第四章 三節 真実
少し長めです
昔々、神がまだいた時代
神は様々なものを生み出しては破壊し
世界を創造してきた
そんな中とある女神が小さき生き物達のために
ある島を生み出した
そこには寿命の概念もなく
豊かで自由にくらせる島だった
そこに小さき生き物ーー妖精達が住みつき
島は繁栄していった
女神は島の管理者となり島に名前をつけた
“アヴァロン”と
女神はまるで自分の子供のように
アヴァロンを、そこに暮らす生き物達を愛した
しかし、一部の者がよからぬ思考をもち
アヴァロンでは戦争がおきた
その事態を悲しんだ女神は自分の代理をたて
アヴァロンを統治する女王を生み出すことを決める
その女王は古代の神の力を引き継ぐ妖精
“ティターニア”が選ばれた
ティターニアには女神の導きにより女王になり
アヴァロンを統治する
以後、アヴァロンはかつての落ち着きを取り戻し
平和な日々が続いていた
そう、あの事事件件が起こるまでは
『今語ったのは簡単なアヴァロンの歴史です。私は女神に選ばれて女王になりかなりの長い年月、アヴァロンを平和に管理してきました』
ティターニアはモルガンにアヴァロンの歴史を簡単に説明してくれた。
『あの事件が起こるまでは平和だったのです』
ティターニアの瞳には悲しみが浮かんでいるように見えた。
『あの日の出来事を話しましょう』
そう言ってティターニアは人差し指をモルガンに向けた。人差し指からは光の筋が放たれ、額にあたる。すると映像が頭に流れ込んできた。
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ーーあの日、私は夢を見ました
ティターニアのナレーションとともに映像が流れ出す。そこは寝室のようで、巨大なベッドにティターニアが横たわっていた。
ーー予知夢を見たのです。何者かが私を殺める夢を
横たわるティターニアは苦しみだした。
ーー相手はわかりません。夢では差し出された飲み物の中に毒がはいっており、それを飲んでしまったために苦しんでいました。なんとか解毒しようにも解毒ができずにもがいていたところで目が覚めました
ティターニアは起き上がった。そして呼吸を激しく繰り返す。呼吸は次第にゆっくりになり、落ち着きを取り戻した。
ーー私は考えました。この予知夢の意味を。そして気づきました。私の女王交代が近いことを
「どうしてわかったのですか?」
モルガンは素直に質問した。
ーーあなたが生まれたからです
「私?」
モルガンは驚いた。
ーー正確にはまだ生まれていません。ただ、魂の循環からあなたがもうすぐ生まれることがわかったのです。あなたは生まれながらにアヴァロンの女王になる運命だったのです
映像のティターニアは占いのようなものをしており、それにより判明したというのが感じ取れた。
ーーただ、女神の気まぐれでしょうか。すぐにはアヴァロンにこないことがわかりました。私が死ぬほうが早く、あなたに会えないと…。私を殺めた相手もわからない、よって相手を泳がせるため私は死を選びました
「周りに相談しなかったのですか?」
モルガンが問いかける。ティターニアはすぐに答えた。
ーーきっと相談したら止められただろうから…1人で決めました。私は予定通り毒で死ぬ。しかし死ぬ間際に冠に自分の魂のカケラを埋め込み、カハルに冠の管理を頼みました。偽の冠を用意し、城ではそれを管理してもらうようにしました。
「では、カハルは知っていたのですか?」
ーーいえ、カハルには冠の管理だけをお願いしました。ただ一言、“相応しい者が現れると冠は試練をかし女王と認めるだろう。あなたはその監督者となってほしい。それまでは箱庭の深淵にて保管してほしい”と。箱庭に入れる人は限られます。仮に狙うものがいればその者は調査の対象になるでしょう
なるほど…とモルガンは納得した。
場面が変わり、ティターニアが玉座に座り飲み物を飲んでいた。飲み干した直後、苦しみだす。そして説明の通り、カケラを冠に入れ分身に運ばせ、自身は玉座で血を流しながら倒れた。
ーー相手は私が死んだかどうかが知りたくて私を見にきました
玉座につながる扉が少しだけ開き、誰かが入ってくる。それはモルガンがみたことのない、可憐な妖精だった。
ーー彼女は湖の乙女、ヴィヴィアンです。彼女もまた神の力を代々引き継ぐ家系に生まれた妖精でした。可憐で華奢な妖精ですが、中身はどうしようもない感じでした。彼女はアヴァロンの女王になりたかった…一番になりたかったのです
ヴィヴィアンは黒いフード付きのマントを羽織りながら玉座に駆け寄った。倒れているティターニアに近づき生きているか確認する。息はしておらず死んだことがわかった。
『ふふっ…やったわ!やった!女王が死んだ!よし、冠を見つけないと…あれがあれば私は女王になれる!』
不気味な笑い声を出しながら、その場でくるくると舞い始めた。そして、冠を探し始める。
ーーヴィヴィアンは冠を探し、自分がつけたら女王になれると考えていました。当たり前ですが、なれません。冠は女神が作ったもので相応しい者以外は触れることすらできないのです。なぜ、冠を手にすれば女王になれるという思考になったのかというと誤った伝承が一部にずっと蔓延しており、そのせいではないかと推察していますが実際はわかりません
ヴィヴィアンはティターニアの寝室、玉座、女王に関係する部屋を駆け巡る。しかし、冠が見つからないことで焦りが出てくる。
『な、ない!どこにもない!どこにあるのよ!……あとは保管庫くらいしかないわね』
ヴィヴィアンは保管庫に繋がる階段を素早く降りていった。勢いよく保管庫に入る。するとお目当てのものが目の前に鎮座していた。
『あった……!』
弧を描くように笑い、冠に近づく。
『ふふ…冠は私のもの、私がアヴァロンを統治するの……』
台に置かれた冠に触れた瞬間、床に魔法陣が現れ、魔法陣から鎖が飛び出しヴィヴィアンを拘束した。
『な、なにこれ!?魔法?!』
ヴィヴィアンは鎖により身動きがとれなくなった。外そうともがくが外れない。
ーーあれは私が仕込んでいた魔法です。死ぬ間際、封印魔法を仕込みました。あれによりヴィヴィアンはアヴァロンから追放、ブリテンの湖に封印されてしまい湖から動けなくなりました
『くっ…外れない!!』
バタバタと激しく動くも結果は変わらなかった。そこにティターニアの分身が現れる。
『女王!?…じゃない。ただの分身か。これは一体何の真似?』
『ヴィヴィアン、あなたは私を毒殺しましたね?』
『はっ!だから?証拠なんかないし。私をあそこあそこに送るのは無理よ』
『あなたの言う通りです。私もしばらくすれば消えるのであなたの罪を暴くのは無理そうです』
『だよね〜さ、はやく消えな。そしたらこの拘束もなくなるんだろ?』
ヴィヴィアンはヘラヘラ笑いながら話す。
『ヴィヴィアン…残念ですがその拘束はなくなりません』
『は?』
『私はあなたをアヴァロンから追放します。そしてブリテンに降ろし、そこにある場所に封印します』
『はぁぁぁぁ?ふざけるな、フザケルナ!!なぜ私があんなところに?!嫌だ!嫌だ!』
ヴィヴィアンは暴れたが何の意味もない。ただ激しく鎖がぶつかり合う音がするだけだ。
『さぁ、烙印を』
分身が手を掲げると空中に鉄でできた焼印が現れる。それは罪人に押される烙印であり、それがあるとアヴァロンでは煙たがれる存在となってしまう。
焼印はヴィヴィアンに近づき、背中に押印する。痛みが走るのか、ヴィヴィアンは絶叫した。
『あとは鎖に任せます。ブリテンに連れていき、封印してください』
そういうとヴィヴィアンが魔法陣に少しずつ飲まれていく。ヴィヴィアンは苦しみながらもティターニアに言った。
『私は…私は諦めない!絶対に女王になる!』
『それは無理でしょう。次の女王はもう誕生しています。その子がアヴァロンにくればあなたは女王にはなれません』
『は……?………ふふ。じゃあそいつを殺すわ。あなたと同じように!』
『できないでしょう。彼女は私とは違いますから』
『あぁぁ!うるさい!!うるさい!!早く消えろ!!』
暴れながら魔法陣に飲み込まれ、完全に飲み込まれるまで分身に暴言をはいていた。
ーーヴィヴィアンが完全に飲み込まれ、湖に定着したことを確認した上で私は消えました
分身のティターニアはゆっくり透明になり、しばらくして完全に消えてしまった。
ーーこの後の状況はメロウから聞いた通りだと思います。なんとか混乱をおさめ、今のアヴァロンがあります。
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ティターニアの発言を最後に映像は消え、元の場所が映し出される。
『モルガン、あなたは女王に相応しい者です。だから私はあなたにアヴァロンを託したい。私以上にアヴァロンを統一し、次の女王が現れるまで守ってください』
ティターニアは笑顔でモルガンに微笑みかけながらお願いするのであった。




