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第五章 二節 欲望

少し短めです。


「何バカなことを考えているんだ!」


母様(かあさま)!本当に行ってしまうの?」



 コーンウォールにある領主の城の門前では何やら朝から騒がしかった。ウーサー王の命令で、執事達がコーンウォールまでイグレインを迎えにきたのだ。

 だが、イグレインは手紙の件を誰にも相談せず秘密裏に出ていこうとしたのをゴルロイスに見つかり、騒ぎになっていたのであった。



「イグレイン!何を考えている!?仮にもお前は領主の妻だ!領主の許可なく家から出ていこうなど言語道断だ!ウーサー王の迎えか何か知らんが帰ってくれないか?」



 ゴルロイスは大きな声で話す。迎えの執事達は若干萎縮していたが、その声に萎縮することなくイグレインは話始める。



「あなた…私は娘が私にくれたプレゼントを受け取るだけ。別にあなたと離縁しようなどとは考えていないわ。確かに家から出てしまうけどしばらくしたらすぐ帰るわ」



 イグレインはゴルロイスを優しく宥める。妻が夫の許可なく外出することは駆け落ちや離縁が理由のことが多かったが、イグレインはゴルロイスを愛している。よって離縁などは考えていない。しかし、心の奥底には別の深い欲求があるのも事実だ。いつもはゴルロイスを優先しているがたまには自分の欲求に素直になりたかった。それがゴルロイスの怒りを買うことになっても。

 ゴルロイスもまたイグレインを愛している。しかし、モルガンを追い出したことやそれにより結局領地経営は上手くいかなくなり苛立ちが募っていたところにこの騒ぎが起きた。モルガンを追い出したイグレインには多少怒りを感じていたが大目にみたのだ。だが、モルガンからのプレゼントとはいえ、家から出るのはおかしすぎる。ゴルロイスはプレゼントの具体的な中身を教えてもらっておらず、より一層混乱していた。



「どれくらいで戻るのだ?」


「わからないわ。私も具体的なプレゼントの内容はわからないから。ただ城に来いとしか書いてなかったから」



 イグレインは嘘をつく。だが、この嘘はあまりに自然だったので、ゴルロイス、娘のモルゴスですら違和感を感じなかった。



「………わかった。とりあえず向こうについたら手紙をくれ」


「わかったわ」



 イグレインはゴルロイスを抱きしめ迎えの馬車に乗った。これがイグレインとゴルロイス、モルゴスの最後の挨拶になることは誰も予知できなかった。




 馬車は城へと向かい走り出す。コーンウォールのような準田舎よりも当たり前に王城は都会にあたる。馬車から見える煌びやかな売店、歓楽街、貴族達…それだけでイグレインの心は高鳴った。


 

 イグレインは幼少期から美人だった。領主をしている父を持ち、母は美人で聡明であった。周りからは王城にいき、王族に嫁ぐのではないかと言われ、自分は将来は煌びやかな世界で生きていくと思っていた。

 しかし、それは叶わない夢だった。父が経営に失敗したことと当時コーンウォールの領主であったゴルロイスの父が優秀であったことで、父の領地はコーンウォールに吸収されイグレインはコーンウォールの領主の家に嫁ぐことになる。

 イグレインはゴルロイスの見た目、中身ともに好きだったため嫁ぐことはそこまで嫌ではなかった。しかし、自分はもっと上の立場の人間と結ばれる可能性もあるのではないかと思うこともある。そんな思いを燻らせながら今まで生きてきた。

 ウーサー王と結婚は難しいだろうが、ウーサー王の近くにいる騎士や貴族達に嫁ぐことはできるかもしれない…イグレインはかつてちやほやされていた感覚を思い出し、抱いていた夢が叶うのではと妄想にふけるのであった。



 馬車がとまり執事達に案内されるとそこは玉座の間だった。ウーサー王らしき人とその妻(王妃)、騎士達、貴族達、大臣達…みな揃っていた。扉から玉座までは赤いカーペットがしかれていて、周りの装飾も見たことないぐらい華やかであった。

 風景に圧倒されていると後ろから美しい声で話しかけられた。



「お母様、到着したのですね。まずは、任命式があるので参加お願いします。私の後についてきてください」



 そこには1年半ぶりにみた娘がいた。気味が悪いと思っていた銀色の髪は一層伸び、輝くを放っている。魔力を帯びたような紫色の瞳には金色の羽のような模様が入り、見た目は妖艶かつ美しさのある雰囲気を纏っている。

 変貌した娘の姿に何も言えず言われるがまま後をついていった。



 どうやらモルガンの宮廷魔導士の任命式に呼ばれたようだった。周囲の目線はモルガンに注がれ、自分はいないかのような感覚にイグレインは陥る。やはり自分より美しい存在の娘は()()()()()()()()()

 形式的な式が終わり、モルガンが話始めた。



「ウーサー王、ありがたい地位を授与していただけたこと感謝申し上げます。また、私の望みである母への恩返しを叶えてくださったことも感謝いたします。こちらが私の母、イグレインでございます」



 モルガンは軽く会釈し、イグレインをウーサー王に紹介した。ウーサー王は驚いた。目の前にはモルガンに少し似た雰囲気を持つ女性が立っていたからだ。モルガンが後10歳ほど歳をとればそのような見た目になるだろうと感じた。またモルガンを産んでもなお、若い見た目をし、モルガンにない妖艶な雰囲気を纏うイグレインをみて、ウーサー王は完全に惚れてしまった。



「モルガン、そなたが宮廷魔導士として活躍することを期待しておるぞ。母君には相応のもてなしをさせてもらおう」


「ありがとうございます」



 そう言葉を交わした後、式は終わった。モルガンはマーリンと共に城内を巡り仕事を引き継ぐことになった。一方、イグレインは執事、メイド達に連れられ新たな住まいへ案内された。一通り説明を受け、自室で休んでいるとメイドがやってきた。



「イグレイン様、失礼いたします。ウーサー王より手紙を預かってまいりました」



 メイドが王の印が入った手紙を渡してきた。手紙を開けて読む。手紙にはこう書かれていた。



 ー今日の夜、晩餐会をするのでぜひ来てほしい



 イグレインはふっと笑った。それはみたメイドは話しかけきた。



「イグレイン様?どうかされました?」


「いえ、ウーサー王が晩餐会に招待してくださったの。行きたいので、準備をお願いできるかしら?」


「かしこまりました」



 イグレインはメイド達に指示し、急いで晩餐会の準備をするのであった。

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