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帰宅

それからもうしばらくメルコと屋上で雑談をして帰宅。探知をし続けたが人と出会うことはなかった。


まあ、そういう時間を狙って学舎を出たし通路を選択して帰ったからだけれども。



家の前についた。何の変哲もない赤い煉瓦で出来た家。いつ見ても家自体は何の変哲もないと思うが、問題は家の中だよな・・・と思う。


さて・・・。うちに入ろうと扉を開けようとして、やめた。魔力探知に一つかかったからだ。しかもかなり大きな魔力が家の入口にある。


「なあ、卑怯じゃね?」扉の向こうにいる人間、否。「魔族」に聞こえるように声を出す。すると扉の向こうから声がかえってきた。


「卑怯?敵は待ってはくれんぞ!実戦を想定したこの家族愛がお前にはわからないのか?いいからその扉を開けるがいい」


返す言葉もなかった。はっきり言って面倒くさい。どうせ何を言っても聞かないし、開けるしかないか。


と、扉を開けた所で


「おかえり息子よおおおおおお!」


と声と共に火炎放射がお出迎え。いつも思うのだが近隣に何もないからいいけれど、いたら迷惑なんだろうなこれ・・・。


「あー、ただいま」


と、その火炎放射を全て魔術妨害によって消滅させていく。ちなみに全身に張り巡らせるのがコツで、一部でも妨害してなければ黒ずみになってしまう。良い子は危険だから真似しないように。


「って、いつまで火炎放射してんだよ!」


と、右手で火炎放射の元凶を殴る。もちろん加減してだが。ってあ、当たりどころが悪くて顔面に当たってしまった。


「いてえ、親を殴るとは何事だ!」


「魔術が発生している右手を狙ったんだけど、勢い余って顔に入ってしまったごめん」


「許さん、表に出ろ」


面倒なことになった。とりあえず玄関に荷物をおいて家の横にある修行場にいくことになった。


修行場といっても赤煉瓦で出来た大きな一室にすぎない。ただ赤煉瓦は魔術を無効化するのでいくら魔術を使っても大丈夫なようにできており便利ではあった。


「親父よ、それで一体どうするつもりだ?」


「飯まで時間もあるし、久しぶりにお前の魔術を見せてもらおうか。どれほど腕を上げたか」


背中の羽をばたつかせながら言う。


親父、父は魔族である。大きな黒い羽がその証拠だ。見た目も人間離れしているし、どちらかと言えば竜族そっくりの体型だろう。筋肉もゴツゴツしており、その辺の大木なんて殴るだけで大抵一発で折れる。


それと比べて自分はそういう筋力はない。誰が見ても明らかな体格差があるだろう。おそらく普通の人が見たら「こんなのと修行?ムリじゃない?」となって然るべきなのだが、きっとこの人にそういった所で通用しない。


何故ならば・・・


「実戦において使える魔術の学習はしてるんだろうな?」


そう、親父の口癖は「実戦において使えるか?」である。第一次アルカディア戦争を生き抜き第一線にいた者で、とにかく「実戦」を重視していた。そして実戦において体格差はあって当たり前、だから修行においてもそれは言い訳にもならないので禁句なのであった。


「さあ、どうだろうな。ここ最近試していなかったからなんとも」


「先程の魔術妨害は悪くなかった。お前、常時張ってるだろ全身に」


「親父に昔言われたとおりにしている。常に全属性の魔術妨害を張り巡らせている」


と、言った所で親父はニヤリとしながら


「嘘だな、全部ではないだろう。現に探知してるわけだろう。その属性のみは防御出来ないのが実情のはずだ」


・・・やりづらいと思った。その思いが顔に出ていたのだろうか


「やりづらいと思ったか?いいか、魔術の基本は属性の読み合いだ。こういった言葉の駆け引きも大切なのだ」


「分かっているつもりだが、親父には勝てそうにないな」


と答えた所で


「嬉しいことを言ってくれる。まあ、まだまだ負けるつもりはないから安心しろ。さあ、いくぞ」


「分かった」


そうして魔力を全身に巡らせる。特に構えはない。これは武術ではないので下手に構えると動作が鈍って魔術放射までの動きが鈍くなるのだ。


さて、一体何の魔術が飛んでくるのか・・・と思っていたら


「甘いぞ息子よ!」


なんと親父自身が一足飛びにこちらに突っ込んできた。そして同時に右足の蹴り。


「おい、これ魔術の修行じゃないのか!?」その蹴りを避けながら言うと


「いつから魔術の修行だと勘違いしていた?」


何度もやられているから驚きはしないが、とりあえず腹が立つんだよなこれ。


というわけで「本気」で反撃にうつる。


「こうなると手加減できんぞ」


親父の右足を両手で取り風の魔術発動。体重を空気のように軽くし思い切り投げた。そして着地地点を予測してそこに氷の魔術を発動、小さな氷のツララを飛ばす。そして瞬時に風の魔術を自分に発動、跳躍力を強化し一気に地面を蹴る。さらに右手に風の魔力を込める。


親父は綺麗な着地を見せ、右足を軽く飛ばしたツララに向けて振り、ツララは消滅。


問題ない、予定通りの行動。そのツララはブラフだ。相手の左を取り、右手に込めた魔力を重量に変換。そのまま右手で思い切り殴りつける。


「ぐっ・・・」 右脇腹にヒットし、よっぽど痛かったのだろう。慌てて横に飛んで距離を取った。


さらに追撃・・・、と思ったら親父が手をこちらに出してきた。


「参った、降参」


どうやら一本あったようだ。


おー、いててと脇腹をさすりながら


「てっきり魔術戦のみしかしないと思って甘く見ていた」と言ってきた。


「十分魔術戦だったろ。最後殴ったのも風の魔術応用編だし」


「ちぃ、外面に対しては魔術妨害が通用するのだがな・・」そう言いながらその場に座る父。


「ただ内面強化の魔術にも弱点がないわけでもないから多用は厳禁か」と呟くと


「よく気づいているな。例えば風の魔術で攻撃されたらお前・・・終わるだろ」


それに無言で頷いた。


そう、魔術妨害「インタラプト」は魔術を無効化する魔術である。が、それは同じ属性に対してのみ有効な手である。例えば火属性の魔術攻撃には火の魔術妨害。氷ならば氷属性の魔術妨害と対応した属性の魔術妨害をする必要がある。


それを踏まえてここでの問題。それは内面強化の魔術。例えば風の魔術による跳躍力強化している間は風の魔術妨害が出来ない。それをしてしまうととたんに跳躍力を失い、失速してしまうことだろう。だから風の魔術妨害出来ないわけだが、そこに敵が気づき風の魔術攻撃を加えてきたら?


ただでさえ加速している所に魔術の塊が直撃するわけだ。おそらく即死するに違いない。


だからこそ、である。魔術は必要最小限にしか人前では使わないし、使うにしてもばれないよう慎重に動いているつもりだ。手の内さえ読まれなければやられることは基本的にないのだから。


「不便よな、外面は常に全属性魔術妨害していれば魔術は受けない。しかしお前自身それほど強靭な肉体を持っているわけではない。むしろ人間族寄りだから力は頼れない。だから内面強化しかないとは」


「そうは言うが仕方ないだろう・・・」


生まれの問題だ、と口に出そうとしてやめた。別に親父を責めたいわけでも母を責めたいわけでもないのだから。


「まあ、お前はよく考えている方だと思うぞ」と、珍しく親父が褒めてきたので


「む?珍しい、魔族軍参謀長様が人を褒めるなんて」


「褒める時は褒めるさ。それと家において肩書きは無意味よ。1番偉いのは私ではなく母、そうだろう?」


俺はそれに笑顔で頷いた。


と───


外から「ふたりともご飯よー」という女性の声が聞こえてきた。


「噂をすれば・・・か」親父がニッと笑顔を見せながら手をこちらに伸ばしてきた。近づいてその手を取り立たせる。


「いくか、息子よ」


それに無言で頷く俺であった。














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