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第三章 六節 異変の正体

更新遅れたんで今日は外伝含めて2つ更新します。


 水が流れる音に混じり、魔女の泣き声が響いていた。

 雛、ルル、マーリンは何も言えず、ただ目の前の魔女が泣き止むのを待った。

 しばらくたち、魔女が泣き止み話始める。


「ごめんなさい…本当は私が自分の役目を果たさないといけないのに」


 弱々しく鼻声で謝罪してきた。


「いえ、別にいいわ。あなたにも事情があったんでしょ?」

「事情なんかないわ、ただ…逃げたかっただけ。ずるい魔女なのよ、私」


 何度も死を繰り返してきた彼女、無我夢中で試行錯誤してきた彼女、変わらない状況、誰も助けてはくれない現実…それを1人で抱えてきた彼女を誰が責めるだろうか。


「仕方ないわ。あなたのことずるいなんて思わない」

「………」

「私でも同じことしたと思うし、気にしなくていいんじゃない?」

「………」


 励ましの言葉をかけたが、思うことがあるのか黙ったままだった。


「えーと、2人ともモルガンなんだよね?なんて呼んで区別したらいいのかな?」


 マーリンが沈黙に耐えかねて話かけた。


「私のことはモルガンと呼ばなくていい…そうだな…ルフェと呼んでくれ」

「わかったよ、ルフェ。私のことはわかるかい?」

「あぁ、わかるさ。私が大っ嫌いなマーリンだろ?」

「ご名答。というか大っ嫌いなんだ…」


 マーリンは嫌いと言われてショックを受けていた。


「ルフェ、あなたはここで何を?」


 雛は質問した。


「私はここでただ暮らしていただけさ。逃げ出したはいいものの行くあてなんてないからな…箱庭(ヴォーガーデン)の近くなら誰にも気づかれないと思ってたんだが、だめだったか…オングスに気づかれたんじゃ、かなりの人に気づかれているだろうな」


 そう言うとルフェは悲しそうな顔をした。


「オングス様はここに異変があるから調査してきてほしいと私に頼んできたの。異変を感じるということは何かしたんだと思ったけど、心あたりは?」


 雛が問いかけるとルフェは考え始め、しばらくたつと話始める。


「おそらくだが、お前に干渉した時の魔力の歪みを検知されてしまったのかもしれない。たまに“声”が聞こえていただろ?あれは私だ」

「あ、あの声は、ルフェだったの?」

「そうさ、逃げ出したが助言はしたかったからな。それをオングスに嗅ぎつけられてしまうとは…やはり魂だけだと真価が発揮できないな」


 ルフェはふっと苦笑いをした。


「ルフェ、本当にここで暮らしてモルガンに干渉していただけかい?他に余計なことはしていないかい?」

「していない。あ…余計なことかはわからないが、モルガンの前世の世界を覗き見して面白そうなものをここに召喚したりしていた。それは余計なことかもしれないな…」


 そう言うルフェの視線の先には、雛の時代から召喚したものがあった。居住スペースに、ふかふかのベッド、こたつ、テレビ、みかん、お菓子、お茶…アヴァロンには似つかわしくないものがたくさんあった。


「まぁ、異世界からモノを召喚はよくないかもね。とりあえずオングスに連絡しよう」


 そう言ってマーリンはオングスに向けて伝書鳩を飛ばした。


「そなたには迷惑をかけてしまって申し訳ない。今から入れ替わることもできないだろうし、それは神が許さないだろう。だから、そなたにはこの事象を解決してもらいたい。私はそのための協力は惜しまない」

「ルフェ…ありがとう」

「余談だが、そなたはすでに私が行ってきた様々な方法とは違う道筋を歩いている。たまに透視でそなたを見ていたから私にはわかる。その道筋があっているかはわからないが、信じた道を進むとよいと思う」


 ルフェは優しい眼差しで雛を見つめた。


「ルフェ…本来のモルガンから飛び出た時は驚いたけど無事だったんだね」

「ん?なんだ、その猫は」

「この子はルル。私を助けてくれる存在よ」

「ルル…私がループしている間はいなかったが…やはり今までとは違う事象が起きているみたいだ。複雑な胸中だが。ルル、無事だったさ。起きたらアヴァロンの野原にいたんだ。そこから自力でここまできて、住んでいた訳さ」

「それはよかった」


 ルルとルフェが会話している途中でオングスがやってきた。


『モルガン、流石だな。異変とはこいつのことのようだな。ところでこいつは誰だ?心なしかモルガンに似ている気がするが…』

「そっ、それは…」


 オングスに何て説明しようかと思っていたところ、ルフェが口を開いた。


「オングス、申し訳ない。私はモルガンの一部だと思ってくれ。モルガンに助言するために力を使ったが、それが異変と検知されたようだな。すまない」

『なんかこいつ、妙に馴れ馴れしい話し方だな…何か複雑な事情があるみたいだが私に迷惑かけないならそれでいい。違和感の正体もわかったことだし、安心だ』


 オングスはほっとした様子だった。


「この先も力を使う可能性があるから認識しておいてくれ。代わりと言ってはなんだが、私が知っている話を共有しよう。オングスにとっても朗報だと思うがな」

『なに?』


 オングスの眉がぴくっと動いた。


「まず、モルガン、ルル。お前達はこの後ブリテンに戻ってキャメロットを掌握しようとしているはずだ。だが、何も考えずにいけば、私と同じ末路を辿ると思う。敵はギネヴィアだけではない。ギネヴィアの背後にはもう1人黒幕の存在がいる」

「それって、ヴィヴィアン?」


 ルルは食い気味に質問した。


「ルル、察しがいいな。私もヴィヴィアンは黒幕かと考えているが確たる証拠もない。あいつはブリテンの湖にいるし、寵愛するランスロットのせいで湖には容易近づけない。だから怪しいというだけだ。だが、あやつらしい“匂わせ”のような事象も観測している…あながち間違いではないかもしれない。とりあえず念頭に置いてくれ」


 ルルはルフェの言葉に頷く。


「そして、オングス。お前の助けになりたいわけではないが、共通点を上手く利用させていただく。おそらくだが、お前が探している相手はヴィヴィアンだ。これも確たる証拠はないが、あやつはティターニア様を羨ましがっていた。湖に縛られている理由は、ティターニア様の呪いではないかと私は考えている」


 オングスは目を見開いた。


『はっ…?あいつが…?…………いや、なんだっていい。どんな情報でもいい。探してみせる。犯人を』


 オングスは拳を強く握りしめた。


「マーリン、お前はヴィヴィアンに惚れていると思うが利用されているだけだ。ルル達の足枷になるならお前はヴィヴィアンの元にいくな。私がアヴァロンに幽閉してやる」

「おぉ、こわいこわい…肝に銘じておきますよ」


 マーリンはヘラヘラしてルフェの発言を上手くかわした。


「私が言いたいことは伝えた。そなたに期待しておる。またピンチの時は“声”で助けるからな。それと、これを言っておかなければならない」


 そう言ってルフェはモルガンに近づき、耳元で囁いた。オングス、ルル、マーリンには聞こえないほどの小さい声で。いい終わると、ルフェはモルガンから離れた。


「達者でな。私はいつもここにいる。オングス、用があればここにこい」

『わかった』


 その会話を最後に一瞬で洞窟の入り口前まで移動していた。


「どうやらルフェに飛ばされたみたいだね」

「………」

「モルガン、どうしたの?」

「ルル…いや、なんでもないわ。オングス様、私は依頼達成できたということでいいでしょうか?」

『あぁ、助かった。モルガンよ、もし私も何かわかれば共有しよう。ブリテンに行っても伝えるようにする』

「感謝いたします」


 雛は軽くお辞儀をした。


「じゃあ、家に戻りましょうか。数日休んでからブリテンに向かうことにします」


 雛がそう言って、飛びたとうとした際、メロウの付き人であるレイチェルが飛んできた。


『モルガン様、こんな所にいたのですね。探しました』

「レイチェル、何か御用でしょうか?」


 雛は丁寧にレイチェルに問いかけた。


『はい…というよりもメロウ様からの依頼です』

「女王メロウの?」


 驚いた。女王直々に依頼なんてなんだろうかと思った。


『はい。依頼は“先代女王ティターニア様の冠”を探してほしいです』

 

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