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魔族軍入隊

学舎を卒業して一週間が経った。今日は魔族軍入隊の日だ。


さて、どんな所なのだろうか。


希望は「弓兵」と出していたので弓兵が集まる宿舎にやってきた。ここで入隊演説が行われる予定となっている。


少し早めにきたらしく、自分を含めてそこには5人しかいなかった。


4人は男で一人は女で全員人間だ。


ふむ、女も弓兵・・・ね。てっきりメルコと同じく後方支援部隊に参加かと思っていたが。まあ、一人くらいそういう人間がいてもいいだろう。


そうこうしているうちに人が集まり集合時間となった。その時の人数はもう何人か分からなかった。探知した感じ最低50人はいそうだが・・・。


全員を整列させ、弓兵の部隊長らしき人が演説をする。


「君達は弓兵を志望した。弓はいい、遠距離から敵を攻撃することが出来る優秀な兵科である。また火矢を使うことによって敵を混乱させることもできよう。しっかりと練習に励んでほしい」


「しかし弓兵だからといって弓だけ扱えばいいというわけではない。まずは一週間各兵科に行き経験を積んでもらう」


噂にはきいていた。一週間各兵科にいき適性を見られるらしい。そして最も適正の高い兵科に配属されるらしいが、基本的には希望通りの兵科にいけるそうだ。


思った通り、弓兵志望は人間が多かった。非力さを弓という道具で補えるからだ。逆に魔族は剣兵や魔術師が多いようだった。見学する時間が設けられたのでざっと見た感じ思ったことだ。


───と


矢を運んでいるおじさんが目に入った。何をしているのか疑問に思っているとおじさんがこちらに気づいたのか声をかけてくる。


「新兵か?」


にこりと話しかけてきた。魔族なのに人間に優しく話しかけてくる親しみのあるおじさんだった。


こんな魔族もいるのだな。


「ええ、そうです。何をしているのですか?」


「荷台を見ればわかるが矢を運んでいるんだよ。ワシは矢を弓兵達に補給する者だ」


へえ、色々あるものだな。


「それは、お疲れ様です。しかし魔族なのにそういうことをされるのですね」


「ほう・・・」


そう言い少しおじさんは何か考えたのか


「魔族が輸送してたらおかしいか?」


「ええ、おかしいです。魔族は人間より力のある種族です。何故補給部隊にいるのですか?」


「もうワシも年だしな、前線にも出られんよ。出来る事はこれからの若き兵達を鍛えることだ」


よく分からなかった。


「何故矢を補充する係が兵を鍛えることにつながるんですか?すいませんが良くわかりません」


「全てを教えるのもつまらないな、自分で体験し考えることだ」


と言いながらも言葉を続けた。


「お前もいずれ気づくだろう。兵をどのように育て、そしてどう訓練するかと考える時になったら」


「さて、そんな時が来るでしょうか?」


素直に疑問だったので答えた。


「来るさ、お前は自ら物事を考え動ける人間だ」


どこでどう判断されたのかわからないが、おじさんはそう言った。


「何故そう判断されたのか分かりませんが」


そう言うと


「分かるさ、普通の人間も魔族も言われたらそのままはいと答える。お前のように疑問にすら思わない者の方が圧倒的多数なのだ。分からないことを分からないと言えることも才だろう」


と答えられた。


「ワシは多くの人間を見てきた。だから分かる、お前はきっと大物になるに違いない。まずは弓兵にある部署のどこかの頭にでもなるんだな」


「なれるものでしょうかね」


「なれるコツを教えておこう」


そういいおじさんはこちらに近づき耳元でこう囁いた。


「ここにいる連中はバカだ。お前は人のいい所を見極めそこだけ吸収しろ。いいか、真似をするな、お前までバカになるぞ」


そして付け加えてこういった


「いずれお前にも仕事を教えてやる、まあ期待して待っていろ」と


矢の補給だけでどうにも仕事が出来る人間に育つとは思えなかったが、まあ何かあるのだろう。


「分かりました、是非教えてください」


「ではな」


そういっておじさんは矢を運んでいった。


なにか気持ちのいいおじさんだった。魔族といえばとかく偉そうにしているイメージがあったが、あんな魔族もいるんだな。珍しい。


それからしばらくあちこちの部署を見せられ今日は終わった。


明日は剣兵の練習に付き合うらしい。剣を持たされひたすら素振りをするとのことだ。


実際に剣を使ったことはなかったのでいい練習にはなりそうだが。



等という考えは実際に特訓が始まったら捨て去った。


「剣の素振り1000回、後に走りこみに筋力をつけるための特訓。戦争の基本は体力だ」


なんとかこなしたが、きつかった。


その後夜に、メルコに偶然あった。


「どう、大変?」と尋ねられ


「ああそうだな。剣兵の練習に付き合ったがやってられん。脳筋向けだろう。そっちは?」


「こっちは農業について色々教えられた。食料を維持して配給するのが私の仕事らしいから頑張ってやらないと」


「大変だな、兵の生命線じゃないか。頑張れよ」


「うん」


と喋ってると「そこ、何をサボっているの。これから料理の時間でしょ。時間ないのよ!」と大声で女性の怒鳴り声がしてきた。


「いけない、急がなくちゃ。それじゃまた」


「ああ・・・」



メルコと別れ宿舎に向かう。特に場所は決められてないがとりあえず寝床があるので助かった。適当に開いている場所で寝て次の日に備えた。


次は早速弓部隊での練習らしい。


一体何をするのだろうな。

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