外伝五 半端な姉妹
いつも外伝は短めに書く予定が少し長めになってます。
あともう1本外伝書きます。少し本編に絡むのでよかったら読んでください。
『私達は9姉妹だったの!』
そんなこと急に言われてもというのが本音。
モノロエ姉さんの持っていたガラス玉のおかげで皆、理解したものの、受け入れられているかは別だ。
私達は元々8姉妹。
上から
モノロエ、マゾエ、グリーテン、グリトネア、
グリートン、テュノロエ、ティーテン、ティートン
の順番で生まれた。
それぞれ個性豊かで、一緒にいて飽きない。
モノロエ姉さんを長女だと思って生きてきた私からしたら、モノロエ姉さんの上に姉さんができることは、なんだか言いようのない複雑な気持ちになる。
他の姉妹達は割とモルガンを気に入っているらしい。とくにグリーテンとテュノロエ。
グリーテンは姉妹の中で一番魔力が多く、力も強かった。だから、攻撃が必要な場面ではよく活躍していた。
自分より強い存在なんか許せないみたいな態度をしていたくせに、モルガンが現れてからはモルガンの強さに惚れ込み、彼女に稽古をつけてもらいながら修行している。
テュノロエは美しいものや可愛いものが大好き。モルガンの銀髪にたいそう憧れを抱いており、モルガンに近づけないかと服装や髪型、メイクや見た目にまでモルガンを真似するくらいの崇拝っぷりだ。
他の姉妹達もなんだかんだモルガンと交流していて満更でもないようだ、私を除いて。
モルガンが女王になったからか私達はモルガンの補佐をするために城に住むことになった。
つまり城で共同生活をしている。
今まではいろんなところを転々としていたので、固定の住居があることは嬉しいが、いきなりモルガンと過ごすというのは少しだけ嫌悪感があった。
他の姉妹には言えないけど。
そんなある日。
皆で朝食を取っている中、モルガンが最後に食卓に現れた。
「みんな、おはよう。遅れてすみません」
『モルガン姉さん、おはよう。どうしたの?』
「モノロエ、おはよう。いろいろ作業していて昨夜は寝るのが遅くなってしまったの」
モルガンは席につき、食事をとりはじめる。
『姉さん、夜更かしはよくないわよ?その綺麗な肌が荒れちゃう…』
「テュノロエ、ありがとう。大丈夫よ。あなたがくれた化粧水のおかげで肌荒れはしないわ。いい製品だから、売ってみたら?私の名前、使ってもいいですよ」
『え?本当?じゃあやってみようかな〜』
テュノロエはご機嫌になる、皆が分かるほどに。
次々と皆がモルガンに話しかける中、私は黙々と朝食をとっていた。
そんな様子をみていたモルガンが私に話しかけてきた。
「マゾエ、今日は何をするのですか?」
話しかけられたことに驚き、お茶が器官に入り少しむせる。少し咳き込んだ後、返事をした。
『今日は…薬草をとりにいくわ。西の方に薬草の畑があって、自由に採取できるから』
「そうなんですね…では私も一緒に行っていいですか?」
『えっ』
嫌だという声が出かかったところを抑える。二人きりで薬草取りにいくなんて、気まずい…と黙って考え事をしているとグリトネアが話に入って来た。
『姉さん、モルガン姉さんについて来てもらったほうがいいよ?西の方に行くなら、街を通らないといけないでしょ?』
『あ…』
西の外れにある薬草畑へ行くには、私達が生まれ育った街を通らないといけない。
母から街を追い出されて以降、街に帰ったことはなかった。だから久しぶりに行くことになる。
そう思うとなんだかいろいろ思い出して不安になってきた。そんな雰囲気を察したのか、モルガンが話始める。
「マゾエ、何かあれば私が守りますので行きましょう。私もたまには休暇をとって気分転換しようと思います」
『……わかった。じゃあ朝ごはん食べたら行きましょう。薬草は早く採取したほうがいいから』
「ええ、そうしましょう」
二人のやりとりを他の姉妹達は微笑ましく見つめていたのだった。
街へはモルガンの魔法ですぐに着いた。畑は街を通り奥に続く山道を少し歩いたところにある。
久しぶりの街は昔とさほど変わっていなかった。
母も父もこの街にはいないようだ。私達姉妹を追い出した後も街の人達からの迫害が止まなかったため、諦めて他に引っ越したと人づてに聞いた。
会いたくなかったから、いなくてよかったと少しほっとする。
私とモルガン、地味に目立つ二人が街を歩いているため通りの道は観衆で賑わっていた。
「賑やかですね」
『おそらく、私とモルガン姉さんが来ているからだと思います』
「私はともかく、マゾエが来ていたら賑やかになるのですか?」
『はい、私たち姉妹は街の人達からは不吉な存在で罷り通ってましたから…』
「…………」
そんな会話をしながら歩いていると、妖精のグループが目の前に立ち塞がった。先へ通したくないようだ。
『あなたたち、なんのつもり?』
『それはこちらのセリフだ。貴様こそ何しにここにきた?』
体が大きい妖精が壁のように立ち塞がり威圧してくる。威圧に負けそうになるが、堪えて反抗する。
『私は山にある薬草を取りに来ただけ。この街に用はないわ。薬草をとったらすぐに帰ります』
『本当か?実は街の皆に復讐するために来たのではないか?』
大きな妖精の発言を聞いた周りは私達を警戒し始める。それがトリガーになり、ヤジが飛んできた。
『お前なんか帰れー』
『お前達姉妹のせいで、この街は衰退する一方だ!』
『街が栄えないのは姉妹のせいだ!』
『姉妹が生まれたせいでこの街の妖精達は不幸だ!』
吐き気がする。
街を追い出された風景がよみがえり気持ちが悪い。
マゾエの顔色が悪くなるのを確認したモルガンが指を鳴らした。
すると、妖精達は一瞬にして黙った。
同時に、妖精達は震えだす。
ー女王の視線
妖精達に恐怖を与え、萎縮させる。
モルガンは戴冠式以降、女王の視線の訓練をしある程度、コントロールできるようになった。よって今のようにある程度自由に視線を放つことができる。
街の妖精達は感じたことのない恐怖でいっぱいになり、ヤジを飛ばす者はいなくなった。恐怖でいっぱいいっぱいになり気絶する者が多数発生していた。
「あなた達、この子が誰か分かって発言しているのよね?」
モルガンの怒りが増すと、恐怖のレベルが上がった。妖精達は今にも死にそうな状態になっている。
そんな様子を見て、モルガンは視線を解除する。
無闇な殺生はしないようだ。
「薬草をとるだけです。とれば帰りますし二度と来ません」
モルガンは立ち尽くした状態のマゾエをゆっくり抱え上げ、抱っこしながら山へと向かう。
その後ろ姿にヤジを飛ばす妖精がいた。
『女王がなんだよ…そいつは不完全で不吉な存在なんだよ!この街に災いをもたらす存在なんだよ!』
その言葉を聞いてマゾエは涙が溢れる。その瞬間、ヤジを飛ばした妖精が宙に浮きはりつけのような状態になる。抵抗するが両手両足を拘束されたような状態で、大の字ではりつけになっている。
モルガンが振り返り指をならすと焼印が出て来て、妖精の背中に烙印をおした。妖精は痛みで叫びもがくが逃れられない。その光景をみた周囲は自分も押されるのではないかと恐怖で自然と震えていた。
「私は…見た目の通り半妖精の半端者です。ですが女王でアヴァロンを統治しています。不完全な存在はアヴァロンを統治できませんかね?」
周囲に問いただすも答えるものはいなかった。
それを確認したモルガンは再び山道へ向かった。
少し険しい道だが浮いて移動すれば問題ない。ゆっくり浮遊しながら畑に向かった。
その間、マゾエはモルガンに抱き抱えられている。恥ずかしいながらもおろしてともいえず、早く畑につけ!と願っていた。
「ここですかね」
モルガンは畑らしい場所を見つけて浮遊をやめた。そしてマゾエをゆっくり地面におろした。
「さぁ、マゾエ。好きなだけ採取してください。帰りは私の魔法でワープして帰りましょう。私はここで休んでおきます」
そう言ってモルガンは近くにある切り株に腰掛けた。マゾエは目的の薬草を摘み始める。
優しい風がそよそよ吹き、あたりには鳥の鳴き声が聞こえる。さっきまでの地獄みたいな場所とは大違いだ。
マゾエは休みながら薬草を摘み続ける。するとモルガンが話しかけきた。
「マゾエ、私のこと好きにならなくていいですよ」
『え!?』
急にそんなことを言われて驚いた。気持ちをさとさとれないように振る舞っていたがバレていたのか?と考える。モルガンは続ける。
「急に現れた得体の知れない人が姉だなんて、そう簡単には受け入れられないと思います。でも、それでいいです。姉妹みんなに好かれるなんて都合よく思ってません。だから、無理に私を好きにならなくていいです。だけど…」
『だけど?』
モルガンが黙ったので、マゾエは聞き返した。それに答えるように話す。
「私達は姉妹です。だから、困った時は助けを求めてください」
『………』
あぁ、そうかと納得した。私が彼女が嫌いな理由は、嫉妬からくるものだったんだ。私達姉妹は不完全な存在、モルガンもまた半妖精で半端な存在。同じ不完全な存在なのに、彼女は自分も、周りも大事にして生きている。だから周りから慕われているし、好かれている。一方で私はどうだろうか?姉妹の中で秀た才能もなく、周りから疎まれて…そんな自分が嫌い。
同じような存在なのに、好きなように生きる彼女を私は、羨ましかったんだ。
自分の感情の理由に腑に落ちたマゾエは肩の力が抜けて穏やか雰囲気になった。
『モルガン姉さん、ありがとう』
心からのお礼と笑顔をモルガンへ送る。それをみたモルガンも優しく微笑むのだった。
薬草摘みから帰宅し、皆で夕食を囲んで会話していると、グリーテンが話しかけきた。
『マゾエ姉さん、どうしたの?』
『何が?』
『いつもモルガン姉さんがいたらツンケンしてたのに、今日はそんな雰囲気じゃない…薬草摘みでなんかあったの?』
『……まぁね』
マゾエが少し照れている表情を浮かべているのを見たグリーテンはニヤっと笑う。
『モルガン姉さん!今日は姉妹の誰かとお風呂に入らない?今日もお話しきかせてほしいな!』
たまに姉妹でお風呂に入り、過去の話や公務の話、修行の話などいろいろお話しする。お風呂に入るメンバーは指名制だ。
「ええ、いいわよ。じゃあ誰と入ろうかしら…?」
モルガンは誰を選ぶか悩んでいる。するとモノロエが立候補してきた。
『はい!私、入りたい。マゾエも一緒に入ろう?』
モノロエがマゾエを誘った。
マゾエは姉妹の中でまだモルガンと一緒にお風呂に入ったことはない。ずっと断ってきたからだ。モノロエは冗談半分で誘い、断られるだろうと思っていた。しかし、マゾエからは意外な回答が返ってくる。
『ええ、いいわよ。入りましょう』
姉妹達皆が固まる。そして、マゾエをじーと見つめた。視線が集中しているのに気づき皆を見る。
『なんか、変なこといった?』
『いや…別に…大丈夫だよ』
『そう。じゃあ早く夕食を終えないといけないわね』
マゾエの態度の変化に姉妹達は驚きながらも、笑顔でマゾエを見つめるのであった。




