇に葬りたいところだが、望みは薄いか……?」


 それは発生した問題を揉み消したいというわけではなく、これから起こりうる問題を発生させないための手を打ちたいがための呟きなのだが、どうにも上手くいくような気がしないのは、状況が自分の手を離れてしまっているからだ。


 ソランが関わっている以上、ミリンダやトールも首を突っ込んでくるだろう。



 そうなるとどんな形であれ、一騒動にならない方が不自然だ。



 ミリンダと話していた時に頭に血が昇ってしまったのが、致命的だったと反省する。


「とにかく、なるべく早くあの村に行くのが先決だな」


 今後の方針を決定し、いつの間にか閉じていた目を開く。

 すると――


「あらら。すっかり段取りが狂ったわね」


 声。


 たった一言を紡いだ喉の奥から発せられた音が、こんなにも耳を心地よく震わせる。

 まるで甘美な旋律で奏でられた音楽のようだ。


「………また、そうやって前触れなく現れたりして」


 内心で吐いたため息を、実際にも吐いてからユーリは、不意に出現した傍らの気配に視線を移動させる。


 ありとあらゆる全てが黄金率で形作られた一人の女性が、そこに立っていた。


 美しい。ただただ美しい。それ以外の言葉で装飾するなど無粋で、至高であるが故に陳腐な言葉でしか語れなくなる。


「いいんですか? こんなところを徘徊していて」


 ――とはいえ、ユーリからしてみれば、幼少期に嫌というぐらい弄り回された相手だ。


 どんなに美しかろうとその本性を知っているからには、一歩ぐらいは離れた立ち位置を選択したくなる。


 端的に言ってしまえば、あまり近くにいて欲しくないタイプの人ではあった。

 嫌いなわけではない。苦手なだけだ。


「私がいないと何も出来ないような育て方はしてないわよ。残り少ない懸念事項の一つが予想外の動きを見せたら、そっちの方を優先するのが普通でしょう?」


「そうかも知れませんがね」


 どうせ、本気で危ない場面にでもならない限りは、ただ高みの見物をするだけなのだろうと思っているユーリである。


 もっとも、いつまでもこの人を煩わせているのも問題なのだが。


「で、あなたはどうするの?」


「なるべく早い内に状況を掌握して、穏便な解決手段を摸索しますよ」


「ま、事を荒立てないのが正解ね」


「事を荒立てたいのは、今の世界に不満を抱いている連中でしょう?」


 平和であることが気に食わない――そんな連中はいる。

 光の中で生きることを拒むような贅沢者は、どんな時代でもいるものだ。


 そして、自分たちが少数派だからこそ、どんな手段を使ってでも今の立場を逆転させようと躍起になる。


 そのための『起爆剤』が『彼女』の中にあると妄信して。


「………………」


 非常に下らない考えだとしか、ユーリは思わない。


 本来ならば暖かな祝福とともに目覚めるべき『彼女』を、そんな陳腐な理由のために汚そうとするのならば、そんな連中には生きる価値などない。


「ある意味においては、そんな連中を誘き寄せるのに都合がいいとも言えるわね」


「かつての戦友を餌に使うんですか?」


 傍らの女性の性格を知っていながらも、非難の眼差しを向けてしまう。


「生憎と私は彼女との縁は薄いのよ」


 彼女は薄っすらと酷薄な笑みを浮かべる。


「だからといって、ただ餓えた連中の餌場に放り込むほど薄情でもないつもりよ」


「つまり?」


「頑張りなさいよ」


「やっぱりね」


 丸投げするつもり満々というわけだ。


 最初からそのつもりだったが、この人に背中を押されると、むしろ転落していくような気分になるのは幼年期のトラウマのせいだ。


「あら、丸投げするつもりはないわよ」


「へぇ……?」


 まるっきり信じていない疑惑の眼差しを向ける。


「本当よ。その証拠に、『彼女』の覚醒を待ち望んでいたあの連中に、それとなく情報を流したもの」


「ちょっと待て。早々に敵を動かしてどうする」


 速攻で頭が痛くなってきた。


 いろんな意味で段取りを台無しにされてしまったが、まるっきりの悪手というわけでもないところに彼女らしさがふんだんに盛り込まれている。


「面白くなりそうでしょ?」


「それを判断基準にされると、俺の苦労が一瞬で倍増するんだけど……」


 ユーリの苦情などまるで意に介さないどころか、彼女は嫌な感じに喜色満面だ。


「試験みたいなものよ。

 あなたとそのお友達に、『彼女』を託してもいいかどうかのね」


「いいんですか?」


「今はもうあなたたちの時代だからね。あなたたちに任せるのが筋でしょう?

 それに落第だと判断したら、私が手を出すから心配しないでいいわよ」


「それこそ無用の心配ですよ。あなたに出番を回すつもりはないですからね」


 ユーリは挑発的に、にやりと笑う。


「ふふ。期待してるわよ、坊や」


 にっこりと慈しむように微笑んだ女性の姿がゆっくりと薄らいでいく。

 文字通りの意味で、表舞台から降りて、特等の観客席へと向かったのである。


「よしっ!」


 軽く両手で頬を叩いて、ユーリは気合を入れる。

 予定外の再会はあったが、自分のやるべきことが変わったわけではない。


 ユーリは地下室を出て、外で彼を待っていた部下に撤収の指示を出す。


「さぁて――」


 友人たちを巻き込んでしまいそうな雰囲気になったのは少し申し訳なく思うが、きっと彼らは気持ちよく協力してくれるだろう。


 そんな彼らに危害が及ばないように、いろいろと調整する必要がある。


 問題は山積み。

 彼女も『脚本(シナリオ)』に関与している。


「忙しくなってきたぞ」


 だけど、そんなことは本気になった『俺たち』には問題じゃない。


「どんな風に、みんなを穏便に巻き込むかな」


 やや腹黒いことを呟きながら、ユーリは夜明けの光がわずかに差し込み始めた森の中を歩き始めた。





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