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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

狩りどきストップ

掲載日:2026/05/09

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 ふんふん、このころだとイチゴ狩りにサクランボ狩りがメインになるか。

 いまどきは観光農園とかで、やろうと思えば一年中くだものの収穫ができると聞くねえ。便利だろうなあと思う反面、その季節その季節でしか味わえないもの、という実感は薄くなっていく世の中なんじゃないかなあ……と考えたりする。

 本来、獲ることができない、あるいは難しい時期にそれらを提供して儲けを得る、というのは促成栽培や抑制栽培の形で聞いたことがあるはずだ。

 うまい具合に環境を調整しながら育てていく。これは何も人間が動植物ばかりに行うことじゃなく、人間も受けていることかもしれないよ。

 ひとつ、僕の昔の話なのだけど聞いてみないかい?


 あれはGWに入ってすぐのことだったか。

 せっかくの連休だしと、友達と連絡を取り合って近くの公園で遊ぶ約束をしていたんだ。

 けれど、いざ玄関をくぐったところで早くも僕のゆくては阻まれる。

 クモの巣だ。不意打ちで顔に引っかかるこの感触、慣れている人はそうそういないだろう。

 自然界における、クモの糸のスペックは非常に高い。鋼をはるかに上回る強度を持ち、わずか0.5ミリの細さで巣を紡げば、60キロの人体を受け止めることが可能とされている。

 顔が前へ出ようとするのを食い止めるのも、難しい話じゃないだろう。とはいえ、図体のでかさというのもまた、自然界では大きな武器のひとつ。この程度の大きさでは人間の全身を止めるまでには至らない。

 僕は無理やりぶち破ると、顔全体に張りついた糸の残りをぱっぱっと取り除ける。今日は朝からずっと晴れているというのに、糸は虹色の光を放っていて妙だと思ったね。


 その不審は、公園でサッカーをはじめても続く。

 みんなとやっていたのはおおよそ15分程度だったと思う。ボールを追いかけて蹴る、という動きだけでも、確実に地表はえぐられ傷つけられる。

 そうして地面が掘り返されていくたびに、少しずつあらわになっていくんだ。あのクモの糸と同じ、虹色のきらめきがちらちらとね。

 ときに、転がっているボールが不自然に動きを止めてしまうことがあった。それはいつもボールが例のきらめきの上へ差し掛かったときだ。僕たちの足も、あそこへ触れたとたんにびったりと止められて、転びかけることもあった。

 触れると、そいつらはたちまち消え失せてしまう。靴やボールへ隠れるようにへばりついているのか、きらめきを失った姿があまりにまわりとの保護色じみていて分からないのか。

 いずれにせよ、気味が悪いということで、遊びの予定は早々に切り上げられちゃったよ。僕自身も何度か引っかかっていたし、出る時のクモの巣の件も思い出して、いい気持ちはしない。

 家が遠い子は自転車で来ている。そのうちの一人が早くもサドルへまたがって、ペダルをこぎ出したはよかったものの。


 出られない。

 四方にある公園の出口。その一方から出ようとした自転車の転がりは、その数メートル前でピタリと止められてしまったからだ。

 僕以外のみんなも、はっきり認識できただろう。自転車の前後のタイヤの設置部分。そこが両側から虹色のきらめきに挟まれているところを。そして、そこへ向かおうとする自分の身体はピクリと震えるのが精いっぱいで、それ以上は動けなかった。

 かろうじて動く視線で見下ろすと、身体をしばる極細の虹色たちが目に付く。僕たちもいつの間にか、あのきらめく糸たちへからめとられていたんだ。


 ――この糸の主がいるなら……食べられちゃう?


 そう思ったよ。

 クモの糸に絡まれるなど、エサになりにいくも同じだろう? 逃げ出すことなどかなわない状況なのだから。

 ならば、主が姿を見せて迫ってくる……という僕の想像は外れた。


 結論から言うと、この拘束は5秒と続かなかった。

 けれども、身動き取れない間で僕たちは確かに、公園の周辺をこの糸たちと同じ色をした薄い幕が包み込んだのを見た。

 アスファルトを削る音。続く破片の飛び散り。

 刃物、工具、重機械……この事態を引き起こせそうなものの影も見当たらないまま、僕たちはその異状を見届けるよりなかった。

 幕が消え去るのと、僕たちを縛っていた糸たちがなくなったのは、ほぼ同タイミングだったよ。自転車もまた問題なく漕げるようになっている。

 けれども公園を囲う形で、道路には深い深い切れ込みができていたのは確かだ。もし、あのときに動きを止めずに公園を出ていたならば、間違いなく「ちょんぱ」されていただろう。


 ああして、強引に僕たちを守らなくてはいけない存在がいる。

 理由は分からなくとも、調子こき続けるのはこっけいなのかもしれない、とは感じたねえ。

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