No,0
小学一年生。
あの時の俺の目を奪ったのは一人の女の子だった。
校庭の端っこにある木の陰でアリの行列を見て楽しそうに微笑んでいたその笑顔が焼き付いて離れない。
「ねえ、何見てるの?」
だからお友達になりたいって思ったのに……。
「朝倉くんとは短い間でしたが、明日お友達皆でお別れ会をしましょうね」
急な事だった。
入学してまだ一ヶ月だったけれど、父親の仕事の都合であっという間に転校することになってしまった。
たった一ヶ月だから大して思い出もないけれど、寂しいなって思った事は忘れない。
「またね」
お別れ会でそう笑う彼女ともう会えないんだと小さかった俺でも苦しく思って、だったら一人でもここにいたいってわがままを言いたかった。でも言えない。
「……またね」
それが俺の精一杯の返しだった。
母親は笑顔で言ってた。
「またお友達出来るよ。陽斗は良い子だもん」
でも次出来るお友達はあの子じゃない。
もっとたくさんお話したかったのに……。
後から気付いた一目惚れ。
残りの小学も中学になってもずっとずっと忘れられなかった想い人。
もうすぐ俺達は高校生になる。
何年か経てば忘れると思ってたのに、今でも忘れられないあの子。
小学生以来に帰ってきた生まれ故郷の近く。
無理だと思いはしたけれどあの子とどこかで出会えないかなって願った。
「白石 澪です。
一年よろしくお願いします」
本当に会えるだなんて思ってなかった。
でも、思い出の笑顔は彼女から無くなっていて……。
「白石さん……だっけ?」
きっとキミは覚えてないかもしれないけれど、今度のチャンスは逃したくないんだ。
「俺、朝倉 陽斗って言うんだ」
春に出会った思い出のあの子とまた春に出会えました。




