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第四章 七節 アヴァロンの9姉妹〜前編〜

長くなったので、前半後半にわけます


 昔、昔、あるところに仲の良い9姉妹がいました


 9姉妹はとある島に暮らしていました


 ある日、9姉妹の長女が島の統治者に選ばれました


 姉妹達は喜び、長女は姉妹と協力し島を統治しました


 姉妹達には特別な能力がありました


 あらゆる病や怪我を治す治癒力と


 島に余所者が侵入できないようにする絶対の結界を

 つくる保護力


 この2つ能力のおかげで島は繁栄しました


 統治者である長女が困れば


 他の姉妹達がお互いに協力し助け合いました


 そんな姉妹達は永遠に仲良く島で暮らしました



『メロウ様!』


 レイチェルが倒れかけているメロウの側に駆け寄った。突き刺さった矢は急所が外れているものの矢自体に呪いのようなものが付与されており、抜こうとしてもびくともしない。レイチェルは矢を幾度となく引き抜こうとするも逆に呪いのせいで自分の手の平が血まみれになっていた。


『メロウ様!気をしっかり!』

『うっ、うう……』


 メロウは苦しそうな顔をしながら呪いや矢をなんとかしようとするも何もできずただもがいているような状態だ。玉座の間は騒然とし、皆、自分が狙われるのではないかと不安になり城の外にでようとしたりするなどして混乱していた。

 モルガンはすぐにメロウのもとに駆け寄り状態を確認した。


「メロウ様、少し看ますよ」


 矢が突き刺さっている部分に触れ確認する。すると頭の中に映像が流れてきた。それは黒い正方形の箱に鎖が絡まったものが空中に浮いており、絡まった鎖が四方に伸びて広がっている映像だった。


「これは…中々複雑な呪いですね。鎖が伸びきる前に切断して呪いを解除しなければならないです」

『そんなことができるのですか?』

「わかりません…ただやるしかないです。時間に限りがありますから」


 モルガンは呪いを解いたことはない。しかし目の前で苦しむメロウを放っておくことはできない。修行した医術を応用してやってみることにした。


 モルガンが呪いを何とかしている最中、マーリンとオングスは場を鎮めるために動いていた。


『皆の者!落ち着け!城に結界をはる。だから城からでるな!マーリン!早く結界をはれ!』

「はいはい」


 マーリンは杖をかざし結界をはる。しかし、はった瞬間に結界の層はガラスのように粉々に砕け散った。


『マーリン!何をしている!真面目にやらぬか!』

「やっているさ。しかし、結界が壊されてしまうのさ」

『戯言を言うな!なんとかしろ!』

「そんな無茶な!」


 2人が言い合いをしている最中、モノロエ達姉妹は話し合っていた。


『姉さん…これは私達がなんとかしないといけないのじゃないかな?』


 マゾエがモノロエに問いかける。モノロエはメロウが射抜かれた衝撃で泣き止んだものの精神は少し揺らいでいる状態だった。


『昔、母さん達に言われたことを実行する時がきたんだよ!』

『そうだよ!』

『そうだよ!』

『マーリン、オングス様のところにいこう!』


 姉妹達は一致団結した。モノロエはそんな姉妹達の様子を見て、自分を奮い立たせる。


『よし!行こう!』


 モノロエの掛け声に皆、頷いた。急いでマーリン達のもとへ向かう。


『ん?お前たち。何か用か?』


 オングスが近寄ってきた姉妹達に話しかける。


『オングス様、詳細なことは後にしてこの場は私達に任せてもらってもいいですか?』


 モノロエがオングスに提案する。


『それは難しいな。お前達が何者かわからないのに、この状況を任せるのはな…』

『確かに、オングス様の仰る通りです。とりあえず、結界をはります!』

『は?!』


 オングスの制止を振り払い、姉妹達は円をつくる。そして各々、魔力を放出し呪文を唱える。すると、瞬く間に城の外に結界がはられた。


『な…!』

「すごいねぇ」


 オングス、マーリンがともに驚く。


『とりあえず結界ははりました。これで侵入者は入れません。次はあの“呪い”をなんとかしましょう』


 そうモノロエが言って、モルガン達の側に行った。


『モルガン!メロウ様は?』

「モノロエ?あなた達、どうしてここに?」

『説明は後!見た感じ解除できてはいないわね』

「ええ…その通りよ」


 モルガンは魔力を媒介に呪いを解除しようとしたものの鎖の切断までには至らず、伸びるのを少しだけ遅らせることくらいしかできなかった。


『私達がなんとかするわ』


 そう言って、姉妹達はメロウに刺さった矢の周りに円をつくった。そして、先ほどと同じように魔力を放ち呪文を唱える。すると、矢の周りから光が溢れ鎖が伸展するのが止まった。


「すごい…」


 モルガンは姉妹達の力に圧倒されていた。伸展しなくなった鎖が徐々に切断されていき、順調かに思えたが、いきなりモノロエが唱えるのをやめてしまった。


『モノロエ姉さん!?どうしたの?』


 マゾエがモノロエに問いかける。モノロエは黙ったままだった。


『どうしよう!?このままだと……』

『マゾエ姉さん!鎖が!』

『ぐっ!鎖がまた伸びてきた!』

『やだ!抑えきれない……』


 モノロエがやめてしまったため、姉妹達の魔力も不安定になり、鎖がまた伸展し始めた。


『姉さん!姉さん!しっかりして!』


 モノロエにはマゾエの呼びかけが聞こえなかった。というのも呪いの解除のため中心にある箱に触れたモノロエは呪いからの反動を受け精神が呪いに汚染されていた。

 それにより身動きが取れなくなり、魂が抜けたような状態になっていた。

 汚染されたモノロエは暗闇の中をずっと走っていた。走っている最中、周りから心ない声が聞こえてくる。


 “8姉妹なんてキモチワルイ”

 “なぜ9姉妹じゃないんだ?”

 “お前達が不完全だから女王が死んだんじゃないか?”

 “役に立たないならアヴァロンから出ていけ”


『そんなこと…そんなこと私達が一番分かってるから!』


 モノロエは叫びながら、涙を流しひたすら走り続けた。




 アヴァロンには9姉妹の伝承がある。9姉妹の長女がアヴァロンの女王になり、それによりアヴァロンは永久に存在し平和が続くという話である。だが、史実は違う。ティターニアが初代女王になり長い間アヴァロンを統治をしていた。これにより9姉妹の話はいつからかお伽話のような話になり、一部の妖精達の間で絵本のように嗜まれていた。

 そんな中、とある地域に8姉妹の妖精が生まれた。8姉妹はお伽話の9姉妹のように治癒力や保護力を持っていた。これにより姉妹達はお伽話の9姉妹に憧れ、周囲も期待をしていたが実際、9姉妹のようにはならなかった。それどころか彼女達が生まれてからアヴァロンには不幸なことが降りかかった。これによりいつしか8姉妹は不完全な者として扱われ、一部の妖精達から忌み嫌われていた。

 不当な扱いに耐えきれず、姉妹達は用事がない時はブリテンに隠れて生活するようになった。

 しかし、ブリテンでは人間達に襲われたりして平和には暮らせなかった。


『モノロエ姉さん…もうつらいよ…なんで私達ばっかりこんな目に合うの?』


 マゾエが泣きながらモノロエに訴えた。


『マゾエ…』


 泣いてるマゾエをモノロエが抱きしめる。


『不当な扱いを受けて、住む場所もなくなって、それでも母さんの言いつけを守ってるけど…いつまで守ればいいの?』


 マゾエが泣いてる姿をみて、他の姉妹達も涙ぐみ始める。


『マゾエ…みんな…』


 そんな過去の様子をモノロエは遠くから見ていた。そして堪えきれなくなり、膝を地面について泣きながら叫びだした。


『母さん…母さん!私達はいつまで言いつけを守ればよいのですか?!』


 何度も叫び、地面に拳を何度も叩きつけた。叩き疲れ、地面に突っ伏したような状態で泣き続ける。

 しばらくたった時、ふと背中に温かみがあることに気付いた。


『ん…?何これ…?』


 上体を起こし地面に座り込むような状態になる。周りが暗闇で何も見えないし何もないのだが、背中に温かさを感じる。まるで誰かに背中越しに抱きしめてもらっているような感覚と温かさだ。


『母さん…?』


 か細い声で問いかける。すると悲しい声で返事が返ってきた。


『ごめんなさい。私は母さんではありません』


 そりゃあそうだと残念に思った。しかし相手は悪くない。


『こちらこそごめんなさい。あなたは誰ですか?』


 再度問いかける。そうすると優しい声で返事が返ってきた。


『私はモルガン。モノロエ、あなたのお姉さんです』

 

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