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プロローグ


荒野。そこはどこまでも続く荒野。地平線の彼方に、見えるものは何もない。


そんななにも無き荒野に一人。戦士が倒れふしている。

まるで死んでしまっているかのように


「・・・・・・っ」


否、戦士は死んではいない。空気の塊を口から吐き出し、拳を握りしめ、膝を突き、自分の力で立ち上がる。


「皆は、どこに」


力強い眼差しは辺りを見回し、自身の仲間を求める。しかし、ここに仲間の姿はない。


「・・・・・・」


鎧越しの体を叩き、砂ぼこりを払う。

風が吹き、転がって来た兜を拾い上げ自らの頭へ装着し、ゆっくりと歩を進める。前方に転がる盾を拾い上げ、地面に突き刺さるロングソードを引き抜き、強い瞳で前方を見つめ、剣を構える。


目の前にいる。何か黒い憎悪の塊が目の前にいる。


「姿を現したらどうだ」


言い放つ戦士の言葉に、前方の空間が歪み、一体の強烈な悪意が現れる。


「さすがだ。〔紅きビュート〕よ」


黒きマントを翻し、全身を白と黒の鎧に身を包まれた大柄な男が立つ。

その胸には逆さ十字を型どった黒き模様。その両腕には十字型の白い盾と黒い十字架のような剣。


「やはり貴様か〔闇のクロス〕」


〔紅きビュート〕と呼ばれた戦士は静かな怒りを〔闇のクロス〕と呼んだその男へと向ける。


「ワシと一戦交えるのか? なんと気の早い」


闇のクロスの口を覆っていたフェイスマスクが開放され、地獄のそこのような声が鮮明となる。人のものとは思えない白く窶れた堕ち窪んだ死人のような顔が露となる。


「言ってくれる。貴様との決着は早いほどよい」


紅きビュートは、挑発するように剣を前方に突き出し、強き眼差しで宣言をする。


「待たぬか。ワシは挨拶代わりに貴様の前に現れただけ、しばし世間話でもしようではないか」


両手を広げて呼びかける闇のクロスに紅きビュートは冷徹に、呟く。


「お断りだ」


一気に走りより、紅きビュートはロングソードを闇のクロスの喉元に突き立てる。


「フハハハッ!!」


高らかな笑い声と共に、その姿は刃が届く瞬間に、霧のように消えた。


「我々の決着は、こんな場所で着けるべきではない。近い内に、また会おうぞ。紅きビュートよ」


耳障りな高笑いが耳に残る。紅きビュートはそれを振り払うように突き出した剣を横薙ぎに振り、闇のクロスが消えた後を見つめながら呟く。


「いや、決着はすぐにでも着けるべきだった闇のクロス。〔私達〕には、この〔世界〕には時間が無い」


剣を天に掲げ、剣に力を注ぐ。彼のロングソードに〔紅き炎〕の力が宿る。


「皆に、届け」


降り降ろされた剣の炎は、五つに分かれ丸い円を描き、それぞれの中心になにかが映し出される。


それは、紅きビュートの仲間達の姿。


こちらに何かを語りかけようとする者や、安堵の表情で笑いかける者、ただ静かにこちらを見つめる者。それぞれの反応があった。しかし


「やはり・・・・・・」


その声はビュートには届かない。だが、彼らには自分の声が届いていると信じて、ビュートは仲間達に力強い宣言をする。


「皆、〔黒き炎〕の軍勢と決着を着けるぞ。我らの〔紅き炎〕を完全に取り戻し、この〔幻異〕の世界を救う時は今だ!!」


宣言と同時に炎は消失し、戦士は決意新たに歩を進める。仲間に伝わったと信じて。



~~巨城の世界にて


「皆、ビュートの言葉、確かに聞いたな」


大弓をその背に背負いし弓兵の戦士が二人の仲間へと振り返る。


「ああ、使命を果たす。今度こそ必ず」


スケイルアーマーを身に付けた戦士が力強く頷き


「行こうぜ〔エース〕。グズグズなんてしてらんないでしょ!」


隣の半裸の戦士が野性味の溢れたギラギラとしたしかしどこか無邪気さも垣間見える瞳でエースと呼んだ弓兵へと向き直る。


「ああ、〔レックス〕〔ガオ〕行くぞ!!」


彼らは走り出す。巨大な城の世界を駆け巡る。他の仲間を信じ、力強く駆け出すのだ。





~~星降る夜の世界


「さぁ、行きますかね」

軽装の戦士は身軽に立ち上がり、その頭にバンダナを巻き直し、隣の建物の天辺を見上げる。


「・・・・・・出陣の時か」


腕を組み夜しかないこの世界の空を見上げる忍び装束の戦士がそこにいた。


「おい〔サスケ〕そんなとこでなにやってんだよ! 置いてくぜ!!」


下から声を張り上げる仲間に〔サスケ〕と呼ばれた忍び戦士はため息ひとつ肩を竦める。


「ふぅ、どこにいても騒がしい奴だ」


呟くと、サスケは建物から飛び降り、軽装の戦士よりも遥か前方へと降り立つ。


「置いてゆくぞ〔イーグル〕」


「あ、ズリィぞサスケ! 最初に行くっつったのは俺なのに」


慌てて〔イーグル〕と呼ばれた軽装の戦士はサスケの後を追いかける。


夜しかないこの世界で、彼らもまた強い思いと共に駆け出す。





~~砂塵の世界にて


「待ってくれよ〔リズ〕」


杖を砂に突き刺しながら魔法使いの少年戦士は少し頼り無さげな声で前方の白いマントで全身を覆った仲間へと呼びかける。


「どうした。時は待ってはくれんぞ」


瞳だけを覗かせて〔リズ〕と呼ばれた戦士は凛とした声で後方の少年戦士へと言葉を返す。


「そんなこと言われても、足が砂にとられて・・・・・・空を飛んじゃダメかい?」


「ダメだ。戦い以外で魔力は極力使うべきではない。回復手段が無い今は特にな」


甘えた事を言う少年戦士に、リズはキツく言い放ち、先へと進んでいく。


「ま、待ってくれ! 置いてかないで! 僕達仲間でしょリズ!!」


慌てて少年戦士はよろけながらも後を追いかけていく。


「やればできるじゃないか〔フェニックス〕」


マントで隠れた口元に薄く笑みを浮かべながら、少しだけリズは〔フェニックス〕少年戦士の為に速度を緩めてやった。


「お、追いついたぞ!?」



砂嵐の吹き荒れる砂塵の世界。この過酷な大地でゆっくりと確実に彼らも歩を続ける。邪悪との決着を着けるために。






~~機械仕掛けの世界にて



歯車の軋む音が響く世界で、鷹を模した兜の戦士が槍を担ぎ、どこまでも続く螺旋階段を見つめる。

「うわ、本気でこれ登っちゃうの?」


隣の2丁拳銃を腰に携えた若い戦士がウンザリした顔で隣を見る。


「道はこの先に繋がっているはずだ。進むしかない。〔ディー〕無理ならお前は残っていろ」


淡々と槍の戦士は〔ディー〕と呼んだ若い戦士の顔を見ずに言う。


「おいおい無理なんて誰も言ってねえし! 見てろよ〔ファルケン〕頂上に一番乗りしてやる!!」


〔ファルケン〕の言葉にカチンときたのかディーはそう宣言すると全力で螺旋階段を駆け上がり始めた。


「好きにしてくれ・・・・・・直に追い付く」


ファルケンはディーの姿を眺めながらゆっくりと階段を登り始めた。



無機質な機械に囲まれた世界で、対照的な二人の戦士もまた、同じ目標のために歩みを進める。






~~凍てつく氷の世界にて




「・・・・・・」


身の丈以上の巨大な刀を担ぎ侍の戦士は凍てつく大地に立ち上がる。


「やはり俺と一緒に行く気は無いか?」


赤い剣を携えた戦士がその背に問いかける。



「〔バイロ〕俺は」


侍は呟き


「俺のやり方でやらせて貰う。ひとりでな」


その誘いを断ち、氷の大地を踏み締めながら自分の道を進み始める。


「そうか、それもいいだろうな」


〔バイロ〕と呼ばれた戦士も侍とは別の方向に歩みを進め、背中越しに彼へと伝える。



「だが〔レッカ〕! 俺達の行く道は同じだ。それは忘れないでくれ!!」


「・・・・・・」


巨大な刀の侍〔レッカ〕は何も答えずにその歩みを進め続け、バイロもそれ以上の言葉は言わず。真っ直ぐに道を進む。



凍てつく氷の世界で、異なる道を進む事を選んだ二人の戦士はそれぞれの信念を胸に、歩みを進める。







~~荒野の世界



「これで最後だ。私と仲間達が決着を着けに行くぞ。黒き炎の軍勢達よ!!」



力強き瞳に紅き炎を宿し、十二の戦士達の最後の戦いが幕を開ける。



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