第四章 十節 ブリテンへ
いつもより少しだけ長めです。
これで四章終了です
外伝を3つ挟んで、五章に入ります
「ふぅ…なんとかできたようです」
モルガンは出来上がった聖剣をじっと観察する。設計図通りにできていることに関心していた。近くで見ていたドグルは驚きと感動でいっぱいいっぱいになっていた。
「ドグル、工房を貸してくれてありがとう。なんとか聖剣を作ることができました」
モルガンは頭を下げお礼を言った。ドグルは気を取り戻し、モルガンに話しかけてきた。
『いや、ワシは何もしていない。ただ場所を貸しただけさ』
「そうですね、場所を貸してくださったので約束通りお礼はします。後日、私の姉妹の誰かが訪ねてくるので楽しみにしていてください」
『……わかった。ありがとう、女王様』
ドグルは深々と頭を下げた。
目的は果たしたので、二人は工房を後にした。ドグルの洞窟でお茶をもらい休憩した後、王宮に戻った。
「これでようやくブリテンに戻れるね」
ルルはモルガンが座る玉座の近くにある台座に座っていた。
「ええ…ようやくね。ちなみにブリテンは今どうなっているかわかる?」
「実はあまり実感がないと思うけど、アヴァロンでの時間経過はブリテンの時間経過とかなり差がある。アヴァロンでは5〜6年くらいはたってるような感覚だと思うけど、ブリテンでは1年くらいしかたってない。だから、あまり変化はないかな」
「そうなんですね…」
モルガンは内心驚きつつもそうかと納得した。マーリンがあまりブリテンに戻っていなかったのも時間軸が変わっていなかったからと今になり理解できた。
「モルガン…二つ聞いてもいいかい?」
ルルが珍しく質問してきた。
「ええ、いいですよ」
二つ返事で了承した。
「この後どうするか教えてほしい。あと、聖剣だけど何に使うの?鞘も必要じゃない?」
ルルは心配そうに問いかけてきた。
聖剣ーエクスカリバーは絶対的な勝利を導く剣。一方でどんな傷も癒し、所有者をほぼ不死身の状態にするのは剣を納める鞘だ。鞘と剣がセットでなければ、聖剣としては未完成の状態と言える。モルガンが試練で手に入れた設計図には剣の作り方しか記載がなかった。ルルは設計図の話を聞いて、モルガンが聖剣を作ると言い出した時からなぜという疑問しか浮かばなかった。ブリテンに戻る前に確認しておきたかったのだ。モルガンはルルの問いに丁寧に答えた。
「まず、この後はブリテンに戻って宮廷魔導士になるために行動します。その後は、歴史の流れに沿って行動しつつ対策を講じる予定です。聖剣ですが…」
モルガンが話してる途中で、突然扉が開いた。開いた扉の前にはオングスが立っていた。
「あら、オングス様。ご機嫌いかがでしょうか?」
モルガンは丁寧な口調でオングスに話しかける。オングスは不愉快そうな顔をし、イライラしながら近づいてくる。玉座の前にくると話始めた。
『モルガン…お前、ブリテンに戻るのか?』
「ええ、戻ります。私が不在の間はモノロエ達が女王代理を務めますので大丈夫です」
モルガンは笑顔で質問に答えた。その様子にオングスは更にイライラしていた。追加で質問してくる。
『試練で手に入れた設計図をもとに聖剣を作ったと聞いた。何に使う?』
「聞いて何になりますか?」
モルガンは笑顔のまま少し冷たく言い返した。オングスはひるむことなく会話を続ける。
『質問に答えろ。聖剣は使い方によればアヴァロンの脅威になるぞ』
オングスの言う通り、絶対的な勝利をもたらすと言われる聖剣は使い方を誤ればアヴァロンを破壊する武器となるだろう。モルガンは言われるまでもなく理解しているはずだが、なぜそんなものを必要とし作ったのか、オングスは理由が知りたかった。オングスは真剣な眼差しでモルガンを見つめる。見つめること数分、眼差しに負けたのかモルガンが話始めた。
「オングス様には秘密できないようですね…いいでしょう、話してあげます。単刀直入に言いますが、私はヴィヴィアンが女王の座を狙い、アヴァロンに戻ろうとしていると考えています」
オングスは驚いた様子だった。話を続ける。
「そこで切り札になるのが聖剣です。聖剣はすでに神の手で、湖に封印されていると聞いています。私は本物の聖剣を手に入れるためこの偽物を作りました。ブリテンに戻り、本物の聖剣とすり替えます」
『さすがにヴィヴィアンでもそれは気付くと思うが…』
「大丈夫です。そこは対策済ですから」
モルガンはオングスの反論を跳ね除ける。言い返されたオングスは少しひるんだ。
「ご理解いただけますか?」
『………あぁ…』
モルガンの問いかけにオングスは少しの沈黙の後答えた。
「ありがとうございます。私はブリテンへ戻る準備で忙しいのでこれにてお帰りいただけますか?」
丁寧な言い方でオングスを追いかえそうとする。オングスは深呼吸をした後、話始めた。
『わかった…帰るが、帰る前に聞いてもいいか?』
「はい、なんなりと」
『お前は…試練でティターニアに会ったのだろう?何か言っていたか?』
オングスは悲しそうな表情をしながら質問してきた。モルガンはずっとオングスにどこまで話そうか考えていた。結局、結論がでないまま今日を迎えてしまった。モルガンは少しため息をつきながらもオングスの問いに答えた。
「はい、ティターニア様には会いました。しかし、私から何も言えません。ただ、1つだけ言えるとしたらティターニア様はオングス様にまだ会えないとおっしゃってました」
その一言で、オングスは若干目に涙を浮かべた。涙が溢れないように腕を目に当てる。そして数分後、顔をあげた。
『モルガン、ありがとう。その一言で充分だ』
そう言いオングスは去っていった。
「なんだったのあれ?モルガン、聖剣のこと話してよかったの?」
ルルが心配そうに話かけてきた。
「大丈夫。オングス様は言いふらしたりしないから。それよりもルル、質問に答えたけど、よいかしら?」
「ああ、ありがとう、モルガン」
「そう、ではブリテンに戻る準備でもしましょう」
モルガンとルルはブリテンに戻るための準備を進めるのであった。
準備が完了したモルガンはマーリンを呼び出した。
「モルガン、久しぶりだね。何か私に用かい?」
いつもと変わらぬ態度のマーリンにモルガンは変わらないなと安堵する。やはり女王になってから、周囲は自分を神かのように崇めへりくだる。そんな風に扱われたことがないため、慣れずしまいには女王として扱うのをやめてほしいと思ったぐらいだ。ただ、マーリンのように変わらず接してくれる人もいる。そんな存在がいることに少しほっとするのであった。
「はい。私は数日後にはブリテンに戻るつもりです。あなたはどうしますか?」
「そうなのかい。じゃあ一緒にブリテンに戻ろうかな」
「わかりました。では、3日後一緒に戻りましょう」
「戻ったらどうするんだい?」
「まずは、宮廷魔導士になるために…」
「いや、そうじゃなくて、住処はあるのかい?」
「……………ない………です」
「だよね。私がブリテンで住んでる場所があるからそこに来なさい」
「ありがとう、マーリン」
「いいさ、女王になったとはいえ、モルガン、君は私の弟子だからね」
マーリンはその端正な顔でニコリと微笑んだ。マーリンのこと嫌っている人はたくさんいるが、モルガン自身はそこまで嫌いではなかった。理由はこういう優しさがあるからかもしれない。
マーリンはブリテンに戻る準備があるとのことで会話した後さっそうに帰っていった。
マーリンと入れ替わってモノロエがやってくる。
『姉さん、ブリテンに戻る日は決まった?』
「ええ、3日後に戻るわ」
『そうなのね…寂しくなるね』
モノロエはわかりやすくしょげていた。そんなモノロエの頭をポンポンと撫でる。
「大丈夫よ。必要がない時は極力、こちらに戻るから」
『わかってる…わかってるけどやっぱり心配なんだ…姉さんがまたいなくならないかなって』
「モノロエ…」
モノロエを力いっぱい抱きしめた。
「大丈夫、私はもういなくならないから」
『……はい!姉さんの無事を祈っておきますね』
姉妹達は玉座にて互いに慰めあった。そんな様子をみている黒い影が一つ。
玉座近くの窓、メロウ暗殺の矢が飛んできたところに黒い影が潜んでいた。
影は呟く。
『女王ガブリテンニモドッテクル。アノカタニシラセナイト…』
影はモルガン達の姿を確認した後、壁に入り込んでいなくなってしまった。
影は川が流れるほとりにワープしていた。ほとりにいた可愛らしい女性に声をかける。
『ヴィ様。女王ガブリテンニモドルヨウデス』
影は跪きながら話した。可愛らしい女性はほとりにある岩に座って花の花びらを一枚一枚むしりながら話しかけてきた。
『で?』
『デ、トモウシマスト?』
影は問いかけに対して問いかけを投げる。その瞬間、川から水鉄砲から放たれたようなものが飛んできて、影に直撃する。
『スミマセン、スミマセン…』
影は土下座しながら謝罪を繰り返す。その姿に対して暴言を放った。
『きもいんだよ、カース。言われたこともできねぇのかよ。早く死ねよ』
女性は指を鳴らすと川から水が集まってできた手がでてきた。手は影を手のひらで押し潰す。押し潰した手は自然と川へ戻った。押しつぶされた場所に影はいなかった。
『はぁ…本当使えない…』
女性は花びらがなくなった花の茎を地面に落とし、足で踏みつけた。
「まぁ、いいわ。ようやくブリテンに戻るのね。早く帰って来なさい。あんたをメチャクチャにしてやる」
踏みつけた茎を足で潰しながら、甲高い笑い声を響かせるのであった。




