第四章 四節 帰還
いつもより短めです。誤字があったので修正しました。
「わかりました…ティターニア、あなたはもうすぐ消えますか?」
モルガンは素直に尋ねた。
『はい、あなたが冠を手に取れば私は消えます』
「では、いくつか聞きたいことがあります」
『いいでしょう。答えることができるかわかりませんが』
「ありがとうございます」
モルガンは軽く会釈した。
「今までのこの出来事は誰かに話してもよいのですか?」
『話してもいいですが、正直おすすめしません。証拠がないからです。あなたが作りだしたおとぎ話と言われても文句は言えません。なのであなたに任せます』
「わかりました……」
モルガンはオングスのことを思い浮かべていた。仇を討ちたがっていたオングスだが、この話を伝えてよいか悩んでいた。いったん持ち帰り検討しようと思った。
「ヴィヴィアンは湖に封印されていますが、アヴァロンに戻れますか?」
『並大抵のことでは戻れません。ですが、一つだけ方法があります。それは“聖剣”です』
「聖剣?」
ティターニアの回答にモルガンは疑問でいっぱいだった。
『聖剣はアヴァロンで鋳造し、ブリテンの湖に保管します。来たるブリテン統一の時に力を発揮するからです。ブリテンはアヴァロンの表世界のようなものです。アヴァロンは女王が統一していますがブリテンはまだ統一されていません。ブリテンを統一する王が現れた時、力を貸すために聖剣は湖の奥底に隠されているのです。ブリテンが統一されるとアヴァロンもより一層、繁栄するでしょう』
「ブリテン統一は必須ではないけど、統一されるとよりよいということでしょうか?」
『その通りです。表世界だからといっても繋がっているわけではないです。だがらブリテンが滅びようがアヴァロンは何の関係もないのです』
ティターニアは何の感情もなく発言した。
「そうなのですね。しかし、その聖剣とヴィヴィアンに何の関係が?」
『モルガン、あなたの言いたいことはわかります。因果関係などないように思います。聖剣は基本、選ばれた者にしか触れないし使えません。ですが、1つだけ方法があります。それは役目を終えた時に所有者を変更すれば、触れたり使えたりするのです。聖剣はいかなるものにも負けません。例えそれは私であっても例外はないです』
「つまり聖剣はヴィヴィアンの鎖(あなたの封印)を断ち切ることが可能だということですね?」
モルガンの問いにティターニアは頷いた。
「ヴィヴィアンはこのことを知っているのかしら?」
『わかりません…ただ、何としてもアヴァロンに帰りたいとは思っているはずです。方法は調べているでしょう』
「…………なぜ試練は聖剣の鋳造方法を私に託したのでしょうか…」
『それは、あなたが聖剣を作ればあなたが所有者になるからです』
「?」
モルガンは頭が混乱した。
『聖剣はマーリンにより、ブリテンを統治する王が生まれると予言を受けたことがきっかけで生まれます。予言を受けたブリテンの人々が祈りを捧げ、それに応えるかのように神が聖剣を作る。作られた聖剣はブリテンの奥深くにある湖にて管理され、後の王は聖剣を取りに湖に現れる…このような流れだと思います』
「では、私が先に聖剣を作って湖に管理をお願いする流れでしょうか?」
モルガンは食い気味に質問する。
『それだと神と同じことをしているかと思います…正直ここはモルガン、あなたが自分で考えたほうがいい。私はこれ以上、この質問に対しては答えません』
「わかりました…」
モルガンは引き下がった。
『他にはないですか?』
ティターニアが優しく問いかける。
「これは聞きたいことにあたるかは分かりませんが、オングスに会わないのですか?」
『………………』
優しい顔立ちが少し無表情気味になる。
『オングスには……会えません。彼に言っておいてください。私はまだあなたには会えない…と』
「わ、分かりました……」
なぜ?と理由まで聞きたかったが聞けなかった。これは2人の問題だからこれ以上の介入は無粋だ。
『さぁ、モルガン。冠をとってアヴァロンに帰りなさい。あなたは女王に相応しい!私が認めます』
ティターニアが発言しおえると、冠が輝きだした。
「ティターニア、ありがとう。私は私のすべきことをします」
モルガンはティターニアに会釈し、冠を手にした。映し出されていたティターニアは消え、冠は自然と宙に浮きモルガンの頭頂部へ移動した。
その瞬間、温かい魔力が流れ込んできた。今まで感じたことのなかった温かさ。血液が頭から爪先まで流れているかのように魔力が流れ温かさで体中を満たしていく。
モルガンはその場に少し立ったままだった。しばらく立ち、落ち着くと囁き声が聞こえてきた。
ー出口はあちらよ。さぁ、行きなさい
先ほどまで話していた妖精の声に似ていたような気がしたが、もう妖精はいない。モルガンは寂しさを覚えつつも出口に向かうのだった。
モルガンが城に入ってからかなりの時間がたったように思う。しかし、まだ戻ってくる気配がなくカハルも少し気にしていた。
『モルガンにはああ言ったが、もしかしたら試練に飲み込まれたか?』
独り言を呟いていると、城の入り口がそっと開きモルガンが出てきた。
『モルガン!よくやったな!冠があるということは試練は達成したんだな』
「はい。なんとか達成できました」
『よくやったな!ん…?お前、なんか変わっていないか?』
「ん?何も変わっていませんが?」
『いや!何かが変わった!………わからんな、何が変わったか……』
カハルがうんうんと唸っているとルルを抱えたルフェがやってきた。
「カハル、モルガンの瞳と魔力を見てみろ」
『ルフェ、きたのか!どれどれ……な!』
カハルは驚いた。
「モルガン、お疲れ様。これであなたは正式なアヴァロンの女王になった。おめでとう。早く地上に戻って待っている人達に知らせるといい」
ルフェが拍手しながら労いの言葉をかけるが、カハルは会話を遮ってきた。
『モルガン……お前、ほんとにモルガンだよな?』
カハルが問いかける。
「ええ、そうです」
モルガンは表情変えずに答えた。
『……………』
「カハル?」
モルガンがカハルに近づこうとした瞬間、カハルが刀をだし、モルガンに突き刺してきた。
「カハル!何してるの!?」
ルフェが驚いてカハルに話しかける。
『ルフェ、こいつ本当にモルガンか?』
「そうだと本人も言っているけど?何かおかしい?」
『おかしいさ!』
カハルは刀を強く握らながら言った。
『こいつ半妖精で金色の瞳をしているんだ!モルガンなわけがないし、金色の瞳は……アヴァロンでは存在するはずない!!!』
カハルは大きな声で叫んだ。
「半妖精……?金色の瞳……?」
モルガンは手鏡で顔をみる。自分の瞳に金色の模様が入っていることにそこで初めて気がついた。




