外伝六 予言と聖剣と騎士
四章後、最後の外伝です。直接的な描写はないですが、少し性的表現ありです。
次からは五章に入ります。
これはモルガンが様々な出来事を経験している裏で起こっていた話。
モルガンが試練のため箱庭に行った後、マーリンはウーサー王に呼び出された。
「ウーサー王、ご機嫌よう。何用かな?」
マーリンは年老いた爺さんの姿でウーサー王に問いかける。ウーサー王は興奮気味に話しかけて来た。
「マーリン!よくぞ来てくれた!実は辺境地でそろそろ戦争しようかと思って…勝利するためのまじないをお願いしたい!後、ワシもそろそろ後継者を考えたほうがいいのかと気になってのぉ…そのあたりの予言があればほしいのだが…いけるか?」
ウーサー王にはまだ世継ぎがいなかった。奥方はいたものの中々身籠らなかった。世間や周りも後継者がいないことを心配しており、その情報はウーサー王の耳にも入っていた。
「わかりました。準備しますのでお待ちください」
そう言ってマーリンは諸々の準備をし始めた。戦争への願掛けはすぐに終わるので、その場でさくっと終わらせる。問題は予言だ。千里眼で見るためかなり魔力を消耗する。
魔力切れにならないように準備し、予言を与える儀式を始める。
目を閉じ、深呼吸して集中する。儀式が始まるとマーリンの周囲に結界が生じた。結界中央にいるマーリンは降りてくる言葉をそのままウーサー王に伝える。
“汝、愛する者を略奪すれば次代の王を迎えることができるだろう。王の誕生を願って信仰が光の剣をもたらすだろう。光の剣が真の王の手に渡れば、かの地は永遠の繁栄を約束されるだろう”
マーリンが話終えると結界がなくなった。予言を聞いたウーサー王は鼻息荒く話しかけてくる。
「マーリン!ありがとう!私はお前の予言に対してかなり信頼をおいている。これでブリテンは繁栄するぞ!」
マーリンの手をとり無理矢理握手してくる。そんな状況を側でみていた側近のレオンダンスは訝しげな顔でマーリンを見る。
「王よ、そんなペテン師の戯言を信じるのですか?」
「レオよ、そう言うな。マーリンの予言はあたるぞ!」
「………」
ウーサー王のウキウキとした様子にレオンダンスは何も言えなくなる。そんな会話をマーリンは遮った。
「王よ、頼みは応えた。私はまた留守にするので何かあれば呼んでくれ」
「ああ!マーリン、ありがとう!」
マーリンはウーサー王に背を向けてとぼとぼ歩き始めるのであった。
魔力がなくなりつつあるマーリンはいつもの姿に戻っていた。なくなった魔力を補充すべくとある場所へ向かう。それは、かつてアヴァロンで美しさを誇っていた妖精ーヴィヴィアンの住む湖だ。
ヴィヴィアンは昔、アヴァロンに暮らしており、美しい容姿をもっていることで有名になった。皆がヴィヴィアンの容姿に魅了され、なんでも言うことを聞いていた。しかし、それ以外に特別な能力があるわけではない。
マーリンはヴィヴィアンが有名になったころから、ヴィヴィアンとは知り合いだ。かつ、マーリンですらヴィヴィアンに“魅了”され、惚れている。だから、マーリンもヴィヴィアンには弱いのだ。
ある日、ヴィヴィアンの行方がわからなくなったためマーリンはありとあらゆる手段でヴィヴィアンを探した。しかし、見つけることはできなかった。
途方に暮れ、ブリテンの聖なる湖の近くで魔力補給していると、ヴィヴィアンが湖で水浴びしているのを発見する。
マーリンは驚きながらも見つかった安堵でいっぱいになった。ヴィヴィアンに話しかけ、再会したことを喜んだ。
それ以降、マーリンは魔力補給がてら湖へと足を運んだ。ヴィヴィアンに会うためだ。
『ねぇ、マーリン。お願いがあるんだけど』
ヴィヴィアンが上目遣いでお願いしてくる。
「いいさ、なんだい?」
マーリンが魔力補給しながら答える。
『私、赤ちゃんがほしいな』
「ぶ!」
マーリンは突拍子もないお願いに吹き出してしまった。
「赤ちゃんって…子供?急にどうしたんだい?」
マーリンは困惑しながらたずねる。するとヴィヴィアンは楽しそうに答えた。
『ふふっ、自分の分身みたいに愛しい存在になるってきいてね、育てたいなーって』
「でも、妖精は妖精同士でしか子をなせないよ?」
『そうねぇ…それに妖精の子じゃなくて人間の子がほしいの』
「人間の?」
『うん!』
ヴィヴィアンのあどけない返答にさらにマーリンは困惑した。
「なんのために?」
『………』
マーリンの質問にヴィヴィアンは答えない。それによりマーリンは帰る支度をする。
「私が納得できる理由がないといくら君の頼みでもきけないよ。悪いけど、帰るね」
そう言いマーリンは背を向けて帰ろうとする。するとヴィヴィアンはマーリンの背中にしがみついた。そして耳元で囁きはじめる。
『いいの…?私が他の人との間に子を作っても』
妖精は妖精同士でしか子をなすことはできない。人間との間には何があっても子ができることはない。わかっているがそう言われると、嫉妬に駆り立てられそうになる。
「だめだ…けど…」
マーリンはヴィヴィアンの言うことは惚れた弱みできくほうではある。しかし、やはり自分の中の理性や信念もあるため簡単に同意できない。迷っているとヴィヴィアンは更に耳元で囁く。
『私、マーリンを信頼しているし、愛してるわ』
そうヴィヴィアンが言い、マーリンがヴィヴィアンと向き合うとヴィヴィアンがマーリンに口付けをする。
恋人同士のような激しい口付け。そのまま二人は湖の中に沈みこんだ。
妖精は妖精同士でしか子はなせないが、人間とは子をつくるための行為はできる。それは夢魔のハーフであるマーリンも例外ではない。
ヴィヴィアンは行為に対して何も感じなかった。ただ、妖精、人間、精霊…すべて欲望には忠実で、自分が感じる演技をすれば相手が喜ぶことに気がついた。
そこからは、自分の合わせ持つ魅力と体を使っていいようにことを運んできたのだ。
マーリンとそういう行為は何度もしている。そこに感情はない。ただ、相手が自分に堕ちてくれればいい。ヴィヴィアンはそう思いながらマーリンの欲望を受け止めるのであった。
日が暮れ辺りが暗闇の中、ヴィヴィアンは一人、湖の水面に座りこんでいた。
先ほどまで行為にふけっていたマーリンは湖の底にあるヴィヴィアンの居住空間で眠っていた。
『マーリンは相変わらず淡白ね』
ヴィヴィアンはボソッと呟く。ヴィヴィアンはマーリンとたまにこうして体の付き合いをしている。理由は、マーリンの魔力を奪うためだ。マーリンの魔力を少し奪えば、魔法の才がないヴィヴィアンも少し魔法が使えるようになる。
『これで人間をおびきだして、私の魔力を混ぜ込み、子を成してもらおう。そうすれば、私の一部を引き継ぐ人間が生まれる……ふふ。楽しみだわ』
ヴィヴィアンは自分の思い通りにことが運びニヤニヤするのであった。
マーリンの予言を聞いた一部の者が、ブリテン統一をする王がもつに相応しい剣を生み出すため祈りを捧げ始めた。その祈りは神に伝わり、神は聖剣エクスカリバーを作った。
しかし、まだかの王は生まれていない。困った神は、アヴァロンの住人であり、聖剣を悪用しなさそうと判断したヴィヴィアンにエクスカリバーの管理を依頼した。
ヴィヴィアンは承知し、エクスカリバーは湖の奥底に封印された。
ヴィヴィアンはティターニアに封印されてからずっとアヴァロンにどうやって戻るかを考えていた。
湖に打ち付けられた鎖を切る武器が必要だと考えていたがそんな都合のいい武器などないことは理解しており、憂鬱な日々を過ごしていた。
しかし、いろんな場所に派遣している手下からの情報で、神が作った聖剣ならば可能ではないかと判明する。そして、ヴィヴィアンは自分の封印を解くために聖剣を手に入れる方法を探った。
そして見つけた。聖剣を自分のものにする方法を。
そのためには、聖剣は湖に封印されなければならない。だからヴィヴィアンはあえて“いい子”を演じ、神の印象をよくした。
そして、聖剣が封印された今、ヴィヴィアンの目標が一つ達成された。
『ふふ…面白いほどに私の思い通りにことが運ぶ。あとはブリテンが王が生まれるように、あの子を使って、そして…』
ヴィヴィアンの腕には小さな赤子がスヤスヤと眠っていた。
『あの邪魔な魔女を排除する騎士が必要だわ。だから…』
ヴィヴィアンは赤子のおでこにキスをする。
『愛しい愛しい私の子…ランスロットよ。早く大きく、強くなりなさい。私の邪魔をする女を抹殺するために…』
そう何度も唱えながらヴィヴィアンはランスロットをあやすのであった。




