第五章 五節 提案
新生活の準備で中々更新できずでした。
読んでくださってる方、ありがとうございます。
更新がんばります
モルガンは元々、父を殺害するつもりはなかった。母であるイグレインの状況を伝え、激怒し家庭がゆっくり崩壊する状況を楽しみたかった。
しかし、父は予想以上にショックを受け呆然とした姿を見てしらけてしまった。やはり思い通りにはならないと思ったのである。
そこで、イグレインとウーサーの思い通りにさせないため急遽、父をウーサーより先に始末することにした。
イグレインに変装し、油断させたところナイフを脇腹に刺した。痛みはあまりでないがじわじわと出血し、ものの数分で死に至るように魔法で細工した。
父を刺した時、何か感情が湧くかと期待したが何も感じなかった。そう、自分を虐げた奴に復讐できることや達成した際に喜びを感じるかなと期待した。しかし、実際には無だった。そこで思ったのだ。やはり自分は半妖精になったんだなと。
人間がどうなろうが何も思わなかった。これにより決意が固まった。これからブリテンの人達にどんなひどいことをしようとも私は無でいられるなら…容赦しなくていいなと……。
モルガンは倒れた父に目を向けたが、何も感じなかった。
「……さぁ、後始末しなければ」
そう言い、部屋や父に細工を施しはじめた。誰かが殺害したという風に判明した場合、犯人探しが始まりやっかいだ。だから、ゴルロイスには自殺してもらうことにした。
自殺したかのように、遺書や部屋の荒れを準備する。そして、全ての準備が整った後、魔法でワープし城下のマーリンの家に戻った。現代でいえば、密室殺人だ。そんなことを考えながら城下のマーリン宅で寝る準備をするのであった。
翌日、主人が朝食をとるために起きてこないことを怪しんだ使用人達がゴルロイスの寝室前に集まっていた。それをみたモルゴスは不思議に思い、使用人の1人に話しかける。
「朝からどうしたの?」
「お嬢様、おはようございます。実は旦那様がまだ起きてきていなくて…皆で部屋まで見に来たんですが、部屋に鍵がかかっていて、執事長がスペアキーを探しにいっているのを皆、待っているのです」
「お父様、どうされたのかしら?」
モルゴスは不安に駆られる。すると執事長が鍵を持って来たので、解除して部屋を開ける。
そこには、血まみれのゴルロイスがベッドの側で倒れていた。近くには遺書らしいものも置いてある。それをみた、メイド達やモルゴスは悲鳴をあげる。
「こ、これは大変だ……」
執事長は走って執務室に戻り、伝書鳩を飛ばす準備をする。それは領主が死んだことを王に報告するためだ。そこから執事長は数日後モルガンが来るまでは事務作業で働き詰めになるのであった。
ゴルロイスが自殺した旨を聞いたウーサー王は、都合の良いようにことが動いたことに違和感を覚えつつも、すぐに自分の離縁や結婚、後継のことで頭がいっぱいになっていった。
「自殺か……コーンウォールには後継者はいなかったな…どうするのか…」
領主が死ぬと次の後継者が領主になり、統治を続けるがゴルロイスとイグレインの間には男が生まれなかった。よって後を継ぐ者もいない。この場合は、遺書や遺言書に書かれた内容が重視される。
まだ報告は上がっていないが、とりあえず葬式やらなにやらで忙しいはずだ、だから落ち着いたら際に状況を確認しようとウーサー王は考えたがすぐ切り替え、イグレインのことを考え始めるのであった。
葬儀は近親者のみで簡素に実施された。本来は妻、イグレインが喪主を務め執り行うがイグレインは不在のため、執事長が執り行った。娘のモルゴスは泣きじゃくり、メイド達に慰められていた。
そんな様子をモルガンは遠くから見て考えごとをしていた。次におこることを予期し対策を打たなければならないと。
葬儀の翌日にモルガンはある場所にでかけた。
そこはオークニー。ブリテンの北方にある地域だ。ブリテンの中心地とは異なる文化、戦力を持ち繁栄している。そのオークニーを統治しているのはロット王である。
ロット王はまだ未婚であり、ここまで繁栄したオークニーをなんとか存続させたいはずだ。そこをモルガンは逆手にとった。
父が亡くなり、母は別の男と再婚、姉は宮廷魔導士として王に仕える……孤独となった妹、モルゴスには新しい居場所が必要だ。
モルガンはモルゴスをロット王に嫁がせるため、ロット王と交渉することにした。
「ロット王、客人がきております」
「誰だ?」
「宮廷に仕える魔導士、モルガン様です」
「モルガン…」
数週間前に呼ばれた任命式にいた女性のことだとロット王は気付く。なぜ彼女がこんな北方の王を訪ねてくるのか理由がわからなかった。
分からなかったが追い返す理由もないため近くに警備の兵士を呼び、迎えることにした。
玉座の間に入ってきた彼女はそれはそれは美しかった。人ならざる雰囲気を放ち、まるで見透かされているかのような瞳でこちらを見ている。
歩いている様子すら美しく、見惚れてしまうほどだ。少し惚けていると彼女は礼儀正しく挨拶をしてきた。
「ロット王、突然の訪問、申し訳ありません」
「い、いや、大丈夫だ」
「ありがとうございます」
彼女は深々とお辞儀をする。
「そんなかしこまらなくてよい。そなたのことは知っておる。かの戦争を1日で終結させたと聞いている。魔法の才も秀でており、ブリテン史上最も優れた魔導士だと噂されておる」
「そうなんですね、知りませんでした」
「またまた…ところでこんな北方に何の用事だ?まさかウーサー王に言われて、オークニーに攻めて来たのではないだろうな?」
ロット王はからかいながらモルガンに問いた。するとモルガンは涙を流し始めた。
「な!どうされた?」
「すいません、少し悲しくなってしまい……実は私、最近、父を亡くしたんです」
モルガンの瞳から涙が流れる。泣いてる姿まで美しく惚れ惚れする。悲しんでいるモルガンに優しく話しかけた。
「そ、そうだったのか…」
「はい…それで、母も新しい方と再婚し家を出るので家には妹だけしかいないのです…妹は、まだ嫁ぎ先も見つかっておりません…このままだと妹は……」
モルガンは深く悲しむ演技をした。それをみたロット王がモルガンに同情の眼差しを向ける。
この時代、領主亡き家に残された者を貰いうける家は中々いない。それは縁起が悪く、不吉だとされていたからだ。だから、モルゴスはこのままだと未婚のまま過ごすことになる。しかも、稼ぎがないため自分で稼ぎ生きていくしかない。いい家紋のお嬢様ができる仕事など、ほとんどない。あるのは体を売る仕事だけだ。
このまま助けず没落して、娼婦になってもらう方法も考えたが彼女には自分には出来ないことを代わりにやってもらうことに決めた。
「そこでロット王にお願いです…私の妹を妻としてオークニーに迎えてもらえないでしょうか?」
「妻に?」
(ほう…悪くない話だな)
以前、ウーサー王と会話した時のような心の声?のようなものが聞こえる。これはなんだろうか?とモルガンが考えているとロット王は口を開く。
「確かに、オークニーに嫁いでくれる女性はおらず私も困っているため渡りに船ではあるが……」
「王の心は理解できます。何も利益がないのに、名や素性がわからない女性を妻に迎えるのは難しい。ですが、私が妹のかわりに王に利益を持たらしましょう」
「ほう…」
(もしかして、モルガンがオークニーにも魔導士として務めてくれるとか?)
ロット王はモルガンの返事に期待する。薄い桃色のような色の唇が開く。
「このオークニーに跡取りをもたらし、そして生まれた子孫を宮廷に連れて行くことをお約束いたします」




