第四章 一節 女王の告白
レイチェルに案内され、モルガン達はメロウがいる玉座に向かった。玉座には以前に会った時より元気のない姿の女王が座っていた。
『メロウ様、お連れいたしました』
レイチェルがメロウに話しかけた。
『レイチェル、ご苦労であった。モルガン、久しぶりだな。そなたの活躍は私の耳まで届いておる。立派な魔女になったようで安心した』
メロウが話し終えたのを見計らい挨拶をする
「女王メロウ、お久しぶりでございます。時間はかかりましたが、なんとかあらゆることを吸収できたと思っております。ところで、レイチェルより依頼があるとのことでここに来ましたが依頼とはなんでしょうか?」
丁寧に、失礼のないように質問する。メロウが話始めた。
『モルガンよ、そこまで謙らなくてよい。そなたに頼みがあるゆえ、私は偉そうにできる立場にはない』
メロウは少し暗い表情をした。
「女王はね、個人に依頼なんてしてはいけないんだ。アヴァロンを統治する者が個人を使って何かを成すことは許されない行為…だから深刻な感じなのさ」
マーリンがひそひそ声で教えてくれた。許されない行為をするまでして依頼することはなんなのか。雛は気になって仕方なかった。
『レイチェルから少し聞いたと思うが、モルガンに探してほしいものがある。先代女王ティターニア様の冠だ。この冠は城の中央にある保管庫に結界を張って大切に保管していたのだ。だが、最近、突如としてなくなってしまった。まるで意思を持って家出したような感じだ…』
『おい、メロウ。お前、そんな大事なこと何故隠していた?』
オングスが冷たく言い放つ。
『っ…。言いたかったが言い出せなかった。私のせいでそんな大事なものをなくしたなんて…オングスにも顔向けできない…ティターニア様にだって…』
メロウは目に涙をためた。涙は今にも溢れそうだ。
『今はお前を責めている場合ではない。探すしかないが、モルガンには相応の説明が必要だ。こいつはアヴァロンの人間ではない。依頼を無視することだってできるんだ』
オングスはきつくメロウに言うと玉座の間にある客席のソファに腰掛けた。
『オングスの言うとおりだ。私から説明しよう』
メロウは涙を拭き、近くあった紅茶を流し込んだ。飲み終えてから話始める。
『モルガン、ティターニア様は先代の女王だ。それはもう美しく非の打ち所などない完璧な女王だった。ティターニア様は女王の証として冠を装着していたんだ。この冠は女王の証でもあり、冠があればアヴァロンを統治できるのだ。だが、ティターニア様は何者かに殺されてしまった…。冠自体は保管庫に自動的に保管されていて無事だったが、ティターニア様は死んでしまわれた。それによりアヴァロンは混乱に陥った』
メロウは話しながらまた目に涙をためる。
『すぐにでも女王を選定し、即位してもらう必要があった。アヴァロンには力のある妖精がたくさんいるから、冠の前に来てもらい女王になれるか見定めてもらったんだ。冠は意思があるから、冠により選ばれたものでないと女王にはなれないのだ。しかし、誰も冠には選ばれなかった。これにより女王の空位の期間が長くなり、アヴァロンはさらに混乱を極めた』
メロウは再び涙を拭き、話始める。
『そこでオングス、マーリン、その他の役職妖精が話し合い、仮の女王を立て冠に選ばれる女王が現れるまでアヴァロンを統治することになった。マーリンの千里眼を使って仮の女王に相応しい妖精を選定、真の女王が現れるまで玉座に座り続け、アヴァロンを統治する…それが私の役割だ』
(なるほど…だから初めて会った時に自分のことを“仮の女王”だなんて言っていたのね)
雛はメロウの説明を受け、納得した。
『冠がなくなった理由はわからない…。気付いたら保管庫から消えていた。検討もつかない…。マーリンかオングスに頼もうかと考えていると“夢”でティターニア様に頼まれたのだ。“モルガンに探してもらいなさい。彼女なら探せるから”…と』
『メロウ、お前“夢”を見たのか?』
『ええ…見た。だから、モルガンに頼むことにした。頼む、ティターニア様の冠を探してくれ』
メロウは頭を下げた。
「夢か…モルガン、妖精は基本夢は見ない。が、夢をみる妖精もいる。それは私が介入した妖精かメロウ、ティターニアだけだ。ティターニア、メロウは夢で予知やお告げを受け取る特殊な妖精だ。メロウが夢をみたということは、神託がくだったようなものさ。だから、メロウは君に依頼してきているのさ」
マーリンが補足で説明してくれた。
「わかりました。探しましょう。冠を持ち帰ればいいですね。しかし、場所の検討がつかないとなると探すのは大変かもしれません…」
本音が出てしまう。一同、頭の片隅にあった感想だ。探すあてもなく、がむしゃらに探すとなると時間がかかる。モルガンの言葉に一同静まり返っていると玉座に入る扉が激しく開いた。メロウの近くにいるレイチェルが戦闘体制に入る。
『何者だ!許可なく玉座に入ってくるとは!』
メロウが怒鳴る。扉からは2つの影がこちらに歩いてくる。
『メロウ、やけに偉そうだな。仮にも女王なんだから口使いには気を配りなさいな』
『その声は……カハル!』
カハルと呼ばれた妖精は髪は白髪のロングウェーブ、水色のぴったりとしたドレスのような服を着ていた。そばにはルフェがいた。
「ルフェ!どうしてここに?」
「モルガン、少しカハルに頼まれまして。大事な用事のようですので手助けにきました」
ルフェはにこりとモルガンに微笑んだ。その様子をカハルがみて話始める。
『ルフェ、こいつがモルガンか。ほう…中々強そうだな』
「カハル、あなたはモルガンとは戦わないほうがいい。痛い目を見ますよ」
『はいはい、わかってますよ。無謀な喧嘩は売らないさ。さ、本題だよ』
カハルが指を鳴らすと扉が閉まった。
『メロウ、冠は無事だ。安心しろ』
カハルが告げるとメロウはほっとした表情を見せた。
『モルガン、そなたには女王の試練をうけてもらう』
「女王の試練…」
『冠はそなたが真の女王だと言っているが、そなたは人間だ。無条件に女王と認めるのはアヴァロンの妖精達は認めはしないだろう。よって試練を受けてもらうことにした』
カハルは話を続ける。
『箱庭の地下深くに冠がいる。冠を目指して、地下に発生した試練を受けてほしい』
『な、箱庭がなんでそんなことになっているんだ!私は聞いてないぞ』
オングスが少し怒った口調でカハルに詰め寄る。
『うるさい。お前は仮の管理者。私が真の管理者。お前が全て把握しておく必要はない』
カハルはオングスを跳ね除けた。
「モルガン…あなたはブリテンの女王になるために奮闘していますが、アヴァロンの女王にもなったほうがよいと思います。宮廷魔導士はそれは格が高い役職ですので、キャメロットを掌握しやすいかもしれません。しかし、ウーサーやアーサーに介入するにはアヴァロンの、妖精としての肩書があるほうがよいです。無理にとはいいません。ですが、悪い話ではないです」
ルフェは自身の経験を交えて助言してきた。
雛は少し考えて、話始める。
「わかりました。試練をうけます」
『話が早い。では、さっそく箱庭にいこう』
メロウが再び指を鳴らすと一瞬で白馬と馬車が現れた。
『こいつに乗って直接、箱庭にいけ。私とルフェは後から合流しよう。オングス、メロウ、マーリンはここにいろ。お前らは入れないからな』
「残念だ。モルガン、頑張りなさい。ここで応援しておくよ」
「ありがとう、マーリン」
『モルガン…頼みました。あなたが無事で帰還することを祈っておくわ』
「女王メロウ、ありがとう」
オングスは黙ったままモルガンを見つめ何も言わなかった。
「では、行ってきます」
モルガンは馬車に乗り込んだ。白馬はゆっくり動き出し、壁にゆっくり入っていった。
『メロウ、お前は成すべきことをやれ。まだ女王が決まったわけじゃない』
カハルはそう言い残し、ルフェと共に消えた。
『カハル…ありがとう…レイチェル、午後からの会議に向けて準備します』
そう言ってメロウはいつもの仕事をこなしはじめた。




