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第五章 三節 媚薬

少しだけ性的表現ありです


 ウーサー王はソワソワしていた。イグレインを晩餐会に招待する手紙を渡すとすぐに参加すると回答された手紙がきたからだ。王の誘いを断ってはいけないとかけてもいない圧力により参加すると言ってきたかもしれないが、そうでないと願いたい。

 夜に向け身なりを整えているとマーリンがやってくる。



「ウーサー王、お呼びでしょうか」


「マーリン!よくぞきてくれた!実はお主に頼みたいことがあってな!」


「……頼みたいこと?」



 マーリンはなんだが嫌な予感がしたがそれは当たってしまう。



「わしは、モルガンの母、イグレインに惚れてしまった!だから私の妻になるようになんとかしたいのだ!何かいい方法があるか?」


「いやはや…私は色恋沙汰には疎くて…」


「そうは言うな!まじないとか惚れ薬とか何かないのか?」


「うーん……」



 惚れ薬のようなものは普通にある。正確には惚れ薬というよりかは媚薬に近い。使えば、相手の体を熱くさせ相手の好みの人に似た雰囲気を自分に纏うことができる。マーリンは混血の夢魔だ。夢を喰らうためには媚薬で相手を誘惑することはざらにある。すぐに渡すことはできるが無条件で渡すにはどうも気が乗らなかった。媚薬はアヴァロンにはたくさんあるがブリテンにはない。なくなると自分も困る。マーリンは少し考えウーサー王に提案をした。



「王よ、惚れ薬のようなものはあります。しかし、無条件で渡す訳にはいきません」


「ほう…わしと取引するか?何が望みだ?」



 ウーサー王は欲望に忠実だ。自分がしたい、ほしいもののためならなんでもする。マーリンはウーサー王の性格を分かっていて提案した。



「これは予言に近しいですが…王、以前私が授けた予言を覚えていますか?」


「あぁ、“汝、愛する者を略奪すれば次代の王を迎えることができるだろう。王の誕生を願って信仰が光の剣をもたらすだろう。光の剣が真の王の手に渡れば、かの地は永遠の繁栄を約束されるだろう”………であろう?」


「そうです。ですが予言には続きがあります」


「なんと?申してみよ」


「“次代の王を自ら手放せ。さすれば次代の王はかの地をより豊かにするだろう”」


「ということは、生まれた子を手放せというのか?」


「はい、予言はそう言ってます」



 ウーサー王はさすがに即答できなかった。自分の子は自分で育てて、次の王に相応しい人間にしたかったからだ。ただ、マーリンの要求をのまなければ子すら生まれないかもしれない。悩みに悩んだウーサー王は、深呼吸し口を開いた。



「いいだろう。予言に従う。だが、生まれた子を手放したら、子はどうなる?」


「子は私とエクター卿が育てましょう」


「エクター!それなら安心だ」



 エクターはウーサー王の臣下の1人だ。ウーサー王が信頼する臣下の1人であった。



「では、王よ。これを」



 マーリンは惚れ薬をウーサー王に渡す。



「ご武運を」



 マーリンはそう言ってウーサー王の部屋から出たのであった。




 夜になり晩餐会が開かれる。イグレインは晩餐会にかなり満足していた。コーンウォールにいた時もパーティはしたが、華やかさや上品さが桁違いだ。やはり家を出てよかったと改めて思った。ゴルロイスには若干の罪悪感があったものの、昔から夢に見た風景が目の前に広がっているだけで満たされていくようだった。

 晩餐会を楽しんでいるとウーサー王が近づいてきた。王は確かに威厳があり王に相応しい人だ。だが、見た目や中身はやはりゴルロイスに劣るためいまいち好意をいだけなかった。火遊びするならもう少し若い男がいい。そう、最近来ていたあの()()()()()のように。

 そんなことを考えているとウーサー王がグラスを持って話しかけてきた。



「やぁ、イグレイン。晩餐会は楽しんでいただけてるかな?参加してくれて嬉しいぞ!」


「ウーサー王、お誘いありがとうございます。楽しませていただいております。これも(モルガン)のおかげですね」



 イグレインは笑顔で話しかける。それにウーサー王は少し照れた。本当は正攻法でイグレインを妻にしたい。しかし、時間もないし、彼女も領主の妻だ。だから結ばれるまでにはかなり時間がかかる。それは避けたかった。だからマーリンから薬をもらったのだ。これで誘惑し、既成事実を作れば……うまくいくはずだ。

 ウーサー王は自分に言い聞かせた。そして行動にうつす。



「イグレイン、そなたがブリテンで楽しく過ごせていることはわしも嬉しく感じる。よかったら、乾杯しないか?」



 そう言い、媚薬が入ったアルコール入りのグラスをイグレインに差し出す。イグレインは何の躊躇いもなく、グラスを受け取り頷いた。


 

「では、乾杯!」


「乾杯」



 イグレインはアルコールを一気に飲み干した。すると、体がポカポカするような感覚に陥る。度数はきつそうではなかったが、酔ってしまったのか?とイグレインは考えていた。少しフラフラし倒れそうなところをウーサー王が助ける。



「イグレイン?大丈夫か?」



 ウーサー王が話しかける。するとイグレインは涙目のような麗しい瞳でウーサー王を見つめてきた。これは薬が効いているとウーサー王は内心喜んだ。



「ええ、大丈夫です…ですが、少し休みたいですわね…」



 激しく酔ったような感覚に陥る。吐き気などはないが体が熱く、クラクラしていた。ウーサー王はイグレインに提案する。



「近くに来賓が休む部屋がある。そこに行かないか?」


「ええ…連れて行ってくれますか?」


「もちろん!」



 ウーサー王はイグレインの肩を抱き、支えながら部屋に向かう。そこは表向きは来賓が休む部屋ではあるが、実際はウーサー王が女性を連れ込み、夜を共にする部屋でもあった。そんなことは知らずにイグレインは部屋に入り、ソファにゆっくり座らされた。



「大丈夫かな?イグレイン。私は執事に水やら何やら持ってきてもらうために一度でる。ここで待っていてくれ」



 ウーサー王はそう言い部屋を出ようとした。するとその瞬間、ウーサー王の姿が愛おしい()()()と重なった。前にいるのはウーサー王なのに、まるであの(ゴルロイス)がいるかのように感じた。

 かつ、体はかなり熱い。熱などではなく、ただ単純に誰かと夜を共にしたいという欲求が湧き上がってくる。

 この欲求はコップに注がれた水のようにしばらくすれば溢れる。そうなる前になんとかしなくてはならない。


 イグレインは部屋を出るウーサー王を後ろから抱きしめた。突然のことにウーサー王は驚く。



「イグレイン…?」



 ウーサー王が声をかけると、急に腕を引っ張られた。かと思ったらベッドに押し倒された。



「どうされた?」


「ウーサー王……」



 イグレインはゆっくり近づき、ベッドにいるウーサー王に馬乗りになった。



「私…私…あなたが欲しい……我慢できないわ……」



 そう言いイグレインはウーサー王の唇に激しく口付けをする。そして男女は熱く激しい夜を過ごすのであった。



 そんな様子を外の木から覗く人がいた。



「計画通りね…さぁ、崩壊のはじまりだわ!」



 そうその人が叫ぶと同時に笑い出す。笑い声は城の外にある森に響き渡るのであった。

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